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“配送クライシス”を救えるか? 通販の物流変える進化するロボット

2020年 2月13日 13:40

 
 配送事業者による運賃値上げ、いわゆる「宅配クライシス」にあえぐ通販業界だが、通販にとって配送は欠くことができない以上、各社は何とか対応していかざるを得ないが、その1つの対策として注目されるのが”物流ロボット”だ。最新の技術により生み出されたロボを導入することで作業負担の軽減や省人化による経費削減などに大きな効果を発揮する可能性があり、すでに導入し始めた通販事業者も出てきている。通販の物流を大きく変えうる可能性を秘めた物流ロボを見ていく。






階段の昇降も可能、自動走行で置き配

 ネット通販の拡大とともに宅配便の再配達も増えている。この再配達の数を減らす試みとして注目されているのが「置き配」だ。通販や物流業界がそれぞれ置き配の本格実施に向けて試行錯誤を続けているが、置き配をロボットで実現しようという動きも始まっている。

 1月30日にロボット開発のAmoebaEnergy(アメーバエナジー)が実証実験を行った。日本郵便(JP)の協力のもと実施した実験では、アメーバエナジーが開発したロボットを使用。オートロックのマンション内を移動して、複数の荷物を決められた部屋の前に置いていくという実験を行った。

 実験に使用したロボットは「Amoeba GO‐1(アメーバゴーワン)」。通常のロボットはパワフルで精度の高い動きを実現するために硬い素材を使うのに対し、このロボットは柔らかい素材を使用しているのが特徴。ラストワンマイルでの使用を想定した車輪で走行するタイプのロボットの場合、階段や段差を乗り越えることができず平らな地面のみでの配送になる。一方のアメーバゴーワンはキャタピラー部分が柔らかい素材になっており、段差を乗り越えたり階段の昇降が可能になる。アメーバエナジーの青野真士社長は「階段の形状やサイズに多少のイレギュラーがあっても関係なく昇れる。従来のロボットには難しかった仕事を実現できる」と説明する。

 アメーバゴーワンは無人で自動走行することもできる。マンションなど建物の構造を読み込ませておくと、センサーで現在地を判断して方向を決めて自律走行する。さらに重い荷物にも対応し、その荷物を決められた位置に置くことが可能。ボディの背中を丸めてダンプカーの荷台のように傾斜をつけることで、荷物を受取人の玄関先に落とす仕組み。配送員は一度荷物をロボットに預ければ、その場を離れることができるため、再配達の手間を省くことができる。

 実証実験は神奈川県相模原市の廃校をオートロック付きのマンションに見立てて実施した。JPの配送員が荷物を持ってやって来て、手元のタブレットを操作してロボットを呼び出す。するとマンションの内部に待機していたロボットが配送員のところに向かい、自動ドアが内側から開く。配送員はロボットに複数の荷物を積み込む。その際にタブレットを通じて積み込む位置が指示される。そこからロボットは1階の101号室に向かい、玄関先で荷物を置き、その様子を写真で撮る。撮った画像は荷物の受取人に送信される。次に階段を昇って2階に向かい201号室の前で荷物を置いて、写真撮影と送信を行う。

 この一連の動きを人が操作することなくすべてアメーバゴーワンが自動運転で完了させた。実験では走行速度は時速1キロ。安全性を担保するためにこの速度を採用したが、3キロや4キロにすることも可能。ロボットはバッテリーで動いており、一度の充電で約3時間走行する。

 青野社長はアメーバゴーワンを「移動式の宅配ロッカー」と位置付ける。再配達削減の一つとして注目される宅配ロッカーだが、設置されていないマンションも多く、設置されていてもすでに荷物で埋まっているケースも少なくないがアメーバゴーワンであれば、配送員が来るたびに荷物を運び、空の状態で戻ってくる。つまり「常に空きのある移動式の宅配ロッカーのように利用することができる」(青野社長)というわけだ。

 実験に参加したJPのオペレーション改革部の五味儀裕部長によると、再配達削減に向けて置き配の取り組みを進めているものの、オートロックのマンションでは受取人の玄関先まではアプローチができないという。そこでロボットに着目する中で「車輪型の配送ロボットでは難しい階段や段差を乗り超えというのは面白い発想」と期待を寄せる。アメーバエナジーでは2021年度の製品リリースを目指している。

 
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