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埼玉県 「いつでも解約」に措置命令、有利誤認で育毛剤通販のRAVIPAへ

2019年 8月29日 13:17

 「いつでも解約」など顧客に安心感を与える広告にメスが入った。埼玉県は8月20日、女性向け育毛剤を通販するRAVIPA(=ラヴィパ)に対し、景品表示法に基づく措置命令を下した。「いつでも解約」が有利誤認にあたると判断した。ここ最近、全額返金保証など顧客に安心感を与えつつ、定期購入に誘導する手法が増えている。だが、実際は解約できないなど苦情も増加。今後も同様の判断が増える可能性がある。
 


 ラヴィパは、今後の対応について「検討中」としており、本紙掲載までに詳細のコメントは得られなかった。

 国民生活センターのPIO―NETに寄せられた、ラヴィパに関する相談は1321件(8月26日時点)。埼玉県には1年間で69件(同月19日時点)の相談が寄せられていた。8割が「解約できない」「定期購入と思わなかった」など契約をめぐる相談という。

 処分の対象は、「薬用Hairmoreスカルプエッセンス」。自社ウェブサイトで「いつでも1ステップで解約できる」と、あたかも容易に解約できるかのように表示していた。実際は、解約は平日午前10時から午後5時まで。電話による申出に限られ、電話もつながりにくく、好きな時に解約できなかった。

 優良誤認も3件認定した。自社ウェブサイトで「顧客満足度91・3%」と表示。あたかも商品に対する顧客満足度が高いものであるかように表示していた。ただ、調査は、商品モニターが対象。サンプル数も少なく、「客観性が担保されていない」(埼玉県)と判断した。

 不実証広告規制の運用指針に示されている合理的根拠の判断基準では、消費者の体験談やモニターの意見を表示の裏付けとする場合、「無作為抽出法で相当数のサンプルを選定」、「作為が報じないよう考慮」、「統計的に客観性を確保」の要件を満たす必要があるとしている。ラヴィパの調査サンプル数は194人。「購入者数に対して少ない」(同)と評価した。

 また、「50代弓削さん」と氏名等が表示された女性の顔写真を表示し、あたかも商品で頭皮のケアをするだけで、実年齢より若く見えるかのように表示していた。実際は、「50代弓削さん」は、40代であり事実と異なると判断した。

 「お手入れなし・あり」という商品の使用前後の写真とともに表示した「49歳同じ年齢でもこの差」との表現も問題視。商品を使うだけで髪の量が増えるかのように表示していたが、実際、「お手入れあり」の状態になるには、髪のブローも必要だったとして、優良誤認と判断した。

 表示期間は、最長で昨年10月から今年7月。埼玉県は、ラヴィパに違反事実の消費者への周知や再発防止策を講じることを命じた。


苦情実態に即して判断、「ウソ表示」積極的に違反認定

<違反認定の背景>

 埼玉県の処分は、「いつでも解約」「顧客満足度」をめぐる表示を不当と認定した初めての事例とみられる。最近の景品表示法の執行は、表示から受ける「消費者の認識」より、「ウソ表示(事実と相違)」を積極的に認定する傾向。「いつでも」といった表示も明確な根拠を示しにくいケースが少なくない。事業者は注意が必要だ。

 「いつでも」の定義は難しい。ラヴィパの場合、平日午前10時から午後5時まで解約に応じるとしていた。

 コールセンターの稼働時間は、企業により異なる。24時間もあれば午後9時までもある。ラヴィパも営業時間内であり、電話がつながらないのは”回線が混み合っている”と好意的な解釈も可能。厳密には24時間かもしれないが、そうでないからといって「いつでも、じゃない」と、消費者が誤認するとは考えにくい。

 ただ、埼玉県に寄せられた相談は、約8割が解約に関するものだった。また、購入者の半数は働く女性。「解約したくても日中、昼休みなどしか電話できない」(埼玉県)。加えて、電話はつながらない。県の相談現場も対応に苦慮しており、積み重ねから「『いつでも』の表示は事実に相違する」(同)と、実態に即して判断した。

 過去には、消費者庁がアディーレ法律事務所に対する処分で「今だけ」と表示しつつ、キャンペーンを継続していたことから有利誤認に認定した例がある。アディーレより認定の難しさはあるが、公正取引委員会の元執行官も「体制の不備など意図的に解約を妨げていた事実の供述が得られれば認定は可能か」との見方を示す。

 「顧客満足度91%」は、実際は「商品モニター」であったことが事実と異なるとする。表示を見た消費者がどの程度、商品の効果を誤認するか、定かでないが、サンプル数は194。合理的根拠とするには相当数が必要であり、購入者数に比べ少ないと判断した。

 「葛の花事件」でも「予想を上回る注文を頂いている」と表示したCDグローバルを対象に、実態の注文件数が少ないことが優良誤認と認定された。

 ほかにも「ブローしないと髪のボリュームはでない」と、表示との不一致を厳密に判断した。「ブローの有無」のみをもって優良誤認は厳しすぎるようにも感じるが…。「大好評」や「注文殺到」、「シニア層に人気」など似たような表示は、企業も安易に使いがち。最近の法運用はこれに根拠を求めるケースが増えている。


 
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