RIZAPグループ子会社の健康コーポレーションでは昨年10月、元オルビス社長の髙谷成夫氏が社長に就任した。豆乳クッキーダイエットや美顔器の通販で一世を風靡(ふうび)した同社だが、近年はプライベートジム「ライザップ」が急成長。M&Aを積極的に行っていることもあり、グループに占める同社の売り上げ比率は低下している。経験豊富な髙谷社長は、グループの祖業でもある同社をどう再成長させるのか。方策を聞いた。
――RIZAPグループに参画したきっかけは。
「瀬戸健社長から『RIZAPグループで力を発揮してほしい』という誘いがあった。アグレッシブに挑戦したいという想いから入社を決めた」
――プライベートジム事業などを手掛ける子会社のRIZAPでは取締役を務めている。
「まず、RIZAPでは1月1日付で組織の再編成を実施した。5つの本部体制とし、私はプロダクト事業本部とマーケティング事業本部を統括している。プロダクトに関しては、これまでボディメイクのスタジオ事業として『ライザップ』が立ち上がり、成長してきたわけだが、プラスアルファーとしてプロダクトに関連する事業を第2の柱とするための事業本部だ」
――具体的には。
「ボディメイクに関していえば、低糖質の食事に加え、減量期・維持期を通してたんぱく質やビタミンなど必要なものはたくさんある。これをフードやサプリメントとして提供していく。これまでもやってきたことではあるが、CRMを強化し、減量期はもとより、その後の長い継続的な顧客との関係性を構築し、その中でプロダクト事業をスタジオ事業とほぼ同等の売り上げまで引き上げていく」
――販路は。
「対象としてはスタジオでトレーニングをする『ゲスト』とスタジオに来たことがない『非ゲスト』の2種類がある。ゲスト向けについては、減量やボディメイクだけでなく、健康をサポートする食品群を拡充する。販売チャネルとしてはスタジオやネット販売、さらには法人に向けた営業や直営店も視野に入れる。非ゲストは直営店やネット販売に加えて、コンビニエンスストアやGMSにもライザップブランドとして投入する」
「ボディメイクは健康に直結するので、健康領域への広がりと、さらには痩せることに付随してビューティー領域への広がりを考えている。そこへの商品の提供が成長戦略を考える上で重要になってくる。ゲスト向けについては、スタジオに来ているゲストのパーソナルデータやビッグデータも活かし、よりパーソナライズしたものにしていきたい。一方、非ゲスト向けに関しては、幅広い消費者に触れてもらうために、コンビニで手に取ってもらえる商品群の開発を強化していく」
――ビューティー領域とは、具体的にどんな商品なのか。
「従来のような化粧品だけではなく、ライザップのプログラムやパーソナルデータを組み合わせたものも考えている」
――マーケティングに関しては。
「ライザップではテレビCMの『ビフォアー・アフター』が成功モデルとなったわけだが、それをいかに進化させるかを考えている。また、テレビCMだけではなく、ソーシャルメディアも含めて、広い意味でのメディアマーケティングをどう組み立てるかも課題となる。ボディメイクからスタートしたライザップは領域を広げているわけだが、ブランド価値をさらに上げていく必要がある」
「近年、ライザップのCMに起用するタレントの選定は、健康維持に悩みが出て来る年齢層を中心にしてきた。ただ、ブランドとしての先進性を維持し続けるためには若い層は無視できない。今後もボディメイクから健康までをカバーしていくが、ペイドメディアだけでなく、ソーシャルメディアでのマーケティングも強化したい」
――社長を務める健康コーポレーションの戦略は。
「現在リブランディングを進めている。コーポレートのブランドを作り直すほか、前提となる商品群についても、商品の刷新とマーケティングの変革も含めてリブランディングする。コーポレートブランドについては、新たに『健康を、日本を代表する価値にする』という企業理念を定めた。さらに、"KENKO MARK"という新しいブランドとそれにあわせたブランドロゴを作り、消費者に浸透させていく。商品については豆乳クッキーダイエットや美顔器、洗顔石けんなど、一つの時代を作ってきた自負はあるが、現状は競合と比較しさらなる強化が必要な状況なのは否めない」
――問題点はどこにあるのか。
「商品力の課題は大きいだろう。これまで健康コーポレーションは『クッキーをダイエット商材にする』『高価な美顔器を安価に提供し、洗顔ジェルの継続性を高めることで収益化する』など、常識から少し外れた、驚きを与える商品を作っていたし、それが成功の要因でもあった。しかし、それが洗顔石けん『どろあわわ』以降は作れていない。改めて、健康コーポレーションとして、どうすれば驚きやわくわくするような商品やサービスに提供できるかを考えていく」
――定期購入が柱だ。
「ここ数年、定期購入顧客向けの施策よりも新規顧客の獲得を重視した割引のキャンペーンに注力してしまったという反省点がある。やはり、優良顧客をいかに作るかという、お客様を起点とするマーケティングの姿に立ち返るのがリブランディングの大きなテーマになる」
――割引施策をやめるということか。
「継続して買ってくれている顧客に対し、どのようなメリットを与えられるかということだ。商品の作り方から情報の出し方、販売の仕方まで、何を軸に組み立て直すか。ダイレクトマーケティング的な、ストーリーのある商品を作り、継続性を高められるような仕組みを取り入れて価値づけしていく。定期購入者へのメリットを重視した施策とするため、これまでのやり方をゼロベースで見直していく」
――広告のクリエイティブに関しては。
「これからのメディアや情報の流通のあり方にあわせて、ストーリーとして価値を伝えられるクリエイティブを作れるかどうかが勝負だ。語れる商品を作りあげることが前提だが、『語り口』はメディアのあり方で変わってくる」
――RIZAPグループ子会社である点は押し出さないのか。
「ライザップブランドと分けて展開しているのは、ターゲットや提供すべき価値が異なるからであり、そこは分けて考えたい。ただ、親和性の高い提供の仕方は、グループのシナジーも含めてありうるので検討したい」
――人材育成は。
「既存社員とのコミュニケーションを密に取るほか、経験者採用を強化している。当社は急成長中だからこそ、さまざまなことへ挑戦できる。マーケティングやプロダクト経験者は特に、これまでのスキルをすぐに活かすことができるポジションが多数ある。自分でやるべき仕事を探し実行していきたい方には、最高の環境でしょう」