「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品(以下、葛の花)の広告をめぐり、消費者庁が10月中にも景品表示法に基づく措置命令を下す方針だ。消費者庁は、命令の方針に「(処分等について)公表前に一切話すことはなく、調査の有無を含め一切公表していない」(表示対策課)とする。だが、「葛の花」を販売する複数の企業には9月下旬、すでに措置命令の方針とともに、課徴金納付命令の方針も言い渡されている。
処分は、消極的にみて「葛の花」の表示をめぐり新聞への社告掲載を行った企業を含む5~8社とみられる。「10社を超える」とみる業界関係者もいる。課徴金納付命令の方針もあわせて伝えられており、処分公表とセットの命令になるとみられる。
過去、社告掲載を行った企業のいずれも「あたかも商品を摂取するだけで痩身効果が得られるかのような表示を行っていた」と認めており、処分の内容は、ダイエット訴求の表示に対する「優良誤認」とみられる。
通常、景表法の処分をめぐる手続きは、措置命令の方針を伝えられた後、最低2週間の猶予をもって事業者側に「弁明の機会」が与えられる。今回、複数の企業が処分方針を伝えられたのは「9月15日以降、21日あたりまで」(業界関係者)。10月初旬には弁明を終え、その後、処分が判断される計算になる。
弁明が認められれば処分の方針は変わる。ただ、過去に処分が行われた事例では「書きぶりが多少変わっても、処分自体が取りやめになったことはない」(元行政職員)というのが通例だ。
問題は、処分が東洋新薬に及ぶかだ。「葛の花」はいずれも東洋新薬がOEM供給するもの。広告をめぐっても営業資料の提示や販促支援など関与が疑われていた。
東洋新薬は、消費者庁からの措置命令方針について改めて「答えられない」(9月26日時点)と回答。複数の業界関係者は製造元を処分しないとみている。
今回、実際に処分に至れば機能性表示食品に対する初めての行政処分になる。ただ、処分をめぐり、事業者の不満も蓄積している。テスト販売などわずかな販売期間にも関わらず、処分の方針を通達された企業もいるためだ。「表現を逸脱する企業の巻き添えを食った」と話す事業者もいる。
処分は、故意、過失を問うものではなく、厳正に対処される。ただ、行政関係者からも「スマホ広告では怪しい健食が溢れている。今もさんざん野放しにしておいて機能性表示食品の処分を行うのはおかしい」「表示対策課は(新制度の)検討会にも参加しておらず、趣旨も理解していない。取り締まりを厳しくすれば企業側も意気消沈して制度が伸びない。企業の味方をするわけではないが、市場の健全化を考えれば企業にもプラスになるような指導をするのが行政マンの本来の役割」との声が聞かれる。
「葛の花」の処分は、機能性表示食品市場の行く末にも影響しそうだ。
「お詫び社告」5社目
東洋新薬がOEM供給する機能性表示食品をめぐる「お詫び社告」は9月26日、新たにやまちやが日刊紙に掲載、5社に至った(ニッセンはサイトのみのお詫び掲載)。今回の社告がこれまでと異なるのは、明確に自らの景品表示法違反を認めていること。具体的な表示期間、表示内容にも言及する。消費者庁の調査も大詰めを迎えている。
やまちやは、販売する「葛の花由来イソフラボン入り きょうの青汁」について、日本経済新聞、産経新聞に社告を掲載、自社通販サイトでもお詫びした。
「葛の花由来イソフラボン」を含む機能性表示食品(以下、葛の花)をめぐるこれまでの社告掲載は、「あたかも商品を摂取するだけで(略)痩身効果が得られる」とは認めるものの、具体的表現への言及はない。
一方、やまちやは昨年8月1日から5月11日にかけて、ウェブのランディングページ(LP)で記載した具体的表現を掲載。走っている女性のシルエットのイラストと「つらい運動」、ケーキの絵に「×印」をつけたイラストと「食事制限はムリ!」、お腹のイラストと「頑張らないダイエットをサポート!!」といった表示について、「あたかも痩身効果が得られるかのように示す表示だった」としている。
表現について過去の社告のように"不適切"との判断ではなく、「景表法に違反するもの」と認めている点も異なる。
やまちやも、消費者庁による調査の事実は認めた。昨年8月の発売後、早い段階でLPの表示に問題があるとの判断から修正したものに切り替えて広告運用していた。ウェブ広告担当者の退職を受けた引き継ぎに伴う広告運用のミスから「修正前の広告が一部ウェブ上に残っていた」(同社)という。
ただ、広告に関する消費者庁の指摘は受け止め、今後、広告の管理・運用を徹底して再発防止を図る。「お客様に誠実に対応し、組織体制の強化する」(高木社長)としている。すでに「葛の花」を愛用する顧客もいることから、表示を見直した上で商品の販売は継続していく。
やまちやの年間売上高(2016年12月期)は、前年比10%減の約17億円。今期は同6%減の約16億円を見込んでいる。
「葛の花」の表示をめぐっては、5月末、スギ薬局が「お詫び社告」を掲載して以降、テレビショッピング研究所、日本第一製薬が社告を掲載。ニッセンがサイトにお詫び文を掲載している。