東日本旅客鉄道(JR東日本)では、ECを含めた生活サービス事業においてデジタルトランスフォーメーションの強化を図っている。10月には千趣会との資本業務提携を発表するなど、運営する仮想モールの「JRE MALL」を舞台に、会員基盤の強化に向けた様々な連携施策を展開することが予想される。新型コロナウイルスの影響で鉄道業界を巡る環境が大きく変化する中、同社の目指すEC事業の展望について同モール運営チーム責任者の佐野太次長に聞いた。
――「JRE MALL」の上半期を振り返って。
「傾向として、コロナの影響で2~4月頃はマスクやウイルス除去関連の商品が非常に伸び、その後も定着して色々なものが売れるようになった。全体として4~9月は前年同月比200%前後の売り上げで推移したイメージ」
――出店者数と取扱商品数は。
「出店者数は2020年10月1日時点で74店舗、約2万2000商品。(19年10月1日時点では38店舗、約9400商品)。今は商品カテゴリーで『肉』に力を入れていて、肉の専門店の牛肉だけでなく九州の鳥皮の店など。毎月29日を肉の日として、肉のメルマガを打つが非常に掴みがよい。あまり外で贅沢できず、家でパーティーといった傾向があるのかもしれない」
――利用者数は。
「
訪問者数では大体月間90万人。昨年は月間50万人平均だったので、売り上げと同様に2倍近い増加。色々とサイト改善をして、コンバージョンレートが良くなった。訪問されて購入される率は上がったと思う。商品数の増加とともにサーバーのスペックがひっ迫して、特にコロナの影響で一気に(受注が)伸びた時はサイトが遅延するようなこともあった。そこですぐに増強を図り、かなり大幅にスペックアップしたので、そういったスピード感は上がってきたと思う。
また、メルマガの精度は、送るキャンペーンの内容や相手先の選別なども含めて改善されたと思う。開設から年数もたってきたことや、また(JR東日本の共通ポイントで、モール内でも使える)『JRE POINT』のデータもあるので、その中からシナリオを作っている。今はMAやレコメンドエンジンも入れているので試行錯誤しながら出し分けており、少しずつレートは上がっている」
――現状の顧客層は。
「大きく二つあり、鉄道グッズが大好きという方と、JRE POINTユーザーでもある駅ビルやビューカードの利用者とに分かれている。鉄道ファンはポイントに関わらず、あるグッズが出ると必ず買われるので、非常に手堅い。最近はオークションも開始し、鉄道古物などを販売している。あまり加熱しすぎないように上限価格を決めているが、出た瞬間すぐに上限価格で落札される。行先表示灯など1個当たり10万円くらいするもので上限価格を10万円に設定してもその価格で即決になるほど人気がある。
また、『大人の休日倶楽部』(『ビューカード』利用者の旅とライフスタイルの会員組織)会員はこういったECに慣れてきたのか、非常にメルマガへの反応が良くなってきた。メルマガの内容は主には地産品や食の内容でイメージしている。大人の休日倶楽部会員は他の属性よりも配信後のコンバージョンレートで高い傾向が出ている。
現状、JRE POINT会員の内、メルマガ配信を許諾している会員が200万人以上いるが、その内何十万人かずつにセグメントして送っている」
――集客施策は。
「毎月20日前後の土、日、月にビューカードキャンペーンを行っていて、4000円の購入で期間限定の500ポイントを付与している。これを期待している人が非常に多くて売上げが跳ねるところ。他にも毎月、(グループで飲料事業を行う出店者の)JR東日本ウォータービジネスが、24缶入りケースを自販機の通常販売よりもかなり割安で提供している時があり、それも1日ですぐ売り切れる人気の企画となっている。どちらも以前から行っており、当初は数日かけて売り切るという状況だったが、今はほとんどが即日完売なので、やはり客数のベースが上がって基盤ができてきたと感じる」
――リアルとECの連携について。
「ECとリアルは補完関係にある。以前からモール内で、ネット予約によって送料無料で(『エキュート』や『グランスタ』などの)店頭で商品が受け取れる「ネットでエキナカ」サービスを行っている。クリスマスケーキの時期などネット予約してエキナカで受け取る数は年々120%で推移しており、開始当初の8~9倍になった。コロナの影響もあり、『スマホで予約して決済』という行動に慣れが出ているのでは。今年もおそらく伸びると期待している。エキナカで見て必ずしもその場ではなくネットで買うという『ショールーミング』は受け入れていくことだと思っている。リアルの業態として、顧客と共にそういった動きをしっかりやっていきたい。
関連して、新幹線の座席のトレーにNFCタグのシールを貼って、(デバイスを)タッチするとJRE MALLに接続される実証実験も計画している。単にECで買い物をしてもらうだけでなく、地域や旅などの情報も取れるようなコンテンツも用意して、楽しみながらアクセスできるというもの。様々な形でネットへの導線をリアルに配置したい。今までは座席の網ポケットに紙媒体で入れていたが、紙はオペレーションの大変さや、情報鮮度という点でどうしても時間がかかった。それをウェブ化して、分かる・買えるという状況を作りたい。実証実験は今年中に始めていくと聞いている」(つづく)
――「JRE MALL」の上半期を振り返って。
「傾向として、コロナの影響で2~4月頃はマスクやウイルス除去関連の商品が非常に伸び、その後も定着して色々なものが売れるようになった。全体として4~9月は前年同月比200%前後の売り上げで推移したイメージ」
――出店者数と取扱商品数は。
「出店者数は2020年10月1日時点で74店舗、約2万2000商品。(19年10月1日時点では38店舗、約9400商品)。今は商品カテゴリーで『肉』に力を入れていて、肉の専門店の牛肉だけでなく九州の鳥皮の店など。毎月29日を肉の日として、肉のメルマガを打つが非常に掴みがよい。あまり外で贅沢できず、家でパーティーといった傾向があるのかもしれない」
――利用者数は。
「訪問者数では大体月間90万人。昨年は月間50万人平均だったので、売り上げと同様に2倍近い増加。色々とサイト改善をして、コンバージョンレートが良くなった。訪問されて購入される率は上がったと思う。商品数の増加とともにサーバーのスペックがひっ迫して、特にコロナの影響で一気に(受注が)伸びた時はサイトが遅延するようなこともあった。そこですぐに増強を図り、かなり大幅にスペックアップしたので、そういったスピード感は上がってきたと思う。
また、メルマガの精度は、送るキャンペーンの内容や相手先の選別なども含めて改善されたと思う。開設から年数もたってきたことや、また(JR東日本の共通ポイントで、モール内でも使える)『JRE POINT』のデータもあるので、その中からシナリオを作っている。今はMAやレコメンドエンジンも入れているので試行錯誤しながら出し分けており、少しずつレートは上がっている」
――現状の顧客層は。
「大きく二つあり、鉄道グッズが大好きという方と、JRE POINTユーザーでもある駅ビルやビューカードの利用者とに分かれている。鉄道ファンはポイントに関わらず、あるグッズが出ると必ず買われるので、非常に手堅い。最近はオークションも開始し、鉄道古物などを販売している。あまり加熱しすぎないように上限価格を決めているが、出た瞬間すぐに上限価格で落札される。行先表示灯など1個当たり10万円くらいするもので上限価格を10万円に設定してもその価格で即決になるほど人気がある。
また、『大人の休日倶楽部』(『ビューカード』利用者の旅とライフスタイルの会員組織)会員はこういったECに慣れてきたのか、非常にメルマガへの反応が良くなってきた。メルマガの内容は主には地産品や食の内容でイメージしている。大人の休日倶楽部会員は他の属性よりも配信後のコンバージョンレートで高い傾向が出ている。
現状、JRE POINT会員の内、メルマガ配信を許諾している会員が200万人以上いるが、その内何十万人かずつにセグメントして送っている」
――集客施策は。
「毎月20日前後の土、日、月にビューカードキャンペーンを行っていて、4000円の購入で期間限定の500ポイントを付与している。これを期待している人が非常に多くて売上げが跳ねるところ。他にも毎月、(グループで飲料事業を行う出店者の)JR東日本ウォータービジネスが、24缶入りケースを自販機の通常販売よりもかなり割安で提供している時があり、それも1日ですぐ売り切れる人気の企画となっている。どちらも以前から行っており、当初は数日かけて売り切るという状況だったが、今はほとんどが即日完売なので、やはり客数のベースが上がって基盤ができてきたと感じる」
――リアルとECの連携について。
「ECとリアルは補完関係にある。以前からモール内で、ネット予約によって送料無料で(『エキュート』や『グランスタ』などの)店頭で商品が受け取れる「ネットでエキナカ」サービスを行っている。クリスマスケーキの時期などネット予約してエキナカで受け取る数は年々120%で推移しており、開始当初の8~9倍になった。コロナの影響もあり、『スマホで予約して決済』という行動に慣れが出ているのでは。今年もおそらく伸びると期待している。エキナカで見て必ずしもその場ではなくネットで買うという『ショールーミング』は受け入れていくことだと思っている。リアルの業態として、顧客と共にそういった動きをしっかりやっていきたい。
関連して、新幹線の座席のトレーにNFCタグのシールを貼って、(デバイスを)タッチするとJRE MALLに接続される実証実験も計画している。単にECで買い物をしてもらうだけでなく、地域や旅などの情報も取れるようなコンテンツも用意して、楽しみながらアクセスできるというもの。様々な形でネットへの導線をリアルに配置したい。今までは座席の網ポケットに紙媒体で入れていたが、紙はオペレーションの大変さや、情報鮮度という点でどうしても時間がかかった。それをウェブ化して、分かる・買えるという状況を作りたい。実証実験は今年中に始めていくと聞いている」(つづく)