スタートトゥデイは、長期ビジョンとして10年後にプライベートブランド(PB)「ゾゾ」を展開するオンラインSPAで世界ナンバーワン、グローバルアパレル企業のトップ10入り、10年以内に時価総額5兆円を掲げ、同ビジョンを実現するための基礎となる中期経営計画を策定した。
同社初の中計は3カ年で、前期(2018年3月期)の商品取扱高2705億円、売上高984億円、営業利益327億円に対し、最終年度の21年3月期には商品取扱高7150億円、売上高3930億円、営業利益900億円を目標とする(図表を参照)。
3カ年では、服の買い方、選び方、作り方の側面から"革命"を推進。買い方革命では、「ゾゾタウン」は6400ブランドの商品を同時に検索、購入でき、最短翌日に届くサイトとして「革命を達成できつつある」(前澤友作社長)としながらも、今後はサービス面やブランドのラインアップ、UI、物流品質などをさらにブラッシュアップして安定成長につなげる。
選び方革命では、自分に合った服が試着なしで、悩むことなく自動で届くという新しい購買体験を広める考えで、AIによる最適な商品選定と、ゾゾスタッフによるコーディネートを組み合わせた「おまかせ定期便」のほか、採寸用スーツ「ゾゾスーツ」で計測した体型データを基に自分に合ったサイズの服だけを絞り込める「自分サイズ検索」も始めたところだ。
作り方革命では、自分の体型に合った服が注文するとすぐにオンデマンドで製造され、数日後に届くという新しい流通のあり方を拡大していく。
3つの革命と並行して、子会社のアラタナが担う、アパレルブランドの自社EC支援を行うBtoB事業を再強化する。具体的には、グループが持つビッグデータの一部をブランドに開放して販促機能を強化するほか、最大2カ月後の支払いが可能となる決済サービス「ツケ払い」も支援ブランドの自社ECで利用できるようにすることなどで、BtoB事業は初年度100億円、2年目200億円、3年後に300億円を計画する。
また、「ゾゾタウン」やファッションコーディネートサイト「ウェア」内に広告スペースを設けて販売するインターネット広告事業をスタートし、初年度30億円、2年目50億円、3年後100億円を計画し、利益面への貢献を期待する。
さらに、今年1月末に発足した「スタートトゥデイ研究所」の活用を積極化。機械学習によるデザインの自動化や、素材研究、新生産ラインなど服作り全般の研究を行うほか、「似合う」など数値化しづらい服の推薦アルゴリズムを研究するのに加え、ゾゾスーツの進化に寄与する人体計測の技術研究を引き続き行う。
採寸スーツ刷新
スタートトゥデイでは、「70億人のファッションの共通課題はサイズ問題」(前澤社長)とし、世界展開が前提の中長期ビジョンの達成にはPBの成功が不可欠だ。
同社はPB展開に合わせて昨年11月にゾゾスーツを発表。予約数は100万件を突破したものの、大量生産できる体制が整わず、発送が大幅に遅れていた。ただ、中計と同時に仕様変更した新型のゾゾスーツを発表。生産面の課題を解消したことで、「ゾゾタウン」の商品購入者への同梱や街頭配布、企業とのコラボ企画を通じた提供などにも着手し、今期中に海外含め600万~1000万着を無料配布する。
新型スーツは従来の伸縮センサー方式を改め、全身に300~400個付いたドットマーカーをスマホのカメラで360度撮影することで精度の高い計測ができる読み取り方式とした。利用者にとっては従来スーツのブルーツースの接続不良や電池切れの心配がなく、洗濯もできる。また、同社にとっても新型スーツは生産コストを大幅削減でき、1着約1000円で作れるという。
PB商品は現状、デニムパンツとTシャツの2種類だが、6月にはカジュアルシャツとストレートデニムパンツ、スキニーデニムパンツを投入。その後もビジネスシャツやスーツなどを商品化し、今期中に展開数を10~20型に増やす計画だ。また、PB商品は7月初旬から海外72カ国で販売をスタートする。
同社によると、旧型スーツを手にしたユーザーの6割が実際に採寸を行い、そのうちの約半数がPBを購入。平均購入点数は2・5点(7500円)だったようで、今期のスーツ配布計画に旧スーツ注文者のPB注文率や客単価を当てはめると135億円~225億円規模になる。
今後、展開商品の拡充や海外販売も始まることを考慮し、PBの売り上げ目標は初年度200億円(海外比率10%)、2年目に800億円(同25%)、3年目で2000億円(同40%)を掲げる。なお、10年後のPB海外比率は80%を目指す。