千趣会グループのベルネージュダイレクトは、昨年3月に雪印メグミルクが資本参加(33・4%)し、同年7月に旧主婦の友ダイレクトから社名変更して新たなスタートを切っている。機能性食品や出産内祝いギフトを強化する一方で、育児系のカタログ事業の中止や雑誌通販からの撤退など選択と集中を加速。「激動に次ぐ激動の数年だった」と振り返る柿﨑富久社長に、事業再編の経緯や成果、成長戦略などについて聞いた。
──会社の変遷を近くで見てきた。
「私自身は主婦の友社の通販事業部時代から30年近く、当社の事業にたずさわってきた。1999年に主婦の友社から分離・独立して主婦の友ダイレクトになった際に企画部長、その2年後に役員となり、09年3月にJALUXの連結子会社となった後、12年6月に社長に就任した。JALUX傘下では両社が保有するインフラの共同利用でシナジーを発揮する構想があったが、顧客層や商品構成がまったく異なり、共同利用が進まない中でJALの経営破たんがあった」
──筆頭株主が変わることに。
「当時は当社も雑誌、カタログ事業が苦戦し、10年くらいからは赤字が続いていた。そこで、雑誌や産院ルートを通じた育児系通販をテコ入れし、復活を果たしたいという思いで千趣会の門を叩いた。結果的には、13年9月にJALUXが持つ当社株式51%を千趣会がそのまま引き継ぎ、翌年には主婦の友社などの保有分も含めて千趣会の100%子会社となった。すぐさま、約20人の合同チームを立ち上げ、育児系の雑誌とカタログを立て直すために千趣会の独自商品を扱ったり、ECのシステムを再構築してもらった。ただ、雑誌の部数が減っていたことやネット上の価格競争も激しく、成長軌道には乗れず、15年春夏号を最後にメイン媒体『トマ・トマ』をやめてカタログ事業から撤退した」
──「トマ・トマ」は30年近く続いた媒体だ。
「主婦の友社の育児誌、マタニティー誌の誌上通販が好調だったころは雑誌で獲得した顧客に『トマ・トマ』を送って成長してきた。昨年、主力事業として取り組んできたカタログからの撤退に伴って中期計画を策定したが最終号も振るわず、15年上期は大きな赤字となったため、再度、計画を見直し、15年下期に雑誌通販の中止も決めた」
──具体的には。
「育児系の雑誌通販は8月末で終了となるが、在庫の販売も含めて年内はサイトを残す。また、主婦の友社のインテリア系雑誌『プラスワンリビング』などをベースにした通販も当社が行っていた。雑誌に数ページの付録をつけ、年に数回、ムック本を出して刈り取るという取り組みをしていたが、これらも今年で撤退する」
──一方で、雪印メグミルクとの関係性は。
「昨年3月に資本参加した雪印メグミルクとは雪印乳業時代の01年に、『ベビーパラダイス』という産院で配布する育児媒体を出すときに当社を選んでもらった。その後、雪印乳業は子会社のビーンスターク・スノー(現雪印ビーンスターク)に粉ミルクなどの事業を移管したことで、当社の取引先はビーンスターク社となった。ビーンスターク・スノーは粉ミルクなどに加えて、機能性食品のドリンクなどを発売し始めたが、消費者向けの販売子会社を持っていなかったため、当社が通販業務を担うことになった。04年から機能性食品の販売を始め、その中にリピート率の高い『毎日骨ケアMBP』という商品があり、08年には新たに定期購入の仕組みを作った」
「ビーンスターク・スノーは09年にドラッグストアなど店頭での販売をやめ、当社の専売のような形となったことで売り上げがグッと伸びた。その後、機能性食品は順調に成長し、14年3月に雪印メグミルク本体に機能性食品事業部が立ち上がり、消費者向けの通販に取り組む際、当社と継続的にタッグを組むか、販売会社を自ら作るかという検討をしたようだが、最終的には継続契約を選択してもらい、資本参加もという流れになった」
──転換点だった。
「
業務提携契約は雪印メグミルクと千趣会、当社の3社契約になっている。メーカーと総合通販大手が組むことは珍しいと思うが、当社がハブのような役割を担って機能性食品の事業拡大を目指す。現在、千趣会の主導で基幹システムのリプレイスを進めており、従来の総合通販から単品通販に寄ったシステムに切り替える。詳細は決まっていないが、ECの見え方も様変わりすることになるだろう。一方で内祝いギフトも好調のため、今後は機能性食品とギフトの2つが当社の主力事業となる。それ以外ではメディア営業(広告)やカタログ制作の受託、機能性食品の定期会員に毎月届ける会報誌『健幸美身(けんこうびじん)』も昨年の夏から手がけている」 (つづく ※㊦は
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