トランスコスモス子会社のcaramo(カラモ)が運営する通販サイト「藤巻百貨店」が好調だ。2012年5月に元伊勢丹バイヤーの故藤巻幸大氏がプロデュースする通販サイトとして開設してから6年が経過。バッグや小物、衣料品、生活雑貨などこだわりの商品を取りそろえ、直近の業績は30%増で推移。ネット販売に加えて実店舗による顧客接点の創出も行う。カラモの中村社長(=写真)に実店舗展開やMD戦略などについて聞いた。
――実店舗は16年に銀座、17年に吉祥寺、今年4月に名古屋に出店している。店舗展開の狙いは。
「『藤巻百貨店』はECをベースとしたサービスだが、お客様の増加とともに当社の商品をじかに見たいというニーズが増え、銀座、吉祥寺、名古屋に出店した。どこもお客様が多いエリアで、大きく売り上げるというよりも顧客価値を高める一環。ECはフェイスブックなどを通じて顧客の感性を刺激し、店舗は手にとって実体験してもらい体験価値を高めるのが狙い」
――ECと店舗で顧客層に違いは。
「当社の顧客層は40代、50代がメインで、男性6割、女性4割。感覚的には若い層のほうが店舗に来店されることが多いのではないか」
――客単価はECと店頭で異なるのか。
「店舗の場合、下は1000円程度の商品など買いやすいものを多くそろえており、客単価は低くなる。ECは送料がかかるためまとめて買われることも多い」
――店頭でのMDは。
「全体で約1400アイテムがあるが、銀座店では約400アイテムを扱っている。基本的に店頭ではECで人気がある商品をそろえる。ただ、売り切れになるものもあり、店頭に置ける数は限られる」
――EC専業よりも、店舗も運営するほうが有利とみているか。
「そうだと思う。ネットのほうは地域や時間を関係なく情報を取得し、こちらからも発信できる。リアルでは記憶の残り方が異なる。地に足がついたマーケティングは店頭のほうが向いている」
――店舗での販売方法や人材の配置などノウハウの蓄積は。
「まだまだだが、お客様が期待することは『藤巻百貨店』のECサイトの世界観をそのまま望まれることが多く、それはかなりハイレベル。もちろんそこを目指しているが、できているところとできていないところがある。今は過度に高級感を演出せず、できるだけ商品に触れてもらうよう心がけており、お客様との距離感を縮めるような商品の配置を目指している」
――今後の拡大に向けた課題や展望は。
「今はメイド・イン・ジャパンを売りにしているが、商品やサービスという観点から言うと、20年のオリンピックの特需以降も長く続くサービスをどう作るかが課題だ。そのためにはモノというよりもライフスタイルへの変化に対応することが重要。日本のアイテムを変化に対応させていく。例えば黒くて重い南部鉄器も、今ではお洒落なカラー急須に変わったりもする。そうすると南部鉄器が家の中で急に主役になる。そこで南部鉄器の良さを改めて知ったり、職人さんの物語を知り、家の中で価値の高いものとして長く使ってもらうことにつながる。子供に聞かれても両親がその品物について説明する。そういう風になっていかないと」
――単に「日本の逸品」というところで終わらないと。
「結局、そうすると20年のオリンピックまでで終わってしまう。広がりも小さい。モノだけであればもういらない。他にも店はある。では、なぜ『藤巻百貨店』で買うのか。当社の理念としてはサービスや商品を使って日々の暮らしにちょっとした豊かさを演出できないかと考えている。そのために感性を刺激するような商品やサービスが必要。その中でお客様をワクワクさせ続け、顧客満足度を高めていきたい」