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売上激増で出荷遅れ、受注停止も<新型コロナ、通販各社への影響は>従業員支援制度の導入進む

2020年 3月 5日 13:40

 新型コロナウィルスの感染拡大は通販実施企業各社にどのような影響を与えているのだろうか。業績面への影響はこれまでところは限定的のようだが、一部商材での急激な売り上げ増への対応や、今後は中国での仕入れ品を中心に調達が困難となる商材も出てきそうで中長期的なダメージが懸念されそうだ。一方で顧客や従業員を守るため、イベント等の中止の決定やテレワークの導入を行う事業者も目立ってきている。新型コロナウィルスを巡る通販各社の現状とはーー。(社員を支援する制度の導入を進める通販各社、写真はランクアップの社内の様子=同社提供)。
 
 新型コロナウィルスの関連拡大で人々の消費環境に大きな変化が起きている。衛生関連商品の売れ行きが急増し、また、「品切れになる」などの不安からトイレットペーパーなどが品薄状態に。さらに小中高校の休校に伴い、生活用品全般の売れ行きが急増している。

 通販の場合は感染リスクを軽減できる利点もあり、特に利用が急増しているよう。仮想モール大手の「楽天市場」ではマスクや消毒薬が売れ筋上位に顔を出しているほか、先週末からはトイレットペーパーの売れ行きが急上昇。楽天が運営している日用品ネット販売の「楽天24」では、赤ちゃん用のおしりふきや紙おむつ、生理用品といった紙製品が売れている。なお、コロナウィルス対策関連商品の便乗値上げや、高額転売なども目立っており、楽天市場でも一部の出店者がマスクや消毒液などの価格を吊り上げているのは確認しているという。同社では以前から災害時等に乗じて商品価格を著しく高くする行為を規制するガイドラインを運用しており、1月末にサポートニュースで、全店舗に指針に沿った運営を要請。あわせて、需要が高まっているマスクや消毒液などの納期の再確認も促した。著しく価格が高い商品については商品掲載を停止しているという。

 アスクルが運営する日用品通販サイト「ロハコ」でも特に2月に入り売り上げが急増。新型コロナの報道が出始めたあたりからマスクや消毒液、除菌シートなどの衛生用品の売れ行きが急増、品切れを起こすなどしていたが、2月下旬以降は「衛生用品に限らず、ティッシュペーパーやトイレットペーパーのほか、日用品全般で急激に売り上げを増えた」(同社)とし、「連日、前日の日商を1・5倍以上程度上回るなど状況」(同)となった。現状、ロハコの商品は埼玉・日高と大阪・吹田の2つの物流拠点から出荷しているが、両拠点とも1日の上限出荷量をオーバー。前日までに発送ができなかった分の積み残しのため、通常時であれば翌日には顧客のもとに商品を届けられていたが、2月下旬からは注文から配送まで3~4日、商品によっては1週間以上かかる状態になっていたという。

 物流拠点の人員を増員するなどの対策をとりつつ、また、2月27日付で配送遅延と商品購入の抑制を顧客に通知したが、改善はみられず、出荷残の解消を図らねばますます配送遅延が進むと判断し、これまでの出荷残を解消するために3月4日の午後3時から2日間、アスクルが仕入れ販売する直販商品の注文を停止する異例の措置をとった。

 なお、「ロハコ」のマーケットプレイス機能を使って出店する事業者の商品やアスクルの倉庫から出荷しないメーカーからの直送品などはそのまま受注を継続。また、ヤフーの仮想モール「PayPayモール」に出店する「ロハコPayPayモール店」は同様に配送の遅延は発生しているものの受注の休止などは行わないという。

 靴の企画・販売を手がけているヒラキでは、衛生関連用品の品薄が起きている。通販サイトでは2月3日に春向け新商品としてマスクを発売。1人5箱までの購入制限をかけていたにも関わらず、数十枚入りで4000箱あったマスクが、発売から2~3日程度で完売した。その後も、非常時向けの「防災セット」についても中に数枚のマスクが入っていることから注文が集中。1つ数千円と生活雑貨のジャンルの中では比較的高単価ではあるものの、品薄の状況が続いているという。3月に入り、マスクについては限定的に仕入れができるようになったものの、同社の場合は実店舗も運営しているため通販向けの在庫にまではまだ手が回っていない状況。

 家具や日用品などの販売を手がけているジェネレーションパスでも日用雑貨を中心に注文が殺到し、品薄の状態が起きている。特に小中高校の休校を契機に消費者の警戒レベルが上がったことでトイレットペーパーやティッシュといった日用品の注文が急激に伸びたという。除菌シートやマスクといった衛生用品については、それ以前の早い段階から売り切れの状態が続いている。こうした状況に陥ったのは東日本大震災以来ぶりの出来事だと見ている。「結局サプライチェーンが乱れている。新生活シーズンを前に中国の生産商品など入ってこないものがあるので、全般的には商品が足りない状況が続くのでは」(同社)という。

商品調達や越境ECへの影響も

 生活用品を扱う通販実施企業を除き、通販各社の業績への影響は今のところは限定的のようだが、今後、商品調達面を不安視する声は多い。

 中国をはじめ東南アジアなどの協力工場に商品の清掃を委託しているヒラキでは2月に発売を開始した春物商品は問題がないものの、4月入荷を予定していた夏物商品の一部については生産の遅れが懸念されており、夏向け通販カタログの掲載に間に合わない可能性も出ているという。ただ、中国の協力工場はコロナウィルスの発生源とされる武漢とは離れているため、2月下旬より徐々に稼働を再開しているようだ。このほか、「中国からの商品の入荷に関して遅れが出る恐れがあるので、影響を見積もっている」(ベルーナ)、「衣料品や家具なども中国から調達しているものも多く、今後は調達面で影響は出てきそう」(ディノス・セシール)との声も。また、越境ECへの影響についても「中国本土の物流インフラに一部影響が出始めている。直営店も外出自粛の影響から来客が減少している」(新日本製薬)など影響が出始めているようで今後が注視されそうだ。

従業員の支援各社の対応は

 新型コロナの感染から従業員を守るため、時差出勤や在宅勤務などの対応を進めている企業も多い。また学校の休校に伴い、子供を持つ社員への支援策をとっている企業も目立ってきている。

 例えばオイシックス・ラ・大地では「お子さまお預けサポート」「スーパー時差通勤」「細切れリモートワーク」という従業員の支援制度を新設。お子さまお預けサポートは、休校から春闇期間中に実家や知人宅などへ子供を預けた後に出勤する場合、追加となる交通費を会社側が負担して支援。さらに実家など場所が遠い場合においては横浜や埼玉・ふじみ野市などに設けているサテライトオフィスでも勤務できるようにもしている。サテライトオフィスは今後、増設していく。スーパー時差通勤では、すでに午前11時まで通勤時間をずらすことができる制度を設けているが、上長の承認を得たうえであれば何時での出勤も可能にしている。細切れリモートワークは、すでに推奨している在宅勤務において、今回の事態を受け子供の世話などの必要性から「朝3時間」「午後2時間半」「夜3時間」と分断した時間帯での在宅勤務においても1日分(通常の8時間勤務)とみなすもの。これらの制度で従業員を支援していく。

 新日本製薬ではコールセンターは時差出勤で受電体制に支障がでるため、体制を調整中とするが、他部門については時差出勤を実施。また、学校の休校を受け、本社会議室に臨時の託児所を設置。ベビーシッターを雇用して子連れ出社にも対応する。

 ランクアップは2月3日から社員の時差通勤(午前5時~午後10時で調整)、テレワーク、社員や来客者への検温を実施。また、子連れ出社やマイカー・自転車通勤を新たに実施。駐車・駐輪代やガソリン代も支給している。

 顧客向けのイベントや新たな商品・サービスをPRするための記者発表会なども新型コロナの感染の抑制のために相次いで中止・延期となっており、こうした点も今後、業績に影響を与える可能性もあり、注視されそうだ。



社員の9割評価も一部業務では支障、GMOインターネットグループが在宅勤務者に調査

<在宅勤務、社員の本音は?>

 新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、多くの企業で従業員に在宅勤務を奨励しているが、実際に慣れない自宅で効率的に働けるのだろうか。従業員たちの本音はどうなのか。コロナウィルスの感染拡大に対応していち早く1月27日から東京、大阪、福岡の従業員4000人を対象に原則、在宅勤務体制に移行させたGMOインターネットグループが従業員を対象に実施したアンケート調査によると、ほとんどの従業員が在宅勤務を高評価している一方で、管理部門など一部の部門、またグループ企業の中でも金融関連企業では業務に支障が出たり、自宅では設備が整っておらず、作業効率が低下するなどの課題も浮かび上がっているようだ。

 GMOインターネットグループは在宅勤務を行う従業員を対象に2月3~4日に在宅勤務に関するアンケート調査を実施、2800人から回答を得た。まず「在宅勤務体制への率直な意見」を尋ねたところ、「とても良かった」「良かった」の合計で87・2%がプラスと評価した一方で、業種別にみると一般事務などでは「とても悪かった」「悪かった」の合計値が他の業種よりも高く、また、グループ内の会社別では金融系企業の評価が低く、中には「とても悪かった」「悪かった」の合計が半数程度まで達するところもあった(=上表)。

 次に「在宅勤務になって業務に支障があったか」と尋ねたところ、70・1%は問題ないと回答した。一方で職種別にみると「一般事務」では約半数、「管理部門」では約4割、「営業管理部門」では約3割で「支障があった」と回答。グループ内の会社別では金融関連企業の多くは半数近くの従業員が「支障があった」と回答した。「業務に支障があった」と回答した従業員に理由を尋ねたところ、「リモート環境が遅い/アクセスできない」や「椅子机とPCサプライがないことによる作業効率悪化」といった働く上での設備面のほか、「コミュニケーションの減少」や「紙ベースの業務に支障」「業務上、在宅では対応が難しい」などの声が上がった。

 「アウトバウンド・コールセンター・電話応答業務について通常時と同様に電話の受発信ができているか」と聞いたところ、受電には「できている」が54・3%と「できていない」の7・6%を大きく上回ったが、発信は「できている」が26%、「できていない」が6%と回答割合の差は小さく、在宅勤務環境における電話の発信について課題を残しているようだ。電話の受発信ができていないと回答した人に理由を尋ねたところ、自宅・個人での対応ができず、社用携帯もないという電話端末に起因する課題と受発信のためのシステム環境に関する課題があることが分かった。

 最後に在宅勤務についての意見を聞いたところ、「私用PCを終日拘束させる形になり家庭でPCが使用できない。全部署にノートPCを貸与頂きたい」や「勤務時間を優位期に活用でき生活の質があがった。普段から在宅勤務ができるようにしてほしい」「在宅勤務環境を整えるために会社から補助があったら効率が上がると思う」「在宅勤務は家族の極力なしでは成立したい。在宅勤務者だけでなく家族への何らかのサポートがほしい」などの意見があがった。

 
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