千趣会は1月16日、妊娠期から産後までの女性に向けた新カタログ「ベルメゾン プレママ」を発刊した。産院に通う"プレママ"が持ち帰れるよう、従来のマタニティカタログから商品数、ページ数を大幅に絞る一方、ベンチャー企業のコネヒトが運営するママ向けQ&Aアプリ「ママリ」とコラボし、リアルなお役立ち情報を盛り込んだ雑誌感覚の媒体として展開する。
千趣会にとってマタニティは新客獲得の重要な分野で、その後のベビー、キッズ商品の購入へと続く最初の顧客接点と位置付けている。加えて、マタニティ分野はネット受注率が82%と千趣会の中でも高いジャンルのため、ウェブ送客機能という役割も担う。
同社はマタニティ専用カタログで約20年の実績を持つが、人気アプリ「ママリ」と組むことで、売り手としての一方的な情報発信にとどまらない中立的な視点を加えるとともに、既存会員のボリュームゾーンよりも若い20~30代前半の"新米プレママ"を開拓する。一方の「ママリ」側もリアルの場(産院)で配布する紙媒体に新たな価値を感じてのコラボとなったようだ。
これまで、カタログ制作に当たっては商品の魅力を伝えるために機能面などの説明に力を注ぎ、モノ視点で誌面を制作しがちだったが、今回は新米プレママに必要な情報を追求した。
昨今、市場にはマタニティ用ではない商品が増えていることもあり、「いまの若いプレママはマタニティ専用の商品を買うか買わないかで迷っている」(青木綾子ファッション販売2部インナー・マタニティ販売チーム=写真)とし、同社では例えば腰が痛くならないマタニティの専門商材や、この先、産院の先生に薦められるアイテムなどをしっかり伝えることで、購入を迷っているプレママを後押しする。
大枠のカタログ設計は千趣会が行うが、「ママリ」内で話題のワードを誌面に反映させるほか、「ママリ」ユーザー同士のQ&Aから抽出した先輩ママの経験談なども掲載。具体的には、ママ目線で見た抱き枕やパジャマの選び方などを紹介している。また、「ママリ」ユーザーの座談会を巻頭で特集し、「これさえ買っておけば」という生の声を発信している。
MD面ではカタログ掲載商品数を従来の35%に当たる100アイテム弱とし、新米プレママの不安解消を手助けする定番アイテムなどを厳選。取り扱う商品カテゴリーは従来通りだが、デザイン性を重視した商品などを含めて各カテゴリーで品ぞろえを絞った。
一方の通販サイトでは、デザイン幅を広げたアイテムに加え、カタログではフォローし切れないトレンド感や季節感の強い商材、消耗品や実用品なども掲載。また、自社開発商品だけではなく、メーカーからの仕入れアイテムは前年よりも型数を増やしているという。
商品コピーについては、例えばカップ付きキャミソールを紹介する際、「つわりの時期もラクちん!」といったように、機能よりも新米プレママが"自分ごと"としてイメージしやすいコピーを心がけたという。
カタログの表紙には初めて本当の妊婦を起用し、読者が親近感を抱きやすい工夫もした。
また、最近では全身マタニティアイテムを着用するプレママが少ないことを考慮し、インスタグラムで人気のイラストレーター、あわのさえこさんが千趣会で人気の授乳対応ワンピース3アイテムを対象に、それぞれ産前・産後のコーディネートをイラストで提案するページを設けた。その際、ワンピース以外は千趣会の商品を意識せずにワンピースが素敵に見えるスタイリングを自由に描いてもらったという。
さらに、"妊婦のあるある川柳"ページを設置。紙媒体では制作チームが考えた川柳を掲載しているが、ウェブでは専用ページを設け、ツイッターで川柳を募集するなど、商品を売るための企画以外にも取り組むことで、さまざまなきっかけでベルメゾンを知ってもらう機会を作っている。
プレママ向けカタログは産院での配布がメインだが、今後は新しいアプローチを模索する。最近では、子どもが1歳になるまで送料無料になる"妊婦さん・ママ応援プログラム"を千趣会の公式LINEアカウントを通じてテスト。同社では出産情報や子どもの年齢は任意で登録してもらっているが、送料無料特典をフックにより詳細な顧客セグメントを把握することで、次の打ち手にもつなげたい意向だ。