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「歩行能力の改善」問題収束へ、厚労省が薬機法規制で見解

2019年 2月21日 16:45

 機能性表示食品の「歩行能力の改善」問題が収束に向かうことになりそうだ。2月13日、日本通信販売協会の「サプリ塾」で、厚生労働省の担当官は、届出表示の一部を切り出し強調することで誤認が生じる可能性を解説。処方薬の効能との重複など複数の要因が重なったことで、今回の指摘につながったことを説明した。機能性表示食品制度は、その創設以降、景品表示法、薬機法による規制など度重なる難局に直面している。ただ、これら課題の打開を通じ、業界が求められているものは、「いわゆる健康食品の常識」からの脱却だ。”淘汰の時代”を迎える業界はいかに変わるべきなのか。
 
薬機法違反指摘11商品が撤回へ

 「薬機法違反の疑いがある」。昨年11月、厚労省は消費者庁に対し、機能性表示食品で医薬品的効果を標ぼうしたものがあると指摘した。問題となったのは、機能性関与成分として「ロイシン40%配合必須アミノ酸」「HMB」を配合したもの。消費者庁が販売者に対応を要請したことで、以降、撤回が相次いだ。2月20日現在、届出の撤回は11商品に上る。ただ、厚労省が指摘する薬機法違反が何を指すものか、真意が掴み難かったことから業界には不安が広がった。

 さまざまな意見も錯綜した。当初、有力視されたのは、処方薬に「歩行能力の改善」をうたうものがあったこと。効果がダイレクトに重なり、医薬品の該当性を判断されたとみられていた。

 「改善」の表現を問題視したとの見方もあった。ただ、指摘から外れた届出にも「歩行能力の維持」をうたうものもあり、「『維持』がよくて『改善』がダメな理由が不明」と、困惑する事業者もいた。

 「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(46通知)の規制から外れると認識されてきた機能性表示食品で薬機法違反が指摘されたことにも動揺が広がった。ほかの機能性表示食品に累が及ぶ懸念が高まったためだ。
 2月に行われたサプリ塾のパネルディスカッションではこの問題を討議。「46通知の規制の外にいる認識だった。届出内容をおそらく消費者庁が確認しているという安心感もあった」。ファンケルの寺本祐之氏は、当時の感想を率直に語った。

「一部強調」の危うさ指摘

 業界関係者を前に、厚労省は、「サプリ塾」でそのいずれの見方も否定した。「改善」といった表現、医薬品効果との一致にも「『ガンが治る』など明示的なものを除き、(特定の)表現を取り上げて使用不可とする言葉狩りのような規制はしない」(小川雄大監視指導・麻薬対策課危害情報管理専門官)と説明。一方、「届出表示で例えば『運動との併用で』などとされていても(前後の文脈なく)広告で一部を強調されると飲むだけで歩行能力が改善するかのような誤認が生じる恐れがある」(同)とした。

 厚労省が問題視したのは、「歩行能力の改善」をうたうある企業の「広告」だったとされる。企業は、届出表示においては、機能性表示食品に許された「健康の維持・増進」の範囲の表現にとどめるよう腐心する。撤回に至った表現(=表)をみても、届出表示は表示可能な範疇に収められている。一方、広告では一部を切り出した表現になりがちだ。加えて今回の場合、同じ効能をうたう医薬品が存在した。このことが厚労省による薬機法違反の指摘につながったとみられる。「医薬品効果なら何でもダメというわけではない。ただ、少なくとも医薬品効果は誤解を生む蓋然性が高まるので避けるのが安全。明確な線引きは難しいが総合的判断を考えてほしい」(同)と話した。

 厚労省は今後もこの問題で見解を示すことは「ない」(同)としており、これを踏まえた広告のあり方、撤回の判断も企業の自主的な判断になる。

 
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