通販新聞社が行った2019年度の「健康食品通販売上高ランキング調査」は、上位100社の売上高総計が前回調査比2・7%増の6546億5200万円だった。市場は、研究開発力を強みに製品の差別化を図るメーカー、ウェブマーケティングを強みにする新興企業が二分する状況。メーカーには、15年に始まった機能性表示食品制度が今後も追い風になりそうだ。(
※表は週刊通販新聞本紙で掲載した1~100位までの売上高ランキングの中から上位20位のみを掲載。21位~100位は本紙のみに掲載しております)
成長戦略の一環として導入され、期待された機能性表示食品だが、当初は問題も相次いだ。17年には、景品表示法による一斉処分が下された「葛の花事件」、18年には「歩行能力の改善」をうたう製品の撤回が相次ぐなど企業に失望感が広がった。
ただ、執行の透明性確保や、制度の円滑な運用を粘り強く政府に働きかけた業界団体の努力もあり、制度育成に向け行政と業界の足並みが揃いつつある。
消費者庁は今年4月に景表法執行の予見性を高める目的で広告やエビデンスの留意点を示した「事後チェック指針」の運用を開始。運用では、事前相談の窓口を業界団体に設け、連携しつつ機能性表示食品をめぐる諸問題の事前の解決を図り、不意打ち的な景表法処分を回避する。業界側も機能性表示食品の「公正競争規約」の検討を始めている。
景表法の執行も今年度は異例の状況が続く。例年、40件を越える水準で推移。19年度は36社に対する40件の処分が行われた。「痩身効果」「免疫力向上」など、健食関連も7件あった(本紙集計)。
一方、今上期は、これまでわずか4件(9月末時点)。前年は同期間で17件もの処分が行われ、明らかに少ない。コロナ禍を受けて、処分対象も空間除菌商品や手指用洗浄ジェルが中心。健食は、1件も行われていない。
機能性表示食品にとっての追い風は、今年8月、初めて「免疫表示」が解禁されたことだ。制度発足時からその扱いは懸案だったものの、昨年11月には健食で「免疫を高める」などと広告した事業者が景表法違反で処分されたこともあり、健食業界で「免疫表示」は長く禁忌とされてきた。
ただ、政府が今年3月に閣議決定した「健康・医療戦略」の中で「機能性表示食品等について科学的知見の蓄積を進め、免疫機能の改善等を通じた保健用途における新たな表示を実現することを目指す」と触れたことで、一気にポジティブに傾いた。
こうした中、健食通販市場でも今後、ヘルスケア領域への進出を目指す飲料メーカー大手3社の競争が激化していきそうだ。
市場で圧倒的地位を築くのは、ランキング1位のサントリーウエルネス。化粧品を含む国内売上高は、前年比8%増の約982億円(19年12月期、海外向け卸を含む)。売上高1000億円を目前に控える。
市場の黎明期から市場に参入。主力の「セサミンEX」で他社を圧倒するテレビ露出で一気に認知を高め、全般的な「健康イメージ」の訴求でベースサプリメントとして定着した。
追随するアサヒグループのアサヒカルピスウェルネスは、独自素材「L―92乳酸菌」を配合する「アレルケア」を主力に展開。「独自の乳酸菌」に関する研究成果を情報提供する成分マーケティングで成長を果たした。19年12月期は、「アレルケア」が前年実績を下回り減収だった。
機能性表示食品制度を追い風に、攻勢をかけるのがキリンホールディングスだ。
サントリー、アサヒともに複数の機能性表示食品を展開するものの、ブランドを象徴する製品は健食として展開。背景には、制度活用により、訴求範囲が限定されることなどがあるとみられる。一方のキリンは今年8月、独自の「プラズマ乳酸菌」を配合する「ⅰMUSE(イミューズ)」ブランドが、機能性表示食品では初めて「免疫機能の維持」といった表示で届出が公表された。
注目されるのは、「プラズマ乳酸菌」の原料供給も行っていくこと。すでに資本提携でキリングループ入りしたファンケルが年内に免疫訴求のサプリメントの発売を予定。通販に精通するファンケルの知見の活用、原料供給にも前向きな姿勢を示していることで、市場でシェアを広げる可能性がある。
このほか、ランキング上位も、これまで店舗流通を中心に展開してきたメーカー系の台頭が目立ち始めている。カゴメ、大正製薬が100億円を突破。味の素、ライオンも本紙推計で通販売上高は、100億円に達しているとみられる。
表の見方
「19年度健康食品通販売上高ランキング」は、原則、健食通販売上高のみをまとめた。調査期間は、19年6月~20年5月に迎えた決算期。
▽一部企業は公表資料や聞き取りなどによって「本紙推計値(※マーク)」を掲載している。
▽社名の前に「◎」マークのある企業は、数字に特定の条件がある。(〇内の数字は売上高順位)。
①サントリーウエルネスは国内外子会社の実績を除く売上高。一部、海外子会社向け卸を含む。
②世田谷自然食品は、食品、化粧品の売上高を含む。
④山田養蜂場は、食品の売上高を含む。
⑤ファンケルは、アテニアを含む連結売上高に占める健康食品通販売上高(発芽米、青汁の通販を含む)。
⑩ニコリオは昨年7月、社名をビアンネから変更した。屋号も「悠悠館」から「ニコリオ」に統一した。
⑪エバーライフは化粧品通販の実績を含む。
⑫カゴメは自社通販「カゴメ健康直送便」の実績。外部ECやカタログへの商品卸は含まない。
⑭アサヒカルピスウェルネスは、原料販売事業の実績を含む売上高。ただし、通販売上高が大半を占める。また、化粧品通販の実績を含む。
⑮大正製薬は、「大正ダイレクト」の実績。子会社で化粧品通販を行うドクタープログラムの売上高は含まない。
⑯味の素は化粧品通販の実績を含む。
(17)ライオンは、ヘアケア通販など健康食品以外の実績を含む。
⑱金氏高麗人参は、原料販売の実績を含む。
成長戦略の一環として導入され、期待された機能性表示食品だが、当初は問題も相次いだ。17年には、景品表示法による一斉処分が下された「葛の花事件」、18年には「歩行能力の改善」をうたう製品の撤回が相次ぐなど企業に失望感が広がった。
ただ、執行の透明性確保や、制度の円滑な運用を粘り強く政府に働きかけた業界団体の努力もあり、制度育成に向け行政と業界の足並みが揃いつつある。
消費者庁は今年4月に景表法執行の予見性を高める目的で広告やエビデンスの留意点を示した「事後チェック指針」の運用を開始。運用では、事前相談の窓口を業界団体に設け、連携しつつ機能性表示食品をめぐる諸問題の事前の解決を図り、不意打ち的な景表法処分を回避する。業界側も機能性表示食品の「公正競争規約」の検討を始めている。
景表法の執行も今年度は異例の状況が続く。例年、40件を越える水準で推移。19年度は36社に対する40件の処分が行われた。「痩身効果」「免疫力向上」など、健食関連も7件あった(本紙集計)。
一方、今上期は、これまでわずか4件(9月末時点)。前年は同期間で17件もの処分が行われ、明らかに少ない。コロナ禍を受けて、処分対象も空間除菌商品や手指用洗浄ジェルが中心。健食は、1件も行われていない。
機能性表示食品にとっての追い風は、今年8月、初めて「免疫表示」が解禁されたことだ。制度発足時からその扱いは懸案だったものの、昨年11月には健食で「免疫を高める」などと広告した事業者が景表法違反で処分されたこともあり、健食業界で「免疫表示」は長く禁忌とされてきた。
ただ、政府が今年3月に閣議決定した「健康・医療戦略」の中で「機能性表示食品等について科学的知見の蓄積を進め、免疫機能の改善等を通じた保健用途における新たな表示を実現することを目指す」と触れたことで、一気にポジティブに傾いた。
こうした中、健食通販市場でも今後、ヘルスケア領域への進出を目指す飲料メーカー大手3社の競争が激化していきそうだ。
市場で圧倒的地位を築くのは、ランキング1位のサントリーウエルネス。化粧品を含む国内売上高は、前年比8%増の約982億円(19年12月期、海外向け卸を含む)。売上高1000億円を目前に控える。
市場の黎明期から市場に参入。主力の「セサミンEX」で他社を圧倒するテレビ露出で一気に認知を高め、全般的な「健康イメージ」の訴求でベースサプリメントとして定着した。
追随するアサヒグループのアサヒカルピスウェルネスは、独自素材「L―92乳酸菌」を配合する「アレルケア」を主力に展開。「独自の乳酸菌」に関する研究成果を情報提供する成分マーケティングで成長を果たした。19年12月期は、「アレルケア」が前年実績を下回り減収だった。
機能性表示食品制度を追い風に、攻勢をかけるのがキリンホールディングスだ。
サントリー、アサヒともに複数の機能性表示食品を展開するものの、ブランドを象徴する製品は健食として展開。背景には、制度活用により、訴求範囲が限定されることなどがあるとみられる。一方のキリンは今年8月、独自の「プラズマ乳酸菌」を配合する「ⅰMUSE(イミューズ)」ブランドが、機能性表示食品では初めて「免疫機能の維持」といった表示で届出が公表された。
注目されるのは、「プラズマ乳酸菌」の原料供給も行っていくこと。すでに資本提携でキリングループ入りしたファンケルが年内に免疫訴求のサプリメントの発売を予定。通販に精通するファンケルの知見の活用、原料供給にも前向きな姿勢を示していることで、市場でシェアを広げる可能性がある。
このほか、ランキング上位も、これまで店舗流通を中心に展開してきたメーカー系の台頭が目立ち始めている。カゴメ、大正製薬が100億円を突破。味の素、ライオンも本紙推計で通販売上高は、100億円に達しているとみられる。
表の見方
「19年度健康食品通販売上高ランキング」は、原則、健食通販売上高のみをまとめた。調査期間は、19年6月~20年5月に迎えた決算期。
▽一部企業は公表資料や聞き取りなどによって「本紙推計値(※マーク)」を掲載している。
▽社名の前に「◎」マークのある企業は、数字に特定の条件がある。(〇内の数字は売上高順位)。
①サントリーウエルネスは国内外子会社の実績を除く売上高。一部、海外子会社向け卸を含む。
②世田谷自然食品は、食品、化粧品の売上高を含む。
④山田養蜂場は、食品の売上高を含む。
⑤ファンケルは、アテニアを含む連結売上高に占める健康食品通販売上高(発芽米、青汁の通販を含む)。
⑩ニコリオは昨年7月、社名をビアンネから変更した。屋号も「悠悠館」から「ニコリオ」に統一した。
⑪エバーライフは化粧品通販の実績を含む。
⑫カゴメは自社通販「カゴメ健康直送便」の実績。外部ECやカタログへの商品卸は含まない。
⑭アサヒカルピスウェルネスは、原料販売事業の実績を含む売上高。ただし、通販売上高が大半を占める。また、化粧品通販の実績を含む。
⑮大正製薬は、「大正ダイレクト」の実績。子会社で化粧品通販を行うドクタープログラムの売上高は含まない。
⑯味の素は化粧品通販の実績を含む。
(17)ライオンは、ヘアケア通販など健康食品以外の実績を含む。
⑱金氏高麗人参は、原料販売の実績を含む。