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「トクホの大嘘」の真実㊤  「大嘘は言い過ぎ」、消費者の問合せ「ほとんどない」

2017年 4月 6日 14:34

 2-1.jpg週刊新潮が2週に渡り「トクホの大嘘」と題し、トクホの効果を疑問視する記事を掲載した。難消化性デキストリン(以下、難デキ)の根拠論文などを挙げ、「トクホは国とメーカーによる壮大な消費詐欺」「脂肪吸収抑制はインチキ」と断じる。だが、記事にコメントを寄せるお歴々を見ると「健食否定派」のオンパレード。トクホ批判に「反響ないから」と、消極姿勢を見せる業界団体の腰砕けにも批判の声があがる。


「効果なし」断定も

 まず、記事を振り返りたい。記事は大きくトクホの効果の問題、根拠論文の質の問題、安全性の問題の三段構えの構成。一部論文をアカデミアなどに批判させた上、トクホ全体を指して「大嘘」と断定し、広告の誇大ぶりも指摘している。

 インパクトがあるのは、難デキに「脂肪の吸収を抑制する効果はない」と断定した部分。論文から、摂取群と比較対照群で排便量に2倍の差があるように見えるものの、排出されなかった脂肪量の差はわずか1・2%と山本啓一千葉大学名誉教授のコメントとともに紹介。同じく体脂肪に作用するケルセチン配糖体も摂取群と比較対照群の10・30平方センチという腹部脂肪面積の差も実際の変化は微々たるもの、と高橋久仁子群馬大学名誉教授のコメントで指摘している。作用メカニズムを検証する論文の質の問題にも切り込み、安全性はトクホにも多用される人工甘味料をあげ、科学ジャーナリストを名乗る渡辺雄二氏のコメントから健康被害の疑念が払しょくできないことを指摘している。


「針小棒大」に語る

 ただ、「大嘘」とまで断じてしまうことは議論を呼びそうだ。

 業界からも「データは決してネガティブなものではなく、効果も『どれだけ抑えれば良い』という話じゃない。より効くものじゃないと意味がないという話になるが、極端に効くものは逆に安全性の問題がある」(企業A社の研究職)、「あらゆる食事内容、状況を反映させた試験は現実問題できないのが研究の限界。こうした議論は起こるが統計的に有意差が出たことは尊重されるべき」(業界団体関係者)といった声が上がる。中には、「根拠の弱い論文を見つけてきて全体がインチキと針小棒大に語っている。『大嘘』は言い過ぎで虚偽誇大表示」(企業B社の研究職)といった声もある。


大反響?

 「大反響!」と銘打って第2弾を報じたものの、名指しで指摘を受けた企業への問い合わせは「ほとんどない」(キリン)、「それほどない」(サントリー食品インターナショナル)、「数件の問い合わせはあったが、国の許可を受け手順を守って販売していると伝えている」(アサヒ飲料)といったもの。「記事に対するコメントの予定はない」と声を揃える。

 すぐに反応したのは、難デキトップシェアの松谷化学のみ。「数字をいじくって見られているが、効果、作用メカニズムの信頼性に問題はない」とコメント。ただ、問い合わせがわずかであることから「当初抗議も考えたが、現状のままであれば収束に向かう」と話す。

 「メーカーと組んだ消費詐欺」と指摘された消費者庁も「とくに一部週刊誌の記事にコメントすることはない。トクホは消費者委員会、食品安全委員会などで専門家の意見を聞いて有効性・安全性を確認している」と、制度の適切性を説明。消費者に混乱が広がる懸念には、「記事を受けて、ということではなく(制度を)知らない人もいるので消費者教育はしなければいけない」と話すにとどめる。

 とはいえ、記事には注意が必要だろう。というのも記事にコメントを寄せる面々の素性など、多くの消費者は関心を持たないのだから。それこそ記事でも指摘される「バイアス」が生じかねない懸念があるからだ。   (つづく

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