ハースト婦人画報社の通販サイト「エル・ショップ」が好調だ。同サイトは優良顧客に支えられているほか、講談社のウェブマガジンとの連動企画が新客開拓につながるなど、「エル・ショップ」がけん引してコマース事業の上期(1~6月)売上高は前年同期比約20%増となっている。
ハースト婦人画報社によると、「エル・ショップ」は可処分所得の高いユーザーが多いのが特徴という。VIP会員になる顧客は早い段階で分かるようで、1回当たりの購入金額が高い利用者というよりは、送料を気にせず、欲しい商品があれば小まめに買い物をする購入頻度の高い会員がVIPになりやすく、当該層の購買行動に下支えされているという。
加えて、今期は3月2日から講談社のミドルエイジ女性向けウェブマガジン「ミモレ」とのコンテンツ連携を始め、成果が出てきている。同マガジンには、「エル・ショップ」で扱う商品を使ったコーディネートを「ミモレ」のエディターが提案する"マストバイ"のコーナーを新設。そこから「エル・ショップ」へ誘導しており、来訪者は同コーナーの掲載商品を購入しているのに加え、リピート率も想定以上で、優良顧客になり得る層を開拓できている。
「エル・ショップ」側も、雑誌「エル」のエディターがコーデを紹介するコーナーにミモレ編集部がゲストエディターとして参画。ユーザーを「ミモレ」に送客しており、当該ユーザーは他チャネル経由の来訪者に比べてサイト滞在時間が約5倍となるなどの特徴があり、相互送客の観点からも一定の成果を得ている。
「ミモレ」との取り組みでは7月末以降、熊本地震の被災者に義援金を送るチャリティー企画を計画。同マガジンの大草直子編集長も加わり、エル・ショップ」で取り扱いがある日本のブランド「フォーコーナーズ」の協力を得てワンピース(2万4000円)限定100枚を「エル・ショップ」で販売。売れた全金額を寄付する。
また、ブランドとのタイアップ企画では6月中旬、人気ブランド「マディソンブルー」と組んだリアルイベントを東京・青山のイベント会場で開催。「エル・ショップ」を通じて100人を招待した。当日は、ブランドの秋冬新作コレクションを同サイト内での予約会に先駆けて披露したほか、デザイナーの中山まりこ氏とアナウンサーの安藤優子氏とのトークショーを実施。秋冬商品はその場では販売せず、試着してもらってECでの販売につなげた。
メンズも強化へ
ハースト婦人画報社は今後、レディース衣料だけでなく、伸びしろの大きいメンズファッションの強化にも本格着手する方針だ。
同社ではファッション誌「メンズクラブ」の通販サイト「メンズ・プラスショップ」に加え、昨年2月には「エル・ショップ」内でもメンズ商材の取り扱いを本格化している(画像)。
現状、「エル・ショップ」は女性向けのファッションECとして知られていることもあり、メンズでの認知拡大が課題のひとつだが、「エヌハリウッド」や「ホワイトマウンテニアリング」などウェブ上の売り場が少ない人気ブランドが出店すると新規顧客が増えるため、こうしたブランドの開拓を進めたい考え。
一方、「メンズ・プラスショップ」については機能強化を計画。これまで、カート落ちしたユーザーに在庫が残り1点になった時点でメールを届けたり、再入荷リクエストを受ける機能などは「エル・ショップ」にあるだけだったが、雑誌「エル」以外の自社運営サイトにも「エル・ショップ」と同様の機能を追加することにしており、雑誌「ヴァンサンカン」のECとともに販売強化につなげる狙いだ。