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影響限定的も今後に警戒<通販各社、コロナ禍の爪痕は?> アフターコロナ見据え対応へ

2020年 5月28日 09:05

 5月26日に緊急事態宣言が全面解除され、収束に向けて動き始めた新型コロナウイルス。この数カ月間の感染拡大に伴う自粛要請などで経済活動にも大きな爪痕を残した。巣ごもり需要を取り込み、一部の事業者は堅調な業績となっている模様だが、実際にコロナは通販各社にどの程度の影響を与えているのか。通販実施企業各社にコロナの影響やそれに伴う足元の業績の状況、今後の見通しについて聞いた。
 







 本紙では大手各社を中心にコロナによる業績への影響や足元の状況について調査を実施した。それによるとコロナで受けたダメージは限定的とする事業者は少なくないようだ。

 千趣会は3月後半から直近まで通販事業は堅調に推移している。世間的にはコロナの影響を大きく受けているという衣料品については同社では影響は少ないという。また、インテリア分野も企業のテレワークの推進などでテーブルなどのニーズが高まっているという。生活雑貨はタオルなどの衛生用品が売れており、また子供用品も実店舗が閉じている状況などから売れ行きがよいという。食品は取扱数が少ないものの受注は順調だという。生産面はコロナによる中国協力工場の影響で多少の納期遅延はあったが、足もとでは回復しているという。

 スクロールでは昨年10月の消費増税の影響から完全に回復しきっていない中でのコロナ禍で「厳しさに拍車がかかった」(経営企画課)とする。メインのアパレルはそもそもマーケットが厳しい中、コロナの影響で一時期アジアの生産地からの供給が十分でなく、多くの機会損失につながったとする。同社ではさまざまな事業モデルを展開し、商材も多岐にわたっているため、業績への影響度合いにはそれぞれでこぼこがあるものの、ジャンルでいえば、アウトドア、ブランド品、化粧品、旅行などは、非常に厳しい状況が続いているという。一方で、雑貨(家回りの商品など)、インナーウェア、インテリア、家具などは、厳しい状況のなか、比較的、堅調に推移しているという。「総じていえば今後の影響も含めて少なくない」(同)とする。

 フェリシモでは巣ごもりニーズのための手芸商材、インテリア商材、マスク商材などが拡大傾向にあるよう。また、大型連休中には、自宅の片付けの手伝いを提案している「宅配クリーニングサービス」についても、通常よりも多めの申し込みがあったという。一方で、店舗販売は緊急事態宣言のもと販売施設が一時閉店したことで、商品を販売できなかった。これらの複数の影響が業績にどのような影響を与えたかについては、精査を進めている。

 ジャパネットホールディングスでは、新型コロナ感染拡大後の業績推移について「あまり変わりはない。在宅率は高いものの、購買意欲は抑えられているのではないか」(広報室)とする。自宅で過ごす消費者が増えたことから、炊飯器などの白物家電が好調に推移。一方で、宝飾品など不要不急の商品は露出を抑えているという。

 日本テレビ放送網の通販事業は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で日本テレビの他の番組の制作に支障が出ていることなどを受けて深夜枠の放送時間が増えたことに加え、紹介商品も外出自粛に伴う巣ごもりを意識した健康維持や衛生面を意識した振動運動器具「ブルブルボーテ」や空気清浄機「ダイソンピュアクール」などの商品の売れ行きが伸びていることなどで4月単月の状況は売上高、利益ともに前年同月を上回って順調に推移しているという。”外出自粛”を含めてこれまでのところ、同社の通販事業には新型コロナはプラスに出ており、こうした好影響は「少なくとも第1四半期(4~6月)ころまでは続くものと捉えている」(同社)とする。

 ヒラキでは学校の休校に伴い、スクール関連需要の商品に影響が出ている。同社では2~4月にかけて、上履きや新学期向けの運動靴などの繁忙期となっており、販促キャンペーンなども実施していたが、今回の臨時休校を受けて関連商品がほとんど動かなくなっている状態となった。外出規制の影響からか、靴商品全般や衣料品に関しても落ち込みが見られているというが、その一方でインテリアや日用雑貨、収納用品、寝具といった商品の販売は順調に推移。在宅時間の増加で家の中の調度品に対して関心が高まっていることが背景にあると見ている。

 また、メイン店舗である兵庫県内の郊外型の大規模実店舗は食料品なども扱う総合店舗形態で、普段は土日祝日などに自動車で来店する顧客が中心となっている。現在では閉店時間の繰り上げや消毒など各種コロナ対策を取っているものの、混雑を避けたい消費者心理からか、来店者数が減少。そのため、来店できなくなった顧客が通販を新たに利用する動きが出ている。実店舗のある兵庫県内の顧客については通販の新規登録会員が増加。全社的に靴商品の落ち込みをカバーするまでには至らないものの、ECで好調となった商材はあるようだ。

 JALUXでは4月の立ち上がりは、巣ごもり需要で食品、ワインを中心に好調に推移した。一方で外出の文脈に関わるような旅行用品やファッションカテゴリーが不振となっている。また、航空旅客の減少により機内誌通販カタログ「JAL SHOP」の売り上げに影響が出ている。サプライチェーンに関しては全国的にインスタント麺類の需要が拡大したことでカップ麺の「ですかい」シリーズの製造に影響が出ているもよう。

 ZOZOでは取引先ブランドの実店舗の休業を受けて、同社サイトに在庫が寄せられているなどでプラスの影響がある一方、ファッション商材全体に対するマイナスの影響が出ていることから、「現状は両影響が相殺しあって、プラスマイナスゼロの状況」(同社)という。

 化粧品通販を行うバルクオムは3月のECの月次売上高が前月比約30%増となった。4月も同50%増だった。

 導入店舗の営業時間短縮や一時休業の影響を受けたものの、ECが全体をカバーした。ECのみの前年同月比は、3月が倍増、4月が同165%増と伸長した。在宅勤務においてもウェブ会議の利用から服装や髪型、顔のテカリを気にする層が一定層おり、EC伸長も巣ごもり需要の拡大が要因とみている。

 通販企業A社(社名非公表)は通販事業は好調に推移しているカテゴリーと苦戦しているカテゴリーに分かれているが、店舗事業は休業により大きな影響を受けているという。商材としては、食品カテゴリーなど巣ごもり系商品などが好調だ。

 業績への影響は事業区分、商品カテゴリーによりまだら模様となる見込みだが、全体としてはマイナス影響が強いという。

今後の影響どう見るか?

 コロナの影響を踏まえ、各社は今後をどうみて、どのような舵取りを行っていくか。

 スクロールは今期業績について、6月以降に新型コロナの影響が出てくるのではないかとみており、「下期にかけて回復してくるのは間違いないだろうが、その速度はゆるやかだろう」(経営企画課)。一部には店頭を中心にリベンジ消費といった反動が出るものの、ベースとなる経済の回復が伴わないことから、全体としては消費も減速気味に推移していくと予測。「アフターコロナにおいてニューノーマルといわれる生活様式が根付けば、売れ筋商品の変化などが起こるのではないか。そういったことを想定して、顧客の消費マインド・行動の変化に合わせ、商品開発を含めたマーケティングの見直しが必要だ」(同)とする。

 フェリシモではコロナが及ぼす今期業績への影響については緊急事態宣言が終了したあとの購買動向や、第2波・第3波と呼ばれる再流行期があるか、などにより影響が発生するかどうかを注視する方針。「アフターコロナ」に関しては、「『新しい生活様式』と呼ばれるライフスタイルの転換の中で、社会全体から通信販売に対して、インフラとして機能に期待されていると理解している。『アフターコロナ』 と呼ばれている変化の時代が、いつどのような形でどのような規模で訪れるのか、はまだ予想できないため、顧客が安心して買い物できる環境作りと、暮らしの中で必要とされる商品を案内して届ける活動を継続していきたい」(広報部)という。

 JALUXは今期について「アフター(ウィズ)コロナ」を想定しながら、DMカタログの見直しなどを図り、新しいライフスタイルを見据えた商品開発を行っていく考え。今後の影響は不透明ながらも、ECを拡充することで前年以上の売り上げを目指していく。

 通販企業A社は「アフターコロナ」に関して、売れ筋商品の変化に加え、ネット販売を利用する顧客の増加、不景気影響による価格競争の激化が想定されることから「認識できた変化に素早く対応をしていくことが大切だ」とする。

 
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