前号に引き続き、千趣会の梶原健司社長(=
写真)に新中計の考え方などを聞いた。
――コロナ禍の通販需要拡大で商品型数はどうなるのか。
「この2~3年は効率の悪い商品を削ってきたが、顧客セグメントごとにニーズの高い商材が見えている。一例として、食品関連は子育て世代やシニア層の需要が高い」
「食品に関係なく、オリジナル商品に重点を置いたこの数年の取り組みは間違っていない。ただ、通販市場への参入企業が増える中で、当社のブランドコードに共感してもらえる取引先との関係を強化していく。さまざまな取り引き形態、マネタイズの枠組みも含めて商品の不足分を補っていく。利益と継続性を重視してお客様のニーズに応える」
――生活総合提案型企業を掲げていく。
「ベルメゾンの不調時は商品を点で紹介していたが、商品を通してその先の暮らしを提案する必要がある。コロナでお客様の生活スタイルが一変したが、その時々のニーズや悩みを理解し、時代に合ったライフスタイルを提案し続けなければいけない。そこには物販だけでなく、サービス販売も含まれる」
――保険事業も手がけている。
「その通りだ。コロナ禍でなければ、全国で無料のマネーセミナーなども開催している。物販以外でもオリジナル性の高いものであれば加えていきたい。例えば、マタニティ教室や子どもの成長に合わせたアルバム制作など、さまざまなことが考えられる」
――数年前まで千趣会チャイルドケアの社長も務めた。
「保育園を運営していると、さまざまなニーズが見える。物販だけでなくワンストップで頼られる存在になりたい。ベルメゾンの入り口となる妊娠・出産・子育ての流れの中でお客様の声に応えていく。さまざまなお客様の層があるが、まずは子育て世代向けで成功事例を作りたい」
――顧客接点はたくさん持っている。
「カタログやEC、DM、チラシ、頒布会などをかけ合わせることができる。加えて、資本業務提携によってJR東日本さんが持つリアルのアセットを通じた接点もできる」
――JR東日本は生活サービスにも力を注ぐ考えだ。
「
コロナ禍でデジタルの必要性が高まっているし、当社への期待も感じる。妊娠・出産期の女性は鉄道の利用機会が減るが、当社はそのタイミングが顧客との接点が強まる時期で、補完し合える。JR東日本さんとはポイント連携をベースにしながら当社のアセットや商材を提供できる。リアルとデジタルの融合という大きな視点で取り組みたい」
――「JREモール」に出店した。
「3月1日にベルメゾンの家具やインテリア、ファッショングッズなどの売れ筋を中心に数千点規模で出品した。ベルメゾンの知名度を高めて新たなお客様とのつながりを持ちたい。一方でユーザビリティーやUI・UX、サイト運営ノウハウ、販促のあり方など当社がサポートできることはしていきたい」
――外部ECモールの売り上げも増えた。
「
国内は『楽天市場』や『PayPayモール』『アマゾン』に出店し、海外は中国の『天猫』向けに展開している。3カ年で外部ECモール経由の売り上げは約2・8倍に増えた。前期はコロナ禍ということもあって服よりもリビング、キッチン用品、家具、寝具などが売れた。新中計でも外部モールでの販売は強化する」
――7月に新中計を発表する。
「奇をてらったことはしない。通販事業モデルを進化させるために、当社のミッションやビジョン、ブランドポリシーを固めた上で、お客様、取引先とのつながりをより強化していきたい」
――具体的には。
「従来はお客様と一緒に商品を作る取り組みをしていた。例えば、ベルメゾンのモニターサイト『ベルメゾンデッセ』には約22万人の登録会員がいる。ここに改めて力を注ぐ。一方向の『to』ではなく、『with』の関係を大事にする。良い商品をSNSで拡散してもらったり、ブランド作りにも参加してもらうような取り組みができればいい。それにはさらに商品力を高める必要があり、取引先との協業を進める」
――千趣会グループの変革にも取り組む。
「通販事業を核としたポートフォリオを再構築する。ブライダルや保育事業などもあるが、経営リソースは通販に再シフトして、グループ間での送客や事業連携などを図る。また、何よりもJR東日本さんとの協業を広げていきたい」
――持続的社会への貢献も掲げる。
「ESG、SDGsの取り組みも進める。今年は創業66年、通販事業は45年だが、コロナ禍で通販が社会インフラとして重要視されている。ブランドポリシーを含め社会貢献にさらに力を注ぐべき局面がきた。当社は事業の延長線上で社会に貢献できる。環境問題や女性活躍支援なども含めて取り組む」
「物も情報も飽和した世の中で、商品の良し悪しはもちろんあるにせよ、どういう企業から商品を買うかという部分が重視される時代になった。新興企業による通販参入が増えてくる中でポリシーを持って臨みたい」
――投資は。
「DX化に向けてシステム基盤を整備する。これまでカタログをベースにした基幹にさまざまなサービスを継ぎはぎで構築してきたが、変化に迅速に対応するためにも22年1月をメドにECベースのシステムに大幅刷新する。相当額の投資になるし、業務改革を伴うものになる」
――コロナの収束が不透明だ。
「コロナ禍でこそ人のつながりを大事にしてきた当社の強みを出せる。IT化はもちろん進めるが、アウトプットは変わらずにヒューマンタッチを大事にしたい」 (おわり)
――コロナ禍の通販需要拡大で商品型数はどうなるのか。
「この2~3年は効率の悪い商品を削ってきたが、顧客セグメントごとにニーズの高い商材が見えている。一例として、食品関連は子育て世代やシニア層の需要が高い」
「食品に関係なく、オリジナル商品に重点を置いたこの数年の取り組みは間違っていない。ただ、通販市場への参入企業が増える中で、当社のブランドコードに共感してもらえる取引先との関係を強化していく。さまざまな取り引き形態、マネタイズの枠組みも含めて商品の不足分を補っていく。利益と継続性を重視してお客様のニーズに応える」
――生活総合提案型企業を掲げていく。
「ベルメゾンの不調時は商品を点で紹介していたが、商品を通してその先の暮らしを提案する必要がある。コロナでお客様の生活スタイルが一変したが、その時々のニーズや悩みを理解し、時代に合ったライフスタイルを提案し続けなければいけない。そこには物販だけでなく、サービス販売も含まれる」
――保険事業も手がけている。
「その通りだ。コロナ禍でなければ、全国で無料のマネーセミナーなども開催している。物販以外でもオリジナル性の高いものであれば加えていきたい。例えば、マタニティ教室や子どもの成長に合わせたアルバム制作など、さまざまなことが考えられる」
――数年前まで千趣会チャイルドケアの社長も務めた。
「保育園を運営していると、さまざまなニーズが見える。物販だけでなくワンストップで頼られる存在になりたい。ベルメゾンの入り口となる妊娠・出産・子育ての流れの中でお客様の声に応えていく。さまざまなお客様の層があるが、まずは子育て世代向けで成功事例を作りたい」
――顧客接点はたくさん持っている。
「カタログやEC、DM、チラシ、頒布会などをかけ合わせることができる。加えて、資本業務提携によってJR東日本さんが持つリアルのアセットを通じた接点もできる」
――JR東日本は生活サービスにも力を注ぐ考えだ。
「コロナ禍でデジタルの必要性が高まっているし、当社への期待も感じる。妊娠・出産期の女性は鉄道の利用機会が減るが、当社はそのタイミングが顧客との接点が強まる時期で、補完し合える。JR東日本さんとはポイント連携をベースにしながら当社のアセットや商材を提供できる。リアルとデジタルの融合という大きな視点で取り組みたい」
――「JREモール」に出店した。
「3月1日にベルメゾンの家具やインテリア、ファッショングッズなどの売れ筋を中心に数千点規模で出品した。ベルメゾンの知名度を高めて新たなお客様とのつながりを持ちたい。一方でユーザビリティーやUI・UX、サイト運営ノウハウ、販促のあり方など当社がサポートできることはしていきたい」
――外部ECモールの売り上げも増えた。
「国内は『楽天市場』や『PayPayモール』『アマゾン』に出店し、海外は中国の『天猫』向けに展開している。3カ年で外部ECモール経由の売り上げは約2・8倍に増えた。前期はコロナ禍ということもあって服よりもリビング、キッチン用品、家具、寝具などが売れた。新中計でも外部モールでの販売は強化する」
――7月に新中計を発表する。
「奇をてらったことはしない。通販事業モデルを進化させるために、当社のミッションやビジョン、ブランドポリシーを固めた上で、お客様、取引先とのつながりをより強化していきたい」
――具体的には。
「従来はお客様と一緒に商品を作る取り組みをしていた。例えば、ベルメゾンのモニターサイト『ベルメゾンデッセ』には約22万人の登録会員がいる。ここに改めて力を注ぐ。一方向の『to』ではなく、『with』の関係を大事にする。良い商品をSNSで拡散してもらったり、ブランド作りにも参加してもらうような取り組みができればいい。それにはさらに商品力を高める必要があり、取引先との協業を進める」
――千趣会グループの変革にも取り組む。
「通販事業を核としたポートフォリオを再構築する。ブライダルや保育事業などもあるが、経営リソースは通販に再シフトして、グループ間での送客や事業連携などを図る。また、何よりもJR東日本さんとの協業を広げていきたい」
――持続的社会への貢献も掲げる。
「ESG、SDGsの取り組みも進める。今年は創業66年、通販事業は45年だが、コロナ禍で通販が社会インフラとして重要視されている。ブランドポリシーを含め社会貢献にさらに力を注ぐべき局面がきた。当社は事業の延長線上で社会に貢献できる。環境問題や女性活躍支援なども含めて取り組む」
「物も情報も飽和した世の中で、商品の良し悪しはもちろんあるにせよ、どういう企業から商品を買うかという部分が重視される時代になった。新興企業による通販参入が増えてくる中でポリシーを持って臨みたい」
――投資は。
「DX化に向けてシステム基盤を整備する。これまでカタログをベースにした基幹にさまざまなサービスを継ぎはぎで構築してきたが、変化に迅速に対応するためにも22年1月をメドにECベースのシステムに大幅刷新する。相当額の投資になるし、業務改革を伴うものになる」
――コロナの収束が不透明だ。
「コロナ禍でこそ人のつながりを大事にしてきた当社の強みを出せる。IT化はもちろん進めるが、アウトプットは変わらずにヒューマンタッチを大事にしたい」 (おわり)