大手アパレルのアダストリアは8月19日から、自社EC購入商品の店舗受け取りや店舗返品、店舗購入品の自宅配送などのオムニサービスを自社会員向けに開始する。顧客接点を充実させることでリアル店舗への来店頻度向上につなげる。「全ブランド、ほぼ全店で同時に始めたい」と語る豊田裕之執行役員WEB事業本部長(=
顔写真)に、同社WEB事業の取り組みやオムニ戦略などを聞いた。
――ECの役割は。
「予約販売とプロパーでしっかり売る部分と、セール期の消化というふたつの役割がある。予約とプロパーをしっかりとって、売れ筋を店舗に戻し、最後の消化をECでという役割が見えてきた。とくに、予約とプロパーの部分がECで果たせるようになってきていて、健全な成長と言えるのではないか」
――2019年2月期はECも好調だった。
「前期は全社売上高が約2000億円、EC全体で400億円強、そのうち自社で約200億円、ゾゾさんで約200億円だった。自社EC比率を高めていく必要があり、さらに予約とプロパー比率を上げて全社に貢献していきたい。お店の機能を生かすことがゾゾさんとの差別化にもなる」
――予約販売は以前から取り組んでいた。
「各ブランドのMDや責任者がECの役割を実感したというのが大きい。商品のサンプルが上がると、お店で売る前にPR系の部署に回り、モデルさんに着てもらう流れで、ECは後回しになっていたが、お客様に商品情報を伝えるという部分を最優先するマインドになってきている。それによって売れ筋やお客様の反応などを見ながら、量や配分をコントロールできるようになった」
――「ゾゾタウン」でも予約販売をしている。
「予約は自社ECを優先している。ゾゾさんの役割はどちらかというと、セールでの消化の方にシフトしている。『ゾゾタウン』自体が低価格化しているため、予約よりもセールに刺さるユーザーが結構いる」
――サイト設計は。
「従来であれば、ECで売り上げを作るために早くカゴに入れてもらい、決済してもらえるサイト設計をしていたが、そうではなく、商品詳細ページをどれくらい閲覧してくれたかとか、お気に入り登録の数などが重要だ。来店時にお客様の頭の中に商品情報があるだけで接客がスムーズになる」
――来店につながるサイト内行動が大事だ。
「その通りで、カゴだけでなく、お気に入りボタンを使ってもらいやすくしたり、8月19日に始めるオムニサービスでは、『お店で試着する』ボタンを設置する。これまでは、気になる商品をカゴに入れておき、来店時に『この商品が見たい』と言ってスマホを見せるお客様が増えている」
――カート放棄に分類されてしまう。
「データの一面だけを見て分析すると、購入率を上げるためにメルマガを何度も送ることになってしまうが、お客様はそういう意味でカゴに入れているわけではない。使い方が変わってきているので、それに合わせて分析する必要がある」
――データ活用の現状は。
「予約品などに限らず、スピード感を持ってシーズン中に次の手が打てるようになった。従来は半期が終わって分析してという感じだったが、期中にデータをもとにしたアクションを起こせるようになった。集計が早くなり、見るべきデータが分かってきた。商品に関心があるお客様がどれくらいいて、どんな属性のお客様かが分かれば翌週にとるべきアクションが分かる」
――新たに始めるオムニサービスの中身は。
「自社ECで購入した商品を店舗で受け取れたり、店舗で返品できたり、WEBからの店舗試着予約や店頭購入商品の自宅配送サービスを一気にスタートする。全サービスを全ブランド、ほぼ全店で同時に始める」
――大がかりだ。
「それでなくても覚えることの多い店頭スタッフに新たなサービスの運用をしてもらうことになる。また、お客様にとってもオムニサービスに慣れた方ばかりではなく、始まってみないと分からない部分はある。ただ、スタッフもお客様も使い方を実感したときの拡散のスピード、浸透度合いは速い。当社の規模になると、『ちょっとトライしてみるか』という気持ちで始めるわけにはいかない。全社方針として取り組むが細かい評価制度にせず、お客様に満足してもらうことが大事で、早く実数値をとらえていきたい」
――準備も大変だ。
「お客様とのインターフェイス作りやスタッフの教育、デベロッパーさんとの交渉もある。店舗あってのアダストリアで、各店にスタッフがいることがゾゾさんとの一番の違いになる。ECだと自動販売機的になってしまうが、お店ではどれだけ楽しんでもらうか、良質な接点をどれだけ作れるかが大切だ」
――店頭の反応は。
「スタッフもオムニサービスの必要性を理解しているし、どちらかと言えば、『何でこういう機能がないのか』という意見がスタッフから上がってくるくらいだった。今回のサービスはお店に来てもらって楽しんでもらうことを優先しているし、デベロッパーさんに不利益にならないメニューを選んでいる。ECのカゴの使い方もそうだが、お客様はわれわれの想像を超えた使い方をする。お店に来店してもらい、プロフェッショナルなサービスを提供していく」
――インターフェイスについては。
「オムニサービスはすべて『ドットエスティ』のスマホアプリを通じて提供する。例えば店頭受け取りは、商品購入後の届け先を実店舗にする流れになる。また、お店で購入した商品の配送先を自宅に設定する機能を店舗側に用意する。その場合、決済は店のレジで行う。店頭で色、サイズなどが欠品している場合も他の売り場に在庫があれば、店舗で会計してもらって自宅に配送する。デベロッパーさんにも配慮した設計だ。店頭受け取り商品の試着はもちろん、気に入らなかった場合のキャンセル、返品もその場でできる。お店に来店して頂き、体験してもらうことに重点を置く」
――返品商品は。
「EC購入商品を店頭で返品する場合、その商品は返品された店舗では売らず、商品センターに戻す。店頭オペレーションの負荷になることは徹底的に避けた」
――さまざまなデータが貯まりそうだ。
「お客様がどういう購買行動をとっているのかが分かるため、それに対応した手が打てる。再来訪する人数と頻度がお店とECの両方で上がる見込みで、一時的にはコンバージョンは低下するように見えるかもしれない。また、今回のメニュー以外にも今後、オムニサービスを充実させたい」
――ECの役割は。
「予約販売とプロパーでしっかり売る部分と、セール期の消化というふたつの役割がある。予約とプロパーをしっかりとって、売れ筋を店舗に戻し、最後の消化をECでという役割が見えてきた。とくに、予約とプロパーの部分がECで果たせるようになってきていて、健全な成長と言えるのではないか」
――2019年2月期はECも好調だった。
「前期は全社売上高が約2000億円、EC全体で400億円強、そのうち自社で約200億円、ゾゾさんで約200億円だった。自社EC比率を高めていく必要があり、さらに予約とプロパー比率を上げて全社に貢献していきたい。お店の機能を生かすことがゾゾさんとの差別化にもなる」
――予約販売は以前から取り組んでいた。
「各ブランドのMDや責任者がECの役割を実感したというのが大きい。商品のサンプルが上がると、お店で売る前にPR系の部署に回り、モデルさんに着てもらう流れで、ECは後回しになっていたが、お客様に商品情報を伝えるという部分を最優先するマインドになってきている。それによって売れ筋やお客様の反応などを見ながら、量や配分をコントロールできるようになった」
――「ゾゾタウン」でも予約販売をしている。
「予約は自社ECを優先している。ゾゾさんの役割はどちらかというと、セールでの消化の方にシフトしている。『ゾゾタウン』自体が低価格化しているため、予約よりもセールに刺さるユーザーが結構いる」
――サイト設計は。
「従来であれば、ECで売り上げを作るために早くカゴに入れてもらい、決済してもらえるサイト設計をしていたが、そうではなく、商品詳細ページをどれくらい閲覧してくれたかとか、お気に入り登録の数などが重要だ。来店時にお客様の頭の中に商品情報があるだけで接客がスムーズになる」
――来店につながるサイト内行動が大事だ。
「その通りで、カゴだけでなく、お気に入りボタンを使ってもらいやすくしたり、8月19日に始めるオムニサービスでは、『お店で試着する』ボタンを設置する。これまでは、気になる商品をカゴに入れておき、来店時に『この商品が見たい』と言ってスマホを見せるお客様が増えている」
――カート放棄に分類されてしまう。
「データの一面だけを見て分析すると、購入率を上げるためにメルマガを何度も送ることになってしまうが、お客様はそういう意味でカゴに入れているわけではない。使い方が変わってきているので、それに合わせて分析する必要がある」
――データ活用の現状は。
「予約品などに限らず、スピード感を持ってシーズン中に次の手が打てるようになった。従来は半期が終わって分析してという感じだったが、期中にデータをもとにしたアクションを起こせるようになった。集計が早くなり、見るべきデータが分かってきた。商品に関心があるお客様がどれくらいいて、どんな属性のお客様かが分かれば翌週にとるべきアクションが分かる」
――新たに始めるオムニサービスの中身は。
「自社ECで購入した商品を店舗で受け取れたり、店舗で返品できたり、WEBからの店舗試着予約や店頭購入商品の自宅配送サービスを一気にスタートする。全サービスを全ブランド、ほぼ全店で同時に始める」
――大がかりだ。
「それでなくても覚えることの多い店頭スタッフに新たなサービスの運用をしてもらうことになる。また、お客様にとってもオムニサービスに慣れた方ばかりではなく、始まってみないと分からない部分はある。ただ、スタッフもお客様も使い方を実感したときの拡散のスピード、浸透度合いは速い。当社の規模になると、『ちょっとトライしてみるか』という気持ちで始めるわけにはいかない。全社方針として取り組むが細かい評価制度にせず、お客様に満足してもらうことが大事で、早く実数値をとらえていきたい」
――準備も大変だ。
「お客様とのインターフェイス作りやスタッフの教育、デベロッパーさんとの交渉もある。店舗あってのアダストリアで、各店にスタッフがいることがゾゾさんとの一番の違いになる。ECだと自動販売機的になってしまうが、お店ではどれだけ楽しんでもらうか、良質な接点をどれだけ作れるかが大切だ」
――店頭の反応は。
「スタッフもオムニサービスの必要性を理解しているし、どちらかと言えば、『何でこういう機能がないのか』という意見がスタッフから上がってくるくらいだった。今回のサービスはお店に来てもらって楽しんでもらうことを優先しているし、デベロッパーさんに不利益にならないメニューを選んでいる。ECのカゴの使い方もそうだが、お客様はわれわれの想像を超えた使い方をする。お店に来店してもらい、プロフェッショナルなサービスを提供していく」
――インターフェイスについては。
「オムニサービスはすべて『ドットエスティ』のスマホアプリを通じて提供する。例えば店頭受け取りは、商品購入後の届け先を実店舗にする流れになる。また、お店で購入した商品の配送先を自宅に設定する機能を店舗側に用意する。その場合、決済は店のレジで行う。店頭で色、サイズなどが欠品している場合も他の売り場に在庫があれば、店舗で会計してもらって自宅に配送する。デベロッパーさんにも配慮した設計だ。店頭受け取り商品の試着はもちろん、気に入らなかった場合のキャンセル、返品もその場でできる。お店に来店して頂き、体験してもらうことに重点を置く」
――返品商品は。
「EC購入商品を店頭で返品する場合、その商品は返品された店舗では売らず、商品センターに戻す。店頭オペレーションの負荷になることは徹底的に避けた」
――さまざまなデータが貯まりそうだ。
「お客様がどういう購買行動をとっているのかが分かるため、それに対応した手が打てる。再来訪する人数と頻度がお店とECの両方で上がる見込みで、一時的にはコンバージョンは低下するように見えるかもしれない。また、今回のメニュー以外にも今後、オムニサービスを充実させたい」