国民生活センターは8月3日、健康食品を摂取して薬物肝障害を発症した事例が9件あったと発表した。医師による情報提供窓口で受け付けたもの。このうち1件で、特定保健用食品(トクホ)の粉末青汁が含まれていた。消費者庁や厚生労働省、日本通信販売協会、日本健康・栄養食品協会などに情報提供した。
情報提供のあった9件は、医師による情報提供窓口「トラブルメール箱」に2014年8月から今年7月までに寄せられたもの。9件の内訳は女性が7件で男性が2件。すべての患者が40代以上で、1か月以上にわたって医療機関で受診。3件が入院していた。
肝障害を発生した9件のうち、3件は健康食品と医薬部外品を併用し発症し、6件が健康食品のみを摂取して発症したケースだった。また、1件はトクホの粉末青汁で発症したものだった。国センは、血液検査や使用状況などをもとに診断した医師による情報提供で、医師からのアドバイスも参考にして因果関係について判断した。
情報の内容は「トクホの粉末青汁を脂質異常症の改善を目的に1回服用したところ、腹部に不快感。13日後に寒気、15日後に頭痛。検診で肝障害を認め34日間入院した」、「倦怠感や褐色尿などを訴えて受診。血液検査の結果から急性肝障害と診断した。2~3か月前から3種類の健康食品を使用しており、摂取を中断したことで血液検査結果の値が減少。サプリメント3種に対する血液検査で陽性となったため薬物性肝障害と診断した」とする情報提供があった。これらは、重大事故情報として消費者庁に報告されているという。
このほかに「尿が濃いことを自覚して受診。血液検査結果で肝細胞の異常を示す値が上昇していた。摂取していた健康食品が原因の薬物性肝障害と考えた」、「10年前からに数種類の健康食品を摂取。総合感冒薬1日分を摂取した約2週間後に腹部の不快感あり。血液検査の結果、使用していた健康食品1種類と総合感冒薬が原因と考えられた」とする情報があった。
国センは、類似の情報提供が複数あり、重症化する恐れがあるとして消費者に注意喚起した。薬物性肝障害の「倦怠感」や「黄疸」など症状が持続する場合に、医療機関を受診するよう呼びかけた。
健食被害公表の実態は?
医師の「診断」垂れ流し
検証は「行っていない」「(健食が原因)らしい、という表現が一番近いかもしれない」。健康食品の摂取による薬物性肝障害の可能性を指摘した国民生活センターの発表は、あいまいな説明に終始した。要は、医師から寄せられた情報を鵜呑みにし、垂れ流したということだ。注意喚起の必要性は否定しないが、「あまりに安易」と指摘する声が複数の事業者から上がっている。
医師からの事故情報受付窓口「ドクターメール箱」に寄せられた情報は今年7月までの約3年で1
79件。うち9件が健食の摂取による「薬物性肝障害」と診断された。トクホの粉末青汁が原因と疑われる事例、複数の健食を摂取したり医薬品と健食を併用していたケースが紹介された。ただ、中には10年以上、健食を摂取。ある日感じた腹部の不快感から発症が確認され、健食1種と風邪薬が原因と診断されたものもある。
だが、本当に健食が原因か、因果関係は判断していない。判断が難しいとはいえ、事例の客観的検証、深掘りも行わず、医師の「診断」をただただ重視した。なぜ検証しないかも「厳密な判定は(各種)委員会などでやるのかもしれないが、そこまではしていない」と答えとも言えない回答をするのみだ。
事例には、発症後の血液検査で健食に含まれる成分がアレルギーの陽性反応を示したものもある。
「(陽性だから)100%原因とは言えないが、因果関係を判断する一つの試験」とも説明した。ただ、「だから健食に気をつけて」と言われても、自らがどういった物質にアレルギー反応を示すか知らない消費者も多い。「気をつけて」と言われても気をつけようがないわけだ。
そもそも健食に特異的な事例か、検証を伴わず公表すれば風評被害につながる。突然公表したタイミングも「事例が集まり、(参考意見を求めた医師も)一義的に消費者に認識を持ってもらいたいと言われたので注意喚起すべきと考えた」とするが、「(健食でも)発症頻度は稀だが起こりうる」という発表に、消費者系メディアからも「消費者がどう行動したらよいかわからない」といった声が聞かれた。「政策提言はないか」との質問もあったが、せめて「医薬品の被害救済制度のようなものが必要」ぐらいのことを言うべきではないか。どっちつかずの公表は今後に課題を残すものだ。