家電のネット販売を手掛けるMOAとMOASTORE、MOA酒販は今年3月、投資ファンドであるサンライズ・キャピタルの完全子会社となった。今後は株式上場が目標となる。2018年6月期の売上高は前期比35・4%増の423億8700万円となり、前期も2桁増収を果たしたMOAだが、近年は家電量販店もネット販売に注力するなど競争は激しさを増している。8月に代表取締役に就任した佐伯澄氏に戦略を聞いた。
――家電のネット販売専業が数ある中で、サンライズ・キャピタルがMOAを選んだ理由をファンドからはどう聞いているか。
「経済産業省のデータによれば、家電のネット販売市場は全体の約30%を占め、毎年10%弱成長していることから、その比率が今後も伸びることは確実だ。当社は家電ネット販売市場の伸びを上回るペースで売り上げが増えており、ファンドも投資先として魅力的と判断したようだ」
――競合となる家電のネット専業の中には伸び悩む会社もあるが、MOAは最近も業績が好調だ。自社の強みをどう分析するか。
「当社の場合、商品を安く売るだけではなく卸販売も行っており、『仕入れる力』という点では最も強いと思う。優秀なバイヤーがいて、これまで培ってきたネットワークもある。他社よりも売れ筋商品が多く集められる環境だからこそ、短期間でこれだけの成長を遂げたのではないか。ネット専業の場合、『仕入れ力は弱いがネット関連の技術は強い』という会社もあるが、当社は仕入れという現場力に優れているのが特徴だと思う。また、プライベートブランド(PB)シリーズ『マクスゼン』も好調だ。PBなので仕入れ販売と比較すると粗利が多いため、収益性も高い」
――マクスゼンは自社販売だけではなく、他社への卸販売も行っている。
「10月にはQVCジャパンへの卸もスタートする。1回目なので実験的な取り組みとなるが、圧力鍋を扱う。今後はメーカーとして本格的に卸を展開する予定で、テレビ通販も新たな販売チャネルとして期待している。今期のPB売上高は30億円が目標だ」
――低価格家電製品のカテゴリーも競合が多い。どう差別化するか。
「低価格で機能を絞った『ジェネリック家電』の分野では、5年前に液晶テレビで参入した当社は先発組に入るので、消費者にブランドが浸透し、信頼性も生まれてきているのではないか。単身世帯がターゲットだが、最近は女性を対象にした調理家電のラインアップを増やすなど、幅を広げている」
――競合の中には家電量販店と提携した会社もあるが、MOAはそういった道は選ばなかった。
「当社の場合、基本的に全方位外交で、大手家電量販店とは仕入れと卸の両方で取り引きをしている。なので、どこかと提携するというのはマイナスになる」
――仕入れに関して、メーカーとの取り引きはどの程度なのか。
「現在は主要な家電メーカーとは取り引きがあり、取引額のうち約70%がメーカーとの直接取り引きだ。売上規模が大きくなってきたので、メーカーとの取り引きに必要な口座を開けるようになってきている」
――規模が拡大しているといっても、大手家電量販店に比べると売上高は10分の1以下であり、仕入れ単価にはかなり差があるのでは。
「それはこれからの課題。やっと口座が開けたので、今は実績を積み重ねていくステージだ」
――これまではメーカー以外からの仕入れが多かったがために安売りできていた部分が大きいと思うが、メーカーとの直接取り引きが増えると仕入れ価格が上がり、価格面で不利になるのでは。
「そういう部分もないとは言わないが、例えば販売計画を達成できなかった商品を良い条件で引き取るなど、助け合いをすることで少しずつメーカーとの関係を強化することができるはずだ。地道な努力で利益率を上げられるようにしていきたい。今の当社は大手家電量販店がかつてたどってきた道と同じ過程にあると思っている」(つづく)