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セレクトスクエアの木村社長に聞く 高島屋との一体化戦略とは?㊤ サイト刷新しデメリット解消、ポイント付与率や屋号問題などMD共通化も加速へ

2017年12月 7日 11:29

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 セレクトスクエアは、2012年に高島屋と資本業務提携を結んで高島屋グループの一員となったが、今年5月末に同社の完全子会社に移行して百貨店との一体運営体制を強め、9月には衣料品通販サイト「セレクトスクエア」を「タカシマヤファッションスクエア」に刷新した。4月にセレクトスクエア社長に就任した木村優氏に事業環境や成長戦略などを聞いた。

 ――12年に高島屋から出向してきた。

 「高島屋がセレクトスクエアに66%強を出資したタイミングで管理側の責任者として出向してきた。今年はセレクトスクエア設立10年の節目の年で、高島屋グループ一体化戦略に舵を切る動きの中で社長に就任した。当社では総務や人事、企画など営業面以外はすべて見ていたが、取引先とのかかわりは少なく、4月から急ピッチで取り組んでいる」

 ――ファッションECの事業環境は。

 「寡占化が進んでいる。ゾゾさんの商品取扱高は高島屋グループのファッション取扱高を超えるくらいの水準になってきており、当社単体で勝負するのは難しい。規模ではなく付加価値こそがファッションECモール各社の色の出しどころになる。この1~2年でアパレル各社の自社EC強化も進んで競合が増え、ネットとリアルを併用する消費者が増えていることからも、リアルを含めた競合関係が激化している。一方で、EC化率を見るとファッション商材はまだ伸びしろが大きく、各サイトがいかに価値を提供できるかが命題だ」

 ――高島屋との提携後もなかなか売り上げが伸びなかった。

 「当社にとって高島屋との提携は、百貨店の店頭顧客にECを使ってもらうことがメリットとしてあったが、実際にはEC利用が大きく進展しなかった。理由のひとつは実店舗の価値がまだ大きいことだ。消費者が店舗に行って買い物をするのは単に商品が欲しいだけでなく、店ならではの購入体験として試着や販売員の意見が聞きたいとか、色や素材をしっかり確認したいといったリアルの価値が高島屋はとくに高く、ECとのサービス水準にまだ差がある」

 ――顧客層も違う。

 「高島屋店頭の顧客は50~60代が主力で、セレクトスクエアは30代後半~40代前半がメインという年齢構成の違いも少なからず影響している。また、高島屋のグループ入り後も屋号が『セレクトスクエア』のままだったため、高島屋との関係性が分かりにくかった。あとは、タカシマヤカード利用時のポイント付与率が百貨店店頭の8%に比べ当社サイトでは3%と低かった。高島屋の場合はカード利用の組織顧客が売り上げの6割程度を占めていて、カード保有者からするとポイント付与率の差があるとECにスイッチしづらい」

 ――サイト刷新でデメリットを修正した。

 「9月にサイト名を『タカシマヤファッションスクエア』に変更し、タカシマヤカード利用時のポイント付与率も店頭と同じ8%に引き上げたことで、屋号とポイントの問題は解消された」

 ――店頭とのMD共通化の取り組み状況は。

 「ECのMDは、提携後の5年間で百貨店店頭との品ぞろえの差がだいぶ埋まってきている。従来はセレクトショップが中心だったが、百貨店アパレルではオンワード樫山さんやワールドさん、TSIさん、三陽商会さんなど大手各社との取り引きに加えて、今年からはレリアンさんやフランドルさんなどの商品も取り扱いを始めた。サイト刷新時は約200ブランドだったが、18年2月までにさらに50ブランド程度の新規取り扱いを始めることで、店頭とのMD共通化が一定水準まで高まる」

 ――百貨店アパレルの扱いが増えた背景は。

 「3~4年前と比べてアパレル各社のECに対する考え方が変わったことが大きい。アパレル各社の自社ECも拡大し、ECに関するノウハウも貯まってきたことでモールへの横展開にも力を入れている」 (つづく)

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