不急のプラン 公邸懇親会の波紋②
会員から透明性を問う声も
コロナ禍が激しさを増す今年1月上旬、日本健康・栄養食品協会(=日健栄協)が企画していた国会議員と一部大手会員限定の「特定保健用食品及び機能性表示食品制度勉強会兼懇親会」。協会の下田智久顧問は「問題はない」と話す。しかし、会員や関係者からは疑問視する声があがっている。
◇
一点目の問題は「透明性」だ。日健栄協は公益財団法人である。これにより、税制の優遇措置も受けている。さらに収益の多くは、会員からの会費だ。公と会員の双方に、事業や取り組みの説明責任があると言える。
然るに今回の国会議員と大正製薬など一部大手企業との勉強会兼懇親会は、会員にまったくクローズで行われていた。当然ながら、関連の団体やマスコミにも告知されていない。
「公益財団という立て付けから言えば、会員向けに開かれていない会というはどうなのか」(大手メーカー)と会員からも疑問の声があがる。
政治的にみても、こうした密室的なアプローチは表面化すれば逆効果だ。政治からも警戒されるとともに、一般から業界への要らざる疑念を招きかねない。「勉強会ならば、こそこそやらず、正々堂々とオープンにやればいい」(大手メーカー)。
下田顧問も本件へのインタビューで触れたが、この議員勉強会は2013年10月に発足したものだ。本紙もこの勉強会を山東昭子議員と鴨下一郎議員の写真付きで記事としている。当時は、オープンで対応しており、業界団体の関係者も「日健栄協から招かれて出席した記憶がある」。それだけに、今回クローズで開催を予定したことには「違和感がある。何らかの意図があるのだろう」(同)とする。
二点目は「二重規範」だ。写真の通り、日健栄協は12月1日に(1)コロナの収束が見通せないこと(2)開催する場合は参加人数を大幅に絞る必要があり、新年のあいさつやお祝いを交わせないことを理由に、年初に開催している賀詞交歓会を中止することを会員にメールマガジンで伝えている。
一方でその後も問題の勉強会兼懇親会は開催するべく準備していた。日健栄協が参加を呼び掛けた企業には協会幹部が訪問。「賀詞交歓会が中止となった代わりに開催する」と説明していたとの話もある。「賀詞交歓会は中止して、勉強会はやってというダブルスタンダートはやっちゃだめ」(OEMメーカー)。「社会全体で自粛。考え方はあると思うが、一部メーカー、議員だけ呼んでという不公平な状態はどうか」(メーカー)。「出席企業をみるに、大正製薬からは協会は出向者を受け入れているから、そういうところを優先したのかと思う」(メーカー)。
勉強会兼懇親会の中止を決めたのは、年が明けて、緊急事態宣言の発令が取りざたされた1月5日以降のことだ。
三点目は「目的」だ。会の名称は、特保と機能性表示食品制度の勉強を掲げる。一方で下田顧問に目的を聞くと「業界の現状を説明するため」「国民に信頼できる業界にするため」とあいまいな答えだ。両制度を所管する消費者庁も「開催を知らなかった」(食品表示企画課)、「勉強会に招かれたということはない」(表示対策課)と話す。ただ、現役大臣を含めた8人の有力議員を招いた席が単なる懇親とは思えない。関係者が指摘するのは業界団体で協議している「機能性表示食品公正協議会」との関係だ。「議員に日健栄協と特保公取協の取組みをアピールし、機能性公取協の布石とするのが狙いだったのでは」(大手メーカー)。
指摘の通りであれば「政治家を用いた露骨な自団体への利益誘導ととらえられかねない」(厚生労働省OB)。
もう一つのテーマである特保についても「トクホは結局大手しかできないし、お金の落ちるところに事業も傾いていると昔から感じている」(メーカー)と厳しい声があがる。
果たして、コロナ禍でこうした勉強会兼懇親会が不可欠であり、このタイミングで企画すべきだったのか。まさに不急のプランではなかろうか。(つづく)
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コロナ禍が激しさを増す今年1月上旬、日本健康・栄養食品協会(=日健栄協)が企画していた国会議員と一部大手会員限定の「特定保健用食品及び機能性表示食品制度勉強会兼懇親会」。協会の下田智久顧問は「問題はない」と話す。しかし、会員や関係者からは疑問視する声があがっている。
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一点目の問題は「透明性」だ。日健栄協は公益財団法人である。これにより、税制の優遇措置も受けている。さらに収益の多くは、会員からの会費だ。公と会員の双方に、事業や取り組みの説明責任があると言える。
然るに今回の国会議員と大正製薬など一部大手企業との勉強会兼懇親会は、会員にまったくクローズで行われていた。当然ながら、関連の団体やマスコミにも告知されていない。
「公益財団という立て付けから言えば、会員向けに開かれていない会というはどうなのか」(大手メーカー)と会員からも疑問の声があがる。
政治的にみても、こうした密室的なアプローチは表面化すれば逆効果だ。政治からも警戒されるとともに、一般から業界への要らざる疑念を招きかねない。「勉強会ならば、こそこそやらず、正々堂々とオープンにやればいい」(大手メーカー)。
下田顧問も本件へのインタビューで触れたが、この議員勉強会は2013年10月に発足したものだ。本紙もこの勉強会を山東昭子議員と鴨下一郎議員の写真付きで記事としている。当時は、オープンで対応しており、業界団体の関係者も「日健栄協から招かれて出席した記憶がある」。それだけに、今回クローズで開催を予定したことには「違和感がある。何らかの意図があるのだろう」(同)とする。
二点目は「二重規範」だ。写真の通り、日健栄協は12月1日に(1)コロナの収束が見通せないこと(2)開催する場合は参加人数を大幅に絞る必要があり、新年のあいさつやお祝いを交わせないことを理由に、年初に開催している賀詞交歓会を中止することを会員にメールマガジンで伝えている。
一方でその後も問題の勉強会兼懇親会は開催するべく準備していた。日健栄協が参加を呼び掛けた企業には協会幹部が訪問。「賀詞交歓会が中止となった代わりに開催する」と説明していたとの話もある。「賀詞交歓会は中止して、勉強会はやってというダブルスタンダートはやっちゃだめ」(OEMメーカー)。「社会全体で自粛。考え方はあると思うが、一部メーカー、議員だけ呼んでという不公平な状態はどうか」(メーカー)。「出席企業をみるに、大正製薬からは協会は出向者を受け入れているから、そういうところを優先したのかと思う」(メーカー)。
勉強会兼懇親会の中止を決めたのは、年が明けて、緊急事態宣言の発令が取りざたされた1月5日以降のことだ。
三点目は「目的」だ。会の名称は、特保と機能性表示食品制度の勉強を掲げる。一方で下田顧問に目的を聞くと「業界の現状を説明するため」「国民に信頼できる業界にするため」とあいまいな答えだ。両制度を所管する消費者庁も「開催を知らなかった」(食品表示企画課)、「勉強会に招かれたということはない」(表示対策課)と話す。ただ、現役大臣を含めた8人の有力議員を招いた席が単なる懇親とは思えない。関係者が指摘するのは業界団体で協議している「機能性表示食品公正協議会」との関係だ。「議員に日健栄協と特保公取協の取組みをアピールし、機能性公取協の布石とするのが狙いだったのでは」(大手メーカー)。
指摘の通りであれば「政治家を用いた露骨な自団体への利益誘導ととらえられかねない」(厚生労働省OB)。
もう一つのテーマである特保についても「トクホは結局大手しかできないし、お金の落ちるところに事業も傾いていると昔から感じている」(メーカー)と厳しい声があがる。
果たして、コロナ禍でこうした勉強会兼懇親会が不可欠であり、このタイミングで企画すべきだったのか。まさに不急のプランではなかろうか。(つづく)