大手小売り企業の実店舗で、ネット販売と連動した施策が加速している。それぞれ共通するのは実店舗では限られている在庫スペースの問題を解消するという狙い。最新のデジタルツールの導入や店頭からでもネット注文しやすい接客対応を整備することで、顧客に手間や不便を感じさせずにネット誘導することに取り組んでいる。
ジーユーの新店舗カートで情報連携
「実店舗とECの両方のメリットを考えて作った形の店舗」と語るのはジーユー(本社・東京都港区)の柚木治社長。RFIDなどのデジタル技術を活用して、通販サイトとも情報面で連動した実店舗として9月15日、横浜市内に「ジーユー横浜港北ノースポート・モール店」を開設した。
標準店舗の2倍のアイテム数を展開する同社最大規模の同店舗の特徴は、実店舗の接客力とECの品ぞろえ・情報量を融合させたというポイント。中でも目玉となっているデジタル接客ツールは、押し手の部分にモニターが付いた専用ショッピングカート「オシャレナビ・カート」で、モニター横にあるセンサーに店内の商品をかざすことで、商品の詳細情報をはじめ、店頭には置いていないその商品の色柄・サイズ違いの在庫状況について実店舗と通販サイト双方の最新データが表示される仕組みとなっている。
画面上には「取り寄せ可能商品」とのメッセージがポップアップで表示され、顧客は通販サイトからの自宅配送か、あるいは同店舗への取り寄せなどを選択することができるようになっている。カート自体に決済機能は付属されておらず、店内のサービスカウンターで申し込みや購入手続きをとる仕組み。自宅配送・取り寄せともに無料で利用できる。
また、商品を読み込んだカートに表示される情報の中には、当該商品を着用したモデルや一般人のコーディネート画像に加え、これまでの購入顧客が通販サイトに書き込んだ商品レビューも表示されるようになっている。書き込み者の性別、年齢層、身長、体重、購入サイズ、着用感まで細かく記載されることから、自身の体型などとも比較しながら購入の参考にすることができるようだ。
そのほか、店内にある6カ所の「オシャレナビ・ミラー」についても、通常時は普通の鏡となっているが、RFIDセンサーが付いているため、商品をかざすと当該商品を着用したモデルや一般人のコーディネート、通販サイトに書き込まれた商品レビューを見ることができる。
「店で商品を実感しながらデジタルの様々な情報を参照し、在庫をより便利に確保できる。顧客が実店舗とECの両方を利用すると、より当社との関係が近くなって年間購買額が確実に上がる」(柚木社長)とした。同社では、売上高に占めるネット販売の割合が現状では5~6%となっているが、今後はデジタル店舗の横展開や通販サイトのテコ入れを図ることで、中長期的に30%の比率まで伸ばすことを目指している。
青山商事は店内のサイネージを活用 紳士服小売り大手の青山商事(本社・広島県福山市、青山理社長)でも、デジタルツールを駆使した実店舗と通販サイトの連携を行っている。9月15日に開設した「東急プラザ蒲田店」と同29日に開設する「島忠ホームズ仙川店」は、それぞれ都内の商業施設内の店舗で、同社が進めるネット融合型次世代店舗の「デジタル・ラボ」の形式となっている。両店舗は店内に大型のタッチパネル式サイネージやタブレット端末の「iPad」を設置しており、そこで通販サイトの在庫から商品選択ができるようになっている。購入商品は最短2日で配送される仕組み。店頭で試着・採寸して手ぶらで帰れるという利便性で訴求している。
同店舗にとっては通販サイトと連動したことで、店頭に同じ色柄のスーツのサイズ在庫を大量に持たず、商品種類を多く置くことが可能。同じ型紙のブランドであれば1品番につき1サイズの在庫を置くだけで、その店頭在庫をゲージ見本のように使用して試着や採寸を行えるという。店内はゆっくりと店頭在庫以外の商品を検索したり、選んだ商品のサイズ在庫を確認できるように、iPadを操作するための専用スペースも設けている。
デジタル・ラボの開設は昨年10月の「秋葉原電気街口店」と合わせて3店目。ともに小型店舗でありながら、この仕組みによって大型店舗並みの品ぞろえが可能となっている。なお、秋葉原電気街口店では顧客の再来店数が増加し、店頭で通販サイトを利用して購入する割合も2割以上となった。今回の新店舗ではこの割合をさらに引き上げるモデル店として期待している。
(つづく)
ジーユーの新店舗カートで情報連携
「実店舗とECの両方のメリットを考えて作った形の店舗」と語るのはジーユー(本社・東京都港区)の柚木治社長。RFIDなどのデジタル技術を活用して、通販サイトとも情報面で連動した実店舗として9月15日、横浜市内に「ジーユー横浜港北ノースポート・モール店」を開設した。
標準店舗の2倍のアイテム数を展開する同社最大規模の同店舗の特徴は、実店舗の接客力とECの品ぞろえ・情報量を融合させたというポイント。中でも目玉となっているデジタル接客ツールは、押し手の部分にモニターが付いた専用ショッピングカート「オシャレナビ・カート」で、モニター横にあるセンサーに店内の商品をかざすことで、商品の詳細情報をはじめ、店頭には置いていないその商品の色柄・サイズ違いの在庫状況について実店舗と通販サイト双方の最新データが表示される仕組みとなっている。
画面上には「取り寄せ可能商品」とのメッセージがポップアップで表示され、顧客は通販サイトからの自宅配送か、あるいは同店舗への取り寄せなどを選択することができるようになっている。カート自体に決済機能は付属されておらず、店内のサービスカウンターで申し込みや購入手続きをとる仕組み。自宅配送・取り寄せともに無料で利用できる。
また、商品を読み込んだカートに表示される情報の中には、当該商品を着用したモデルや一般人のコーディネート画像に加え、これまでの購入顧客が通販サイトに書き込んだ商品レビューも表示されるようになっている。書き込み者の性別、年齢層、身長、体重、購入サイズ、着用感まで細かく記載されることから、自身の体型などとも比較しながら購入の参考にすることができるようだ。
そのほか、店内にある6カ所の「オシャレナビ・ミラー」についても、通常時は普通の鏡となっているが、RFIDセンサーが付いているため、商品をかざすと当該商品を着用したモデルや一般人のコーディネート、通販サイトに書き込まれた商品レビューを見ることができる。
「店で商品を実感しながらデジタルの様々な情報を参照し、在庫をより便利に確保できる。顧客が実店舗とECの両方を利用すると、より当社との関係が近くなって年間購買額が確実に上がる」(柚木社長)とした。同社では、売上高に占めるネット販売の割合が現状では5~6%となっているが、今後はデジタル店舗の横展開や通販サイトのテコ入れを図ることで、中長期的に30%の比率まで伸ばすことを目指している。
青山商事は店内のサイネージを活用
紳士服小売り大手の青山商事(本社・広島県福山市、青山理社長)でも、デジタルツールを駆使した実店舗と通販サイトの連携を行っている。9月15日に開設した「東急プラザ蒲田店」と同29日に開設する「島忠ホームズ仙川店」は、それぞれ都内の商業施設内の店舗で、同社が進めるネット融合型次世代店舗の「デジタル・ラボ」の形式となっている。両店舗は店内に大型のタッチパネル式サイネージやタブレット端末の「iPad」を設置しており、そこで通販サイトの在庫から商品選択ができるようになっている。購入商品は最短2日で配送される仕組み。店頭で試着・採寸して手ぶらで帰れるという利便性で訴求している。
同店舗にとっては通販サイトと連動したことで、店頭に同じ色柄のスーツのサイズ在庫を大量に持たず、商品種類を多く置くことが可能。同じ型紙のブランドであれば1品番につき1サイズの在庫を置くだけで、その店頭在庫をゲージ見本のように使用して試着や採寸を行えるという。店内はゆっくりと店頭在庫以外の商品を検索したり、選んだ商品のサイズ在庫を確認できるように、iPadを操作するための専用スペースも設けている。
デジタル・ラボの開設は昨年10月の「秋葉原電気街口店」と合わせて3店目。ともに小型店舗でありながら、この仕組みによって大型店舗並みの品ぞろえが可能となっている。なお、秋葉原電気街口店では顧客の再来店数が増加し、店頭で通販サイトを利用して購入する割合も2割以上となった。今回の新店舗ではこの割合をさらに引き上げるモデル店として期待している。(つづく)