前回に続き、楽天グループの野原彰人執行役員コマースカンパニーCOO&ディレクターに2020年の楽天市場を振り返ってもらった。
◇
――コロナ禍における出店者向けサポートに関しては。
「コロナ禍を受けてオンラインでの対応を強化した。当初は不安な部分もあったが、オンラインも常態化したころから、オンライン上でのサポート体制についてもさまざまな成果が出ている。出店者が楽天市場やネット販売に関する基礎知識が学べるポータルサイト『楽天大学』において、無料のオンライン講座『楽天大学 まなびLIVE』を継続して開催。ビデオ会議システム『ZOOM』を使ったもので、20年の累計参加人数1万3996人、参加店舗数は4788店、平均満足度は5点満点で4・4に達した。これまでのコンテンツを、楽天大学の動画専門講座『RUx』をコンテンツ化し、さらに多くの店舗に見てもらえるようにする予定だ」
――楽天市場のサービス改善を図るための組織「楽天市場サービス向上委員会」を設立した。
「楽天市場の一部出店者で組織する『楽天市場出店者 友の会』と当社との間で意見交換を行うもので、テーマに応じた分科会を設けて議論する。『友の会』に参加している店舗でも、現状の日本の物流に対する認識にバラつきがある。店舗にとって、物流は外部経済でしかなく、これを内部経済に取り込む形にしていただきたい。そうなれば、注文を受けてから、商品を届けるまで、トータルな商流を当社が把握できるようになるので、コストも最適化可能だ。これはコストの問題だけではなく、こうしたソリューションを実現することが、社会にとって一番良いと思っている。そういう思いを店舗に伝えていく。また、配達する人員がどれだけ不足しているかなど、物流業界全体を俯瞰して勉強する機会も設けたい。それにより、もう一段、二段高い視座を店舗に持ってもらい、一緒にECのトータルなソリューションを考える場にしていきたいと思っている」
――あらためて、2020年はどんな年だったか。
「新型コロナは『奇禍』だが、企業としてはそれを『奇貨』にするチャンスもあった1年だったのではないか。当社にとっても、ビジネスを大きく成長させる上での大きな転機だった。『奇禍』を『奇貨』とできるよう、おごらず店舗やユーザーと共に歩んでいく必要がある。楽天市場には、規約やガイドラインを立案するチームへの助言や意見を行う、組織外部の有識者や専門家などで構成された『アドバイザリーパネル』がある。そこでいただいた意見の中に『もっと高齢者が使いやすいサイトにしてほしい』というものがあった。これまでの楽天市場は、ITなどインターネットに慣れた人が利用するのが前提だった面がある。言い換えれば、最低限のIT経験があり、ウイルス対策ソフトをインストールしていたり、フェイクサイトが判別できたりする人を相手にしていたわけだ」
「パネラーの皆さんからは『もはやECはインフラに近いのだから、IT経験が浅い人への目配せや、ECで失敗した人への思いやりを持ってほしい。もっとIT弱者でも使いやすいサイトにするべき、楽天は汗をかくべきではないか』というメッセージをもらった。当社が掲げる行動指針『楽天主義』の中の一つに『品性高潔』という言葉がある。これは『大義名分のある事業を行う場合に重要なのは、それをいかにして実行するか』という意味で、要は『品位』や『良識』のことだ。ここまでの規模の会社に成長したからこそ、ITになじんでいない人たちの立場を思いやることが、一層大切になってきたということを改めて実感した。『では、われわれに何ができるか』ということは今後考えていくが、小さいことでも一歩ずつ前に進むのが当面の課題だ」
――21年2月には「デジタルプラットフォーム透明化法」が施行された。
「日本のECにおける規律やルールは当社が作ってきた自負がある。もちろん、プラットフォーマーが法律を順守するのは当然だが、出店者のコンプライアンスに関するレベルを引き上げるのもプラットフォーマーが果たすべき役割の一つだと思う。例えば、出店者が景品表示法に違反しないようモニタリングするのは当然だが、出店者に対しても、景表法への正しい理解にのっとった店舗運営を促すことはさらに重要だと考えている。店舗の順法精神水準を、プラットフォーマーの水準まで引き上げなければいけない。ECの地合いが非常に良いので、こうした状況で店舗レベルの底上げをするのがプラットフォーマーとしての責務だし、店舗の協力もあおぎながら進めていく」
「消費者保護に関しても、ECの裾野が広がれば広がるほど目配せが必要になってくる。楽天の歴史を紐解くと、店舗が作ってきた部分もあれば、ユーザーが作ってきた部分もある。ここ数年、サービスレベルの統一化を進めてきたわけだが、ユーザーが楽しめるサイトであり続けたいとも思っている。例えばレビューユーザーが主体的に参加できる枠組みも考えていきたい」(おわり)
◇
――コロナ禍における出店者向けサポートに関しては。
「コロナ禍を受けてオンラインでの対応を強化した。当初は不安な部分もあったが、オンラインも常態化したころから、オンライン上でのサポート体制についてもさまざまな成果が出ている。出店者が楽天市場やネット販売に関する基礎知識が学べるポータルサイト『楽天大学』において、無料のオンライン講座『楽天大学 まなびLIVE』を継続して開催。ビデオ会議システム『ZOOM』を使ったもので、20年の累計参加人数1万3996人、参加店舗数は4788店、平均満足度は5点満点で4・4に達した。これまでのコンテンツを、楽天大学の動画専門講座『RUx』をコンテンツ化し、さらに多くの店舗に見てもらえるようにする予定だ」
――楽天市場のサービス改善を図るための組織「楽天市場サービス向上委員会」を設立した。
「楽天市場の一部出店者で組織する『楽天市場出店者 友の会』と当社との間で意見交換を行うもので、テーマに応じた分科会を設けて議論する。『友の会』に参加している店舗でも、現状の日本の物流に対する認識にバラつきがある。店舗にとって、物流は外部経済でしかなく、これを内部経済に取り込む形にしていただきたい。そうなれば、注文を受けてから、商品を届けるまで、トータルな商流を当社が把握できるようになるので、コストも最適化可能だ。これはコストの問題だけではなく、こうしたソリューションを実現することが、社会にとって一番良いと思っている。そういう思いを店舗に伝えていく。また、配達する人員がどれだけ不足しているかなど、物流業界全体を俯瞰して勉強する機会も設けたい。それにより、もう一段、二段高い視座を店舗に持ってもらい、一緒にECのトータルなソリューションを考える場にしていきたいと思っている」
――あらためて、2020年はどんな年だったか。
「新型コロナは『奇禍』だが、企業としてはそれを『奇貨』にするチャンスもあった1年だったのではないか。当社にとっても、ビジネスを大きく成長させる上での大きな転機だった。『奇禍』を『奇貨』とできるよう、おごらず店舗やユーザーと共に歩んでいく必要がある。楽天市場には、規約やガイドラインを立案するチームへの助言や意見を行う、組織外部の有識者や専門家などで構成された『アドバイザリーパネル』がある。そこでいただいた意見の中に『もっと高齢者が使いやすいサイトにしてほしい』というものがあった。これまでの楽天市場は、ITなどインターネットに慣れた人が利用するのが前提だった面がある。言い換えれば、最低限のIT経験があり、ウイルス対策ソフトをインストールしていたり、フェイクサイトが判別できたりする人を相手にしていたわけだ」
「パネラーの皆さんからは『もはやECはインフラに近いのだから、IT経験が浅い人への目配せや、ECで失敗した人への思いやりを持ってほしい。もっとIT弱者でも使いやすいサイトにするべき、楽天は汗をかくべきではないか』というメッセージをもらった。当社が掲げる行動指針『楽天主義』の中の一つに『品性高潔』という言葉がある。これは『大義名分のある事業を行う場合に重要なのは、それをいかにして実行するか』という意味で、要は『品位』や『良識』のことだ。ここまでの規模の会社に成長したからこそ、ITになじんでいない人たちの立場を思いやることが、一層大切になってきたということを改めて実感した。『では、われわれに何ができるか』ということは今後考えていくが、小さいことでも一歩ずつ前に進むのが当面の課題だ」
――21年2月には「デジタルプラットフォーム透明化法」が施行された。
「日本のECにおける規律やルールは当社が作ってきた自負がある。もちろん、プラットフォーマーが法律を順守するのは当然だが、出店者のコンプライアンスに関するレベルを引き上げるのもプラットフォーマーが果たすべき役割の一つだと思う。例えば、出店者が景品表示法に違反しないようモニタリングするのは当然だが、出店者に対しても、景表法への正しい理解にのっとった店舗運営を促すことはさらに重要だと考えている。店舗の順法精神水準を、プラットフォーマーの水準まで引き上げなければいけない。ECの地合いが非常に良いので、こうした状況で店舗レベルの底上げをするのがプラットフォーマーとしての責務だし、店舗の協力もあおぎながら進めていく」
「消費者保護に関しても、ECの裾野が広がれば広がるほど目配せが必要になってくる。楽天の歴史を紐解くと、店舗が作ってきた部分もあれば、ユーザーが作ってきた部分もある。ここ数年、サービスレベルの統一化を進めてきたわけだが、ユーザーが楽しめるサイトであり続けたいとも思っている。例えばレビューユーザーが主体的に参加できる枠組みも考えていきたい」(おわり)