消費者庁による2017年度の景品表示法に基づく措置命令件数が48社の50件に上った。消費者庁創設以来、過去最高の執行件数。前年度の27件から大幅に増加した。課徴金納付命令は17件だった。
事件数(一斉処分も1件とカウント)は29件。このうち、通販関連は9件だった。「優良誤認」は9件、「有利誤認」は17件。このほか、特定の業種や事項6種を規制する景表法第7条第3号の「商品の原産国に関する不当表示」「おとり広告」が3件だった(1社に対する「優良・有利誤認」の認定など重複を含む)。
地方自治体も措置命令件数を伸ばした。
自治体への措置権限の移譲は14年末。15年度は3件、16年度は1件だったが今年度は8件(3月27日時点)に上った。調査ノウハウの習熟とともに増えており、措置命令件数も増える可能性がある。
消費者庁が執行件数を伸ばしたのは13年度。空間除菌グッズを販売する17社に一斉処分が行われたことから処分件数は年間で45件に上った。17年度はこれを上回る規模。背景に昨年10月に行われた「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品を販売する16社に対する一斉処分がある。
一斉処分は、「内臓脂肪を減らすのを助ける」との表示で届出を行っていた「葛の花」を含む機能性表示食品に対するもの。摂取するだけであたかも容易に痩身効果が得られるかのように表示していたとして「優良誤認」を認定された。15年の機能性表示食品制度の導入以降、機能性表示食品に対する処分が下されたのは初めてだった。
通販関連ではほかに昨年12月、不当な二重価格を行っていたとしてアマゾンジャパンに景表法に基づく「有利誤認」が認定された。実態の伴わない「参考価格」を表示、割引率を不当に吊り上げていたと指摘された。
今年3月には、テレビ通販大手のジュピターショップチャンネル(JSC)に対する景表法に基づく「有利誤認」も認定された。テレビ通販番組で販売したテレビや、冷凍カニについて番組で紹介する当日から一定期間、「特別価格」で表示していた価格が不当な二重価格と判断された。二重価格表示の問題は、過去の販売実績と比較されるケースが大半だが、JSCに対する処分では、"将来の価格"(特別価格によるセール終了後)に「通常価格」で販売する期間が短く、不当と判断された。
事件調査の剛腕起用
"イケメン上席"はアマゾンから「一本」
【執行件数増加の背景は?】
消費者庁による景品表示法の執行件数は過去最高の50件に上った。「葛の花」の一斉処分も背景もあるが、件数増加の背景には執行体制の強化に向けた人事施策の面からも窺える。公正取引委員会で主に事件畑で鳴らしてきた大元慎二氏(写真㊤)の表示対策課課長の起用だ。一方で、もう一人気になるのが、ある"イケメン職員"の存在だ。
その職員がおおやけの場に登場したのは、アマゾンの参考価格「サバ読み」事件の会見が最初とみられる。職員の名は、笠原慎吾氏(写真㊦)。表示対策課で上席景品・表示審査官を務める。「会見のニュースを見て、細眉の端正な顔立ちが気になり内容が頭に入ってこなかった」(業界関係者)。当時、そのイケメンぶりが気になった業界関係者も少なくない。
そもそも「上席」とはどういう役職か。行政機構の上では、課長より下に位置するものの課長補佐よりは上。室長と並ぶ「初級管理職」の位置づけだ。
公取の場合、独占禁止法の執行を担う審査局は第一審査から第五審査に分かれる。各審査に「審査長(課長級)」と「上席」を配置。それぞれ調査ユニットを持ち、事件規模によって構成人数の変動はあるものの各ユニットが調査にあたる。
消費者庁は「上席」の役職自体、創設間もなく設置されたというが、課長との役割分担はその都度変わる。会見で目にするようになったのはここ最近。報道発表は、事件を担当した班のトップが行うのが通例であり、「上席」が一つのユニットを持ち、事件調査にあたるようになったとすれば、当然、執行件数も増えるだろう。
大元課長は、公取時代、景品表示監視室長を務め、独占禁止法の「カルテル」事件などを調査する審査局犯則審査部の第二特別審査長も経験している。「景表法の事件調査には絶対の自信を持っている」(公取関係者)というのがその人物評。「葛の花」の機能性表示食品初処分に踏み切り、これに絡み、「食品で痩せるはあり得ない」と断言した自信もそのあたりからくるのだろう。
一方の笠原氏は、公取では数少ない国際畑出身ともいえる。その洗練されたイメージそのままに、ワシントンのアメリカ大使館にアタッシェとして赴任。米司法省やFTC(米国公正取引委員会)との連携、情報収集などを担当してきた。外資系のアマゾンの違法認定もその経験が活きたかもしれない。