高島屋のクロスメディア事業部は、今上期(3~8月期)の売上高が前年同期比14・0%増の76億800万円と大幅に伸長した。カタログ事業は2年前に紙媒体の季刊誌化などの構造改革を行って売り上げを落としていたが、底を打って回復。上期は8%強伸びた。EC売上高も約24%増と好調を維持した。当該期は運賃値上げの影響があったものの利益面も踏ん張り、収支改善が順調に進んでいるようだ。
カタログは、アクティブ顧客数が計画の26万人を上回った。とくに、受注単価が一般顧客と比べて約1・4倍という有料会員制度「ハイランドクラブ会員」に対し、従来は顧客負担だった返品送料を同社負担に、通常送料も1万円以上で無料にするなど特典を見直したことで減少に歯止めをかけ、上期は3000人程度増えたという。
当該期は、初めて全国紙の新聞広告(全5段)でハイランドクラブの紹介をし、広告紙面にはがきサイズの申込書も付けた。同社では、新聞広告で開拓した新規客の稼働率は40%程度と高いこともあり、8月に2回実施。下期も実施する計画だ。一方、ハイランドクラブ会員に対するLTV向上策については「まだ不十分」(郡一哉クロスメディア事業部長)とし、同会員を分析して品ぞろえの改善につなげる。
上期における高島屋全体のEC売上高は約81億円となり、通期では当初計画(157億円)を上回る183億円程度での着地を見込むなど好調だ。そのうち「高島屋オンラインストア」は上期実績が前年同期比34%増の54億円、通期で130億円超(前期は109億円)を見込んでいる。
当該期のECチャネルは中元商戦が約30億円まで拡大し、前期の歳暮商戦(29億円)を超えた。中元、歳暮、おせちは消費者の買い方が変化。百貨店店頭からの流入や、新規のネットユーザーを獲得しているという。また、母の日商戦は前年同期比33%増の4億5000万円、父の日は同30%強伸びて3億2000万円だった。
苦戦していた内祝いギフトについても、カタログギフト「ローズセレクション」で内祝い用の品ぞろえを強化。カタログギフトは送料無料で送れることもあって好調に転じている。
決済面では、NTTドコモの「d払い」が決済手段として定着している。既存顧客よりも若い層の開拓につながっているようで、「d払い」がEC売上高の4・6%を占め、友の会決済(3%弱)のシェアを抜いた。
マーケティングのデジタル化では、MA(マーケティングオートメーション)ツールでシナリオの知見を貯め、メルマガと連携してリピート率の向上につなげているほか、レコメンドシステムを導入。サイト訪問者の行動履歴に合わせてコンテンツの出し分けなどを行っている。
コスト削減面では、マスターデータ管理の省力化に注力。RPA(ロボティクスプロセスオートメーション)をテスト導入して効果が出ており、カタログ事業にも導入していく方針だ。
中価格帯を強化
下期については、中価格帯の婦人衣料強化の一環として新企画「スタイル・プリュ」のチラシをカタログと同送し、反響がいいようだ。当該企画の取り扱い商品はPBではなく、協力会社からの仕入れ商材で、まだ十数型と品ぞろえは少ないものの、アクティブミセス向けに軽量ダウンコートやロングカーディガン、テーパードパンツなどを提案。基幹カタログの巻頭商材より値頃で、ついで買いも期待できる中価格帯衣料のニーズが確認できたという。
今後、百貨店友の会向けの会報誌「ハミングタイム」でも「スタイル・プリュ」を展開していく考え。また、クロスメディア事業部では現状、取引先との買い取り契約は行っていないが、この2年間でカタログの収益が改善し、在庫水準も低くなったことから、今後は買い取りを再開して「スタイル・プリュ」を強化することも視野にある。
買い取りは利益率が高く、バイヤーの育成にもつながるほか、「顧客の声を反映した商品作りにさらに踏み込める」(郡事業部長)とする。
高島屋は、リアルの売り場では神戸と酒々井(千葉県)にアウトレット店を開設し、百貨店店頭で展開するPBの在庫を買いやすい価格で提供しており、通販のPBについても最後の受け皿になり得ることから、買い取りの再開も検討する。
また、ハイライドクラブ会員に対しては、返品送料無料の特典を付けたことから、購入ハードルの高い靴などの品ぞろえ強化とサービス告知を連動して行い、LTVの向上につなげる。
ECでは、グループの衣料品通販サイト「タカシマヤファッションスクエア」と「高島屋オンラインストア」のIDを共通化したのを機に、キャンペーンを実施して相互利用を促すほか、品ぞろえの面では百貨店ブランドの拡充を図る。