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「助けたい」が業務に根付く<フェリシモのCSR活動> 90年の「森基金」からスタート

2020年 4月 9日 13:25

 「SDGs(持続可能な開発目標)」が世界的なトレンドとなっている。フェリシモでは、1990年代から類する活動を行ってきた。またビジネスモデルとしての「サブスクリプション」も注目を集めているが、同社の主力事業となっている、色・柄・デザインの違う商品が毎月1回届くコレクション(定期便)事業だ。ライバルとなる企業も増える中で、どう個性を打ち出していくのか。
 








 2020年に創業55周年を迎えるフェリシモ。創業当初とは同社を取り巻く環境は大きく変わっている。小池弘之執行役員新事業開発本部長は「ネット販売の普及で誰もが通販にチャレンジできる環境となり、いろいろな会社が参入するなど商流が大きく変わっている。プラットフォームを手掛ける巨大な企業が生まれる一方で、C2Cのフリマサービスのように、個人が個人に販売できるスキームも生まれた。当社にとってはチャンスではあるが、一方でライバルはたくさんいるので、独自の価値を磨き、企業としての存在理由をきちんと示していかなければ生き残ることができない」と危機感をあらわにする。

 SDGsが注目を集めるようになって久しいが、同社では30年以上前から、独自のやり方で環境問題や社会貢献などに取り組んできた実績がある。同社がこうした環境問題に初めてアプローチしたのは、1990年に発足した「フェリシモの森基金」。これは、次世代の子供たちに緑豊かな森を残すため、趣旨に賛同した顧客から毎月100円の寄付を受け、国内外の各地で森づくりを行うというもの。92年にはブラジルのリオ・デ・ジャネイロで「環境と開発に関する国際連合会議(アースサミット)」が開かれ、さらには97年には「京都議定書」が採択されるなど、世界的にも環境保護への意識が大きく高まり始めた時期だった。

 現在でも「フェリシモの森活部」として活動は続いている。「顧客が何か環境問題の解決に貢献したいと思っていても、チャンスがなければなかなか行動ができない。しかし、こうした基金があれば共鳴してくれるということが実感できた。普段の暮らしのなかで『森づくりに貢献したい』と思うことはあまりないかもしれないが、『買い物と一緒に毎月100円寄付すれば、森づくりや環境保護の貢献できる』となれば、なんとなく嬉しくなるのではないか」(小池執行役員)。

 こうした活動を続ける上で、カタログ通販という業態上、定期的に顧客とコミュニケーションが取れる点も重要という。寄付した顧客は、定期的に送られてくるカタログ上で「日本のこの場所に森を作りました」といった報告を見ることができるため「また寄付しようか」と、継続した支援につながるわけだ。「年に1200円寄付するのではなく、毎月継続していただくことが重要で、『当社と一緒に森を育てていく』という気持ちになれるのが、たくさんの顧客に賛同いただいているポイントではないか」(小池執行役員)。

 社会貢献活動も積極的に手掛けてきた。95年の阪神淡路大震災は、同社が本社を大阪市から神戸市に移転するための準備をしている時に発生した。小池執行役員は「顧客からの『フェリシモさんと一緒に復興支援をしたい』という声を受けて、復興のための基金を立ち上げた。日本全国から思いを受け取るとともに、継続して支援することの大切さを感じたので、こうした取り組みをより広げていこう、という意識が社内に浸透していった」と振り返る。

 2011年に起きた東日本大震災でも多様な支援策を手掛けてきた。継続して行ってきた支援として代表的なのは、12年に発足した、女性による東北復興を支援するプロジェクト「とうほくIPPOプロジェクト」だ。毎年多数の支援企業を選定しており、2020年でプロジェクトは10年目となる。また、18年9月に発生した北海道胆振東部地震の被災地である、北海道厚真町にベンチャーキャピタルを設立しており、事業性・独創性・社会性をあわせもったビジネスを展開する事業者に投資をしている。こうした支援活動は「社員一人ひとりが有事の際に『何か助けになりたい』という思いから自分たちで動き始めている。トップダウンばかりではなく、ボトムアップで話し合える環境が根付いているのではないか」(小池執行役員)という。

 同社では「ニッチではあるが確実にファンがいる商品やサービスを立ち上げる」という「クラスター&トライブ戦略」を打ち出しており、その柱となるのが「部活」だ。中でも多くの人に知られているのが、猫に関するユニークなグッズを多数販売している「フェリシモ猫部」だが、こうした「何か助けになりたい」という考え方は日常の業務にも根付いている。

 猫部には「猫の殺処分を無くす」という目的があり、全商品に基金を付けて販売している。小池執行役員は「『殺処分を無くしたい』と思っていても、個人で普通はたくさんの猫を飼ってあげることはできない。商品を買ってもらうことで世界や社会とつながったり、あるいは猫のために何かできたりということがあれば面白いし、生きがいにもなる」と基金を付与している理由を説明。その上で「当社ではコレクション事業を長年手掛けてきたが、昨今サブスクリプションが一般化していることは、有利な部分もあれば不利な部分もある。競争相手が増えることは確かなので、対策はしていかなければいけない。猫部のようなグループをたくさん作ることができれば、当社のバリューは高まっていくのではないか」と話す。

 猫部では、兵庫県を中心に賃貸・分譲マンション「ワコーレ」を展開する和田興産と猫と暮らすための賃貸物件「猫の家」を共同開発した。猫用のステップや、室内を行き来できる猫専用出入口、猫用トイレの設置場所などを完備し、猫による傷や汚れをあらかじめ想定した内装となっているマンションだ。

 同社では近年、新規事業として、保有するリソースや資産を活用した物流・ネット販売支援事業を展開しており、新たなビジネスパートナーと協業することで、さまざまな商品展開をしていきたい考え。小池執行役員は「パートナー企業と一緒に商品を作ったり、基金を運用したり、何らかの形で世界を変える構造を作っていきたい」と意気込む。
 
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