だいにち堂が消費者庁を相手取り、景品表示法処分の取り消しを求めた訴訟は、3月4日、東京地裁がだいにち堂の請求を棄却した。争点の一つは、健康食品の広告における暗示的表現の是非だった。判決は、消費者庁の主張を全面的に容れる内容。行政による「暗示規制」にお墨付きを与えるものだ。
だいにち堂は、今後の対応に、「弁護団と協議中」としている。消費者庁は、「暗示や間接的表現を含め表示全体から違法認定する従前通りの対応が認められた」(田中誠表示対策課特命室長)とコメントした。
だいにち堂は2017年3月、販売する健食の広告が、景表法の優良誤認にあたるとして、消費者庁から措置命令を受けた。翌年8月、これを不服として命令の取り消しを求め提訴した。
広告は、「ボンヤリ・にごった感じに」、「スッキリ・クリアな毎日」といった表現で訴求。だいにち堂は、これら表現は抽象的表現であり、商品の優良性を示すものではないと主張。不実証広告規制による根拠要求の対象外であるとした。抽象的表現に根拠を求めるのは、「表現の自由」も侵害するとして、同規制の適用は違法とした。
一方の消費者庁は、「ボンヤリ」等の表現は、目の見え方が不良・良好な状態を意味しうるものであり、商品の優良性を表現すると指摘。優良誤認の該当性判断のため、根拠を求めるのは不実証広告規制の適用要件を満たすと主張した。
判決は、広告は全体の印象から「商品の優良性を強調するもの」と判断。不実証広告規制の適用は妥当で、「表現の自由」の侵害にもあたらないとした。その上で、だいにち堂が提出した根拠も判断。体験談は統計的な客観性が確保されず、成分情報も商品の効果を客観的に実証していないとした。
健食の暗示的表現に対する規制は、年々強まっている。契機は、機能性表示食品制度の導入。健食に求められる科学的根拠に一定のルールが整備され、これに満たない健食の表示規制が強化された。アイケアにとどまらず、水面下では関節ケア、耳の健康等をうたう健食の監視も進む。だいにち堂訴訟は、行政による暗示規制の是非を問う重要な意味を持っていた。消費者庁も結果を注視していたとみられる。
今回、取締りを支持する判決が示されたことで、消費者庁は自信をもって取締り強化を進める可能性がある。4月には、事後チェック指針の運用を開始。伊藤明子長官は会見で、「機能性表示食品制度の安心感が高まる」と触れる一方、健食への対応は「規制に注力できる」としていた。
行政に近い関係者も「今回の結果を消費者庁も喜んでいる」と話す。田中室長は、今後の健食の表示規制に、「表示全体から何を訴求するかをとらえるかが一つの目安になる」(同)と話す。
わずか5%に着目<消費者認識、どう判断>
法廷では、だいにち堂と国が互いに行った「消費者調査」を戦わせた。広告を見た消費者の印象は、消費者庁調査の6割が「目の症状改善」。だいにち堂調査は6割が「何の効果も期待できない」など否定的な回答で、真っ向から対立した。
判決は調査の設計に議論の余地があるとしながらも、だいにち堂調査を引き合いに、広告を見て「購入したい」等と回答した約5%に着目。その回答者の7割が「宣伝文句が気に入った」「効き目がありそう」と回答したことを採用し、商品の優良性を強調したとする主張を支持した。
景表法に詳しい弁護士は、「買いたい人に限れば効果があると認識する消費者が相当割合いるので不当表示、とした点が興味深い」と、印象を話す。別の関係者も「外れ値のような少数の回答をもって消費者の印象を語っている」とする。
調査は、広告を見て「購入したくない」等の回答も約7割あった。ただ、弁護士は、「老眼に関係ない若者に聞いても仕方がない。潜在的な需要者を基準にした誤認の認定は妥当」と話す。先の関係者は、「景表法が想定する一般消費者は、経済行為で想定される『平均人』だけでなく、とくに影響を受けやすい人まで含むということになる」との見方を示す。
景表法訴訟は、消費者調査による立証が定石だが、「大多数の平均人はそう感じないと主張することは難しく、もう一つの立証法である専門家の意見、学術論文を根拠としたほうが目があるように思う」(同)と話す。
だいにち堂は、今後の対応に、「弁護団と協議中」としている。消費者庁は、「暗示や間接的表現を含め表示全体から違法認定する従前通りの対応が認められた」(田中誠表示対策課特命室長)とコメントした。
だいにち堂は2017年3月、販売する健食の広告が、景表法の優良誤認にあたるとして、消費者庁から措置命令を受けた。翌年8月、これを不服として命令の取り消しを求め提訴した。
広告は、「ボンヤリ・にごった感じに」、「スッキリ・クリアな毎日」といった表現で訴求。だいにち堂は、これら表現は抽象的表現であり、商品の優良性を示すものではないと主張。不実証広告規制による根拠要求の対象外であるとした。抽象的表現に根拠を求めるのは、「表現の自由」も侵害するとして、同規制の適用は違法とした。
一方の消費者庁は、「ボンヤリ」等の表現は、目の見え方が不良・良好な状態を意味しうるものであり、商品の優良性を表現すると指摘。優良誤認の該当性判断のため、根拠を求めるのは不実証広告規制の適用要件を満たすと主張した。
判決は、広告は全体の印象から「商品の優良性を強調するもの」と判断。不実証広告規制の適用は妥当で、「表現の自由」の侵害にもあたらないとした。その上で、だいにち堂が提出した根拠も判断。体験談は統計的な客観性が確保されず、成分情報も商品の効果を客観的に実証していないとした。
健食の暗示的表現に対する規制は、年々強まっている。契機は、機能性表示食品制度の導入。健食に求められる科学的根拠に一定のルールが整備され、これに満たない健食の表示規制が強化された。アイケアにとどまらず、水面下では関節ケア、耳の健康等をうたう健食の監視も進む。だいにち堂訴訟は、行政による暗示規制の是非を問う重要な意味を持っていた。消費者庁も結果を注視していたとみられる。
今回、取締りを支持する判決が示されたことで、消費者庁は自信をもって取締り強化を進める可能性がある。4月には、事後チェック指針の運用を開始。伊藤明子長官は会見で、「機能性表示食品制度の安心感が高まる」と触れる一方、健食への対応は「規制に注力できる」としていた。
行政に近い関係者も「今回の結果を消費者庁も喜んでいる」と話す。田中室長は、今後の健食の表示規制に、「表示全体から何を訴求するかをとらえるかが一つの目安になる」(同)と話す。
わずか5%に着目<消費者認識、どう判断>
法廷では、だいにち堂と国が互いに行った「消費者調査」を戦わせた。広告を見た消費者の印象は、消費者庁調査の6割が「目の症状改善」。だいにち堂調査は6割が「何の効果も期待できない」など否定的な回答で、真っ向から対立した。
判決は調査の設計に議論の余地があるとしながらも、だいにち堂調査を引き合いに、広告を見て「購入したい」等と回答した約5%に着目。その回答者の7割が「宣伝文句が気に入った」「効き目がありそう」と回答したことを採用し、商品の優良性を強調したとする主張を支持した。
景表法に詳しい弁護士は、「買いたい人に限れば効果があると認識する消費者が相当割合いるので不当表示、とした点が興味深い」と、印象を話す。別の関係者も「外れ値のような少数の回答をもって消費者の印象を語っている」とする。
調査は、広告を見て「購入したくない」等の回答も約7割あった。ただ、弁護士は、「老眼に関係ない若者に聞いても仕方がない。潜在的な需要者を基準にした誤認の認定は妥当」と話す。先の関係者は、「景表法が想定する一般消費者は、経済行為で想定される『平均人』だけでなく、とくに影響を受けやすい人まで含むということになる」との見方を示す。
景表法訴訟は、消費者調査による立証が定石だが、「大多数の平均人はそう感じないと主張することは難しく、もう一つの立証法である専門家の意見、学術論文を根拠としたほうが目があるように思う」(同)と話す。