ヤフーが新たに立ち上げた大手および優良店のみに出店を制限した仮想モール「PayPayモール」が本格始動した。すでに10月16日からPC版をオープンしたが、同24日からはアプリ版もスタート。さらに11月1日からは大規模なキャッシュバックキャンペーンを開始。同時にテレビCMも実施するなどプロモーションも強化して集客策を本格化し始めた。通販実施各社からの関心も高い盛り上がりを見せるスマホ決済サービスの名を冠したインターネット上の新たな売り場はその期待通り、出店者にとって集客力・売上アップという福音をもたらすことになるか。
「去年、大変に盛り上がったキャンペーンをオンライン、eコマースでもやりたいと100億円を用意した。あの”熱狂”を再びと期待している」。ヤフーは10月16日からPC版とスマホブラウザ版、同24日にはアプリ版(iOS・Android)を開始した新たな仮想モール「PayPayモール」の垂直立ち上げを図るべく、11月1日から「PayPayモールで100億円相当あげちゃうキャンペーン」と題した大規模なキャンペーンを開始した。
10月7日にスタートしたフリマアプリ「PayPayフリマ」とともに購入者がグループのスマホ決済サービス「PayPay(ペイペイ)」で決済した場合、通常の還元率1%に加え、9%分の合計10%分を還元。加えてヤフーの有料会員「ヤフープレミアム会員」にはさらに5%、同じくソフトバンクのスマホ利用者(※PayPayモールはワイモバイル利用者も)の場合もさらに5%を追加付与し、最大で20%分を「ペイペイ」の電子マネーで還元するもので、昨年12月に実施し、同キャンペーンのスタート直後から、「ペイペイ」を決済手段として導入している家電量販店で連日、キャッシュバックを求めて来店客が殺到、わずか10日間で原資の100億円を使い切るなど熱狂を生んだ「100億円あげちゃうキャンペーン」のオンライン版という格好だ。
なお、キャンペーン期間は「PayPayフリマ」は12月25日まで、「PayPayモール」は来年1月31日までとしているが、同じく100億円の原資を使い切った場合はその時点でキャンペーンは終了する。
大きな熱狂を生んだ昨年12月のキャンペーンのような還元額上限が月5万円でまた、一定の確率で決済額全額相当(上限1回10万円)が還元されるという建付けに比べると、今回のキャンペーンは還元額の上限は月1万円分(※キャンペーン用の9%追加付与の上限)であり、また、一定確率で全額バックという試みもなく、訴求力は弱いとも言えそうだが、昨年12月当時と現在では「ペイペイ」を巡る状況が大きく異なる。当時は「ペイペイ」自体が昨年10月からの開始から間もなく利用者も少ない状況だったが、現在ではユーザー数は1500万人を突破、決済回数も累計で1・7億回となるなど世間に浸透。また、昨年12月のキャンペーンを含め、利用者拡大のために続けてきた度重なるバラマキキャンペーンの効果からすでに一定額の「ペイペイ」の残高を持つ利用者も多く、それをフックに、普段は実店舗で利用する分を「PayPayモール」へ向かわせるという点においては今回のキャンペーンの内容でも十分だと言え、また、「PayPayのキャンペーンはお得そう」という世間に刷り込んだ認識をさらに今回のキャンペーンに合わせてタレントの宮川大輔さんとゆりやんレトリィバァさんを起用して実施するテレビCMを軸とした大規模なプロモーション展開で増幅することで「PayPayモール」への集客力を高めることになることになるかもしれない。
「PayPayフリマ」と「PayPayモール」のキャンペーン開始に先駆けて10月28日に都内で開催した発表会に登壇したヤフーの小澤隆生COOは「PayPayモールという新しいモールを皆様に使って頂きたい。実店舗と異なり、レジ前での行列ができるなどの混乱がなく、買いたい時にスムーズに買って頂ける。昨年12月のPayPayのキャンペーンにように非常に盛り上がると予想している」と期待感を覗かせた。
今回のキャンペーンおよび「PayPayモール」の成功は「国内ECで流通総額1位を目指す」としながらも競合である楽天やアマゾンになかなか追いつけず万年3位のポジションに甘んじているヤフーにとっても今後の戦略上、重要な局面とも言えそう。
ヤフーは広告事業に次ぐ収益の柱としてEC事業の拡大に注力。運営する仮想モール「ヤフーショッピング」では13年に「eコマース革命」と称して出店者への出店料・販売手数料などを無料とする施策などにより、順調にEC事業の拡大を進めてきたが、近年では行き詰まりも見せていた。仮想モール事業拡大のためには流通総額の多くを稼ぎ出す顧客から支持の高い優良事業者や高い知名度や商品力を持つ大手事業者の積極的な参戦が必須となるが、「eコマース革命」以降、確かに出店者数や商品数は大きく増え、規模拡大には貢献したものの、その代償として怪しげな店舗や稼働すらしていないような店舗も含めて、膨大な店舗が出店するようになり、それら店舗との同一視や埋没を嫌った優良店が嫌気を見せ始めたり、大手事業者が出店自体を避ける事態となっていた。それゆえ、ヤフーとしては売り上げの3%という販売手数料の徴収を復活させる一方で、「ヤフーショッピング」で上位の優良店または上場企業や一定の年商規模の大企業などに出店者を制限した選別されたプレミアムな別の売り場を用意することで消費者への訴求力が高い優良・大手の事業者が出店してもらえ、かつ、やる気を持って運営に臨んでもらえるよう「PayPayモール」という「ヤフーショッピング」とは別の新しい仮想モールを新設したわけだ。
とはいえ、新モールの出店対象となる優良・大手の通販各社が動くか否かはコンセプトよりも実績だろう。プレミアムな売り場というコンセプトを説明されても、本当に出店によって自社のブランドが毀損されず、また、具体的に売り上げアップにつながるかが、出店を決めたり、出店をしてもやる気を失わずに主体的に販売してもらえるかの大きな条件となるだろう。
すでに「ヤフーショッピング」からの乗り換えを含めて「PayPayモール」へ出店を決めた各社に聞き取り調査を行ったところ、新モールに期待することについて「今後の集客力・売り上げアップ」(化粧品販売A社)、「集客に期待」(家電販売B社)、「わかりやすいUIや安心・安全のプラットフォーム運営の確立」(家電販売C社)、「モール自体にブランディングと集客の強化」(衣料品・雑貨D社)、「モール自体の認知度を最大限上げてほしい」(雑貨販売E社)などと回答し、これまでのモールにはない特別感や集客力を求めているようだ。なお、「PayPayモール」の現状の売り上げについては「概ね目標値通り」(A社)、「これまで(ヤフーショッピング出店時)と特に変化はないが、年末に向けての売り上げ増を期待している」(C社)、「増えているとは思う」(D社)という回答の一方、「モールの認知も低いことから厳しい状況」(D社)との声も出てきている。
今回の大型キャンペーンの成否、つまりプレミアム感を維持しながらどの程度、新規の利用者を増やし、短期間で流通総額を押し上げられるか。その成果の度合いで、すでに出店をしている事業者は本腰を入れ始めるはず。また、いまだ未出店の事業者も出店を決めるかもしれない。例えば、PayPayモールの目玉の出店者とされながらも、12月中旬まで出店が遅れるという先日、ヤフーが連結子会社化すると発表し、現在、TOBを進めるZOZOのファッションECサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」。「現在、出店する各ブランド1社1社に伺って、PayPayモールに出店頂けるか確認している。ブランド数が数千に及ぶために時間がかかっているが、ブランド側の反応は”好調”」(小澤COO)と説明しているが、昨年12月に「ゾゾタウン」で実施し、商品の安売りにつながり、ブランドを毀損するという懸念と反発から出店ブランドの一部がゾゾへの商品供給を停止する事態となり、今年5月で中止した常時10%割引になる有料会員サービス「ゾゾアリガトーメンバーシップ」の件を見る限り、決済サービスとはいえ、安売りにつながりかねない「ペイペイ」というインセンティブを軸に集客をかける「PayPayモール」に出店をすることにナーバスになっているブランドも一定数あるはずで、そのあたりが出店のネックとなっている可能性もあるが仮に今回のキャンペーンが成功裏に終わればブランド側が認識を改め、スムーズな出店につながるかもしれない。
いずれにせよ、今回のキャンペーンは「PayPayモール」の今後を左右することになりそうで、行方が注視されそうだ。
ゾゾの出店は12月中旬メドに、ブランド各社との交渉は“好調”
<小澤COOが語るPay Payモールの狙い>
本格始動した「PayPayモール」の狙いについて、ヤフーの小澤隆生COOに聞いた。(10月28日開催の「PayPayフリマ」「PayPayモール」キャンペーン・新CM発表会での本紙記者を含む報道陣の質疑応答から一部を抜粋・要約)
◇
――すでに「ヤフーショッピング」があるが、新たな仮想モール「PayPayモール」を立ち上げた理由は。
「リアルの小売りにおいて、コンビニ、ドラッグ、スーパー、百貨店、アウトレットなどと売り場が分かれているように、当社としてはネット上でも消費者がリアルで想起するような売り場を揃えていきたい。フリーマーケットもオークション会場もショッピングモールも持っているが、百貨店がなかった。多様な売り場を設けることで消費者への選択肢を増やしていくことが現状の方針だ。また、モールの出店者からすると、がちゃがちゃと何でもあるモールに出店したくないという声もあった。例えば自らのブランドを大切にしているアパレルメーカーなどからだ。そうした出店者のニーズに対しても応えていくために、PayPayモールを作った」
――今回のキャンペーンでは最大20%分を還元するとのことだが、内訳はPayPayユーザーが10%、ヤフーの有料会員が5%、ソフトバンクとワイモバイルのユーザーが5%となっている。ある種の会員囲い込みの施策だと思うが、特にどの層を狙っているのか。
「結果的にお客様がソフトバンクで契約いただいたり、有料会員になって頂ければ大変うれしいが、それはお客様に委ねたい。当社としては分かりにくくならないようCMなどでも『最大20%還元』と『最大』というところを強調させて頂いている。ただ、ペイペイで決済頂ければ誰でも10%は還元する。10%でも小さな額ではない」
―――「ペイペイ」という決済機能とECを連携させることでヤフーのEC事業はどう成長していくか。
「ペイペイはあくまで決済であり、それ単体でeコマース事業がものすごく成長するかといったらそうではない。ただ、ペイペイはお客様にとってお得なイメージがあること。また、リアルでペイペイを使って買い物をすることによってペイペイが還元される。それをオンラインでも使えることで、ぐるぐる回すことで誘導していくというマーケティング的な意味においては非常に効果的だと思っている。ECの本質である品ぞろえや価格、配送などの部分が重要だがこれにペイペイが加わることでプラスになるはずだ。ペイペイに過度な期待を抱いてはいないが、ヤフーとしては2020年代のどこかでEコマースで日本一になりたいと思っている目標感は変わっていない。PayPayモール、PayPayフリマという新しく戦力を加える中で、実現性を増していきたい」
――目玉の出店者の1つのゾゾタウンの出店がまだだ。ゾゾに商品を供給しているブランドがPayPayモール出店に難色を示しているのか。
「ゾゾは12月中旬のオープンを目指して準備を進めているところだ。ブランドさんすべてにお邪魔をして『PayPayモールに出ますか、出ませんか』という確認を取らせて頂いているところだ。何せブランドは何千とあるため、時間がかかっている。ただ、状況を聞いている限り、(ブランドからの反応は)大変、好調だ」
――社長解任や資本提携の解消などを互いに求めるなど、関係性が悪化していたアスクルの「ロハコ」が出店しているが、関係は改善したのか。
「色々とあったが私どもの解釈では大変、仲良くといったら変だが、非常に前向きな方向でやり取りさせて頂いている。PayPayモールにすでに出店頂いているということでそのあたりを解釈して頂きたい」
――ペイペイの利用はオンラインの比率はかなり少ないと思うが、どのくらいまで向上させていくのか。
「日本のeコマース化率は全体の5~8%と言われている。これが米国や英国などでは15~20%ぐらいとされている。日本も短期的にはその程度の比率になるはずで、ペイペイの利用もオフラインとオンラインで同じような比率になるのではないか」
「去年、大変に盛り上がったキャンペーンをオンライン、eコマースでもやりたいと100億円を用意した。あの”熱狂”を再びと期待している」。ヤフーは10月16日からPC版とスマホブラウザ版、同24日にはアプリ版(iOS・Android)を開始した新たな仮想モール「PayPayモール」の垂直立ち上げを図るべく、11月1日から「PayPayモールで100億円相当あげちゃうキャンペーン」と題した大規模なキャンペーンを開始した。
10月7日にスタートしたフリマアプリ「PayPayフリマ」とともに購入者がグループのスマホ決済サービス「PayPay(ペイペイ)」で決済した場合、通常の還元率1%に加え、9%分の合計10%分を還元。加えてヤフーの有料会員「ヤフープレミアム会員」にはさらに5%、同じくソフトバンクのスマホ利用者(※PayPayモールはワイモバイル利用者も)の場合もさらに5%を追加付与し、最大で20%分を「ペイペイ」の電子マネーで還元するもので、昨年12月に実施し、同キャンペーンのスタート直後から、「ペイペイ」を決済手段として導入している家電量販店で連日、キャッシュバックを求めて来店客が殺到、わずか10日間で原資の100億円を使い切るなど熱狂を生んだ「100億円あげちゃうキャンペーン」のオンライン版という格好だ。
なお、キャンペーン期間は「PayPayフリマ」は12月25日まで、「PayPayモール」は来年1月31日までとしているが、同じく100億円の原資を使い切った場合はその時点でキャンペーンは終了する。
大きな熱狂を生んだ昨年12月のキャンペーンのような還元額上限が月5万円でまた、一定の確率で決済額全額相当(上限1回10万円)が還元されるという建付けに比べると、今回のキャンペーンは還元額の上限は月1万円分(※キャンペーン用の9%追加付与の上限)であり、また、一定確率で全額バックという試みもなく、訴求力は弱いとも言えそうだが、昨年12月当時と現在では「ペイペイ」を巡る状況が大きく異なる。当時は「ペイペイ」自体が昨年10月からの開始から間もなく利用者も少ない状況だったが、現在ではユーザー数は1500万人を突破、決済回数も累計で1・7億回となるなど世間に浸透。また、昨年12月のキャンペーンを含め、利用者拡大のために続けてきた度重なるバラマキキャンペーンの効果からすでに一定額の「ペイペイ」の残高を持つ利用者も多く、それをフックに、普段は実店舗で利用する分を「PayPayモール」へ向かわせるという点においては今回のキャンペーンの内容でも十分だと言え、また、「PayPayのキャンペーンはお得そう」という世間に刷り込んだ認識をさらに今回のキャンペーンに合わせてタレントの宮川大輔さんとゆりやんレトリィバァさんを起用して実施するテレビCMを軸とした大規模なプロモーション展開で増幅することで「PayPayモール」への集客力を高めることになることになるかもしれない。
「PayPayフリマ」と「PayPayモール」のキャンペーン開始に先駆けて10月28日に都内で開催した発表会に登壇したヤフーの小澤隆生COOは「PayPayモールという新しいモールを皆様に使って頂きたい。実店舗と異なり、レジ前での行列ができるなどの混乱がなく、買いたい時にスムーズに買って頂ける。昨年12月のPayPayのキャンペーンにように非常に盛り上がると予想している」と期待感を覗かせた。
今回のキャンペーンおよび「PayPayモール」の成功は「国内ECで流通総額1位を目指す」としながらも競合である楽天やアマゾンになかなか追いつけず万年3位のポジションに甘んじているヤフーにとっても今後の戦略上、重要な局面とも言えそう。
ヤフーは広告事業に次ぐ収益の柱としてEC事業の拡大に注力。運営する仮想モール「ヤフーショッピング」では13年に「eコマース革命」と称して出店者への出店料・販売手数料などを無料とする施策などにより、順調にEC事業の拡大を進めてきたが、近年では行き詰まりも見せていた。仮想モール事業拡大のためには流通総額の多くを稼ぎ出す顧客から支持の高い優良事業者や高い知名度や商品力を持つ大手事業者の積極的な参戦が必須となるが、「eコマース革命」以降、確かに出店者数や商品数は大きく増え、規模拡大には貢献したものの、その代償として怪しげな店舗や稼働すらしていないような店舗も含めて、膨大な店舗が出店するようになり、それら店舗との同一視や埋没を嫌った優良店が嫌気を見せ始めたり、大手事業者が出店自体を避ける事態となっていた。それゆえ、ヤフーとしては売り上げの3%という販売手数料の徴収を復活させる一方で、「ヤフーショッピング」で上位の優良店または上場企業や一定の年商規模の大企業などに出店者を制限した選別されたプレミアムな別の売り場を用意することで消費者への訴求力が高い優良・大手の事業者が出店してもらえ、かつ、やる気を持って運営に臨んでもらえるよう「PayPayモール」という「ヤフーショッピング」とは別の新しい仮想モールを新設したわけだ。
とはいえ、新モールの出店対象となる優良・大手の通販各社が動くか否かはコンセプトよりも実績だろう。プレミアムな売り場というコンセプトを説明されても、本当に出店によって自社のブランドが毀損されず、また、具体的に売り上げアップにつながるかが、出店を決めたり、出店をしてもやる気を失わずに主体的に販売してもらえるかの大きな条件となるだろう。
すでに「ヤフーショッピング」からの乗り換えを含めて「PayPayモール」へ出店を決めた各社に聞き取り調査を行ったところ、新モールに期待することについて「今後の集客力・売り上げアップ」(化粧品販売A社)、「集客に期待」(家電販売B社)、「わかりやすいUIや安心・安全のプラットフォーム運営の確立」(家電販売C社)、「モール自体にブランディングと集客の強化」(衣料品・雑貨D社)、「モール自体の認知度を最大限上げてほしい」(雑貨販売E社)などと回答し、これまでのモールにはない特別感や集客力を求めているようだ。なお、「PayPayモール」の現状の売り上げについては「概ね目標値通り」(A社)、「これまで(ヤフーショッピング出店時)と特に変化はないが、年末に向けての売り上げ増を期待している」(C社)、「増えているとは思う」(D社)という回答の一方、「モールの認知も低いことから厳しい状況」(D社)との声も出てきている。
今回の大型キャンペーンの成否、つまりプレミアム感を維持しながらどの程度、新規の利用者を増やし、短期間で流通総額を押し上げられるか。その成果の度合いで、すでに出店をしている事業者は本腰を入れ始めるはず。また、いまだ未出店の事業者も出店を決めるかもしれない。例えば、PayPayモールの目玉の出店者とされながらも、12月中旬まで出店が遅れるという先日、ヤフーが連結子会社化すると発表し、現在、TOBを進めるZOZOのファッションECサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」。「現在、出店する各ブランド1社1社に伺って、PayPayモールに出店頂けるか確認している。ブランド数が数千に及ぶために時間がかかっているが、ブランド側の反応は”好調”」(小澤COO)と説明しているが、昨年12月に「ゾゾタウン」で実施し、商品の安売りにつながり、ブランドを毀損するという懸念と反発から出店ブランドの一部がゾゾへの商品供給を停止する事態となり、今年5月で中止した常時10%割引になる有料会員サービス「ゾゾアリガトーメンバーシップ」の件を見る限り、決済サービスとはいえ、安売りにつながりかねない「ペイペイ」というインセンティブを軸に集客をかける「PayPayモール」に出店をすることにナーバスになっているブランドも一定数あるはずで、そのあたりが出店のネックとなっている可能性もあるが仮に今回のキャンペーンが成功裏に終わればブランド側が認識を改め、スムーズな出店につながるかもしれない。
いずれにせよ、今回のキャンペーンは「PayPayモール」の今後を左右することになりそうで、行方が注視されそうだ。
ゾゾの出店は12月中旬メドに、ブランド各社との交渉は“好調”
<小澤COOが語るPay Payモールの狙い>
本格始動した「PayPayモール」の狙いについて、ヤフーの小澤隆生COOに聞いた。(10月28日開催の「PayPayフリマ」「PayPayモール」キャンペーン・新CM発表会での本紙記者を含む報道陣の質疑応答から一部を抜粋・要約)
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――すでに「ヤフーショッピング」があるが、新たな仮想モール「PayPayモール」を立ち上げた理由は。
「リアルの小売りにおいて、コンビニ、ドラッグ、スーパー、百貨店、アウトレットなどと売り場が分かれているように、当社としてはネット上でも消費者がリアルで想起するような売り場を揃えていきたい。フリーマーケットもオークション会場もショッピングモールも持っているが、百貨店がなかった。多様な売り場を設けることで消費者への選択肢を増やしていくことが現状の方針だ。また、モールの出店者からすると、がちゃがちゃと何でもあるモールに出店したくないという声もあった。例えば自らのブランドを大切にしているアパレルメーカーなどからだ。そうした出店者のニーズに対しても応えていくために、PayPayモールを作った」
――今回のキャンペーンでは最大20%分を還元するとのことだが、内訳はPayPayユーザーが10%、ヤフーの有料会員が5%、ソフトバンクとワイモバイルのユーザーが5%となっている。ある種の会員囲い込みの施策だと思うが、特にどの層を狙っているのか。
「結果的にお客様がソフトバンクで契約いただいたり、有料会員になって頂ければ大変うれしいが、それはお客様に委ねたい。当社としては分かりにくくならないようCMなどでも『最大20%還元』と『最大』というところを強調させて頂いている。ただ、ペイペイで決済頂ければ誰でも10%は還元する。10%でも小さな額ではない」
―――「ペイペイ」という決済機能とECを連携させることでヤフーのEC事業はどう成長していくか。
「ペイペイはあくまで決済であり、それ単体でeコマース事業がものすごく成長するかといったらそうではない。ただ、ペイペイはお客様にとってお得なイメージがあること。また、リアルでペイペイを使って買い物をすることによってペイペイが還元される。それをオンラインでも使えることで、ぐるぐる回すことで誘導していくというマーケティング的な意味においては非常に効果的だと思っている。ECの本質である品ぞろえや価格、配送などの部分が重要だがこれにペイペイが加わることでプラスになるはずだ。ペイペイに過度な期待を抱いてはいないが、ヤフーとしては2020年代のどこかでEコマースで日本一になりたいと思っている目標感は変わっていない。PayPayモール、PayPayフリマという新しく戦力を加える中で、実現性を増していきたい」
――目玉の出店者の1つのゾゾタウンの出店がまだだ。ゾゾに商品を供給しているブランドがPayPayモール出店に難色を示しているのか。
「ゾゾは12月中旬のオープンを目指して準備を進めているところだ。ブランドさんすべてにお邪魔をして『PayPayモールに出ますか、出ませんか』という確認を取らせて頂いているところだ。何せブランドは何千とあるため、時間がかかっている。ただ、状況を聞いている限り、(ブランドからの反応は)大変、好調だ」
――社長解任や資本提携の解消などを互いに求めるなど、関係性が悪化していたアスクルの「ロハコ」が出店しているが、関係は改善したのか。
「色々とあったが私どもの解釈では大変、仲良くといったら変だが、非常に前向きな方向でやり取りさせて頂いている。PayPayモールにすでに出店頂いているということでそのあたりを解釈して頂きたい」
――ペイペイの利用はオンラインの比率はかなり少ないと思うが、どのくらいまで向上させていくのか。
「日本のeコマース化率は全体の5~8%と言われている。これが米国や英国などでは15~20%ぐらいとされている。日本も短期的にはその程度の比率になるはずで、ペイペイの利用もオフラインとオンラインで同じような比率になるのではないか」