らでぃっしゅぼーやの業績が好調だ。直近の決算では増収黒字化で着地した。NTTドコモの傘下入り後から着手していた、携帯電話の販売などを行うドコモショップを活用した新規客獲得策などが増収に寄与。今後は、ネットの活用などで顧客の定着化を進めていくほか、ドコモグループ間の連携を積極化するようだ。社長就任から約1年が経過した国枝俊成社長に前期の振り返りと、今後の取り組みについて聞いた。
前期(2015年2月期)は。
「増収黒字化(官報によると売上高は前期比2・1%増の208億4900万円、営業利益は2億500万円※前々期は11億6400万円の損失)だった。顧客数は約14万人に拡大した」
ドコモショップからの集客の状況は。
「NTTドコモが3年前に買収して以降、ドコモショップからの集客は重要なミッションだ。ただ、以前はドコモショップで直接入会した定期会員のうち、2か月後に残存する顧客は10%程度と低かった。昨年秋に、ドコモショップでの新規客獲得策を見直し、定着率は2倍に増えた」
具体的な施策は。
「ドコモショップ専用の頒布会『らでぃっしゅセレクション』を開始した。これを継続して購入する、富裕層やオーガニックに関心が高い顧客に定期会員の仕組みを案内し成果を得ている」
ドコモショップでの新規客獲得について費用対効果は。
「商品の購入だけで黒字化するモデル。さらに、紙の印刷コストや人件費を投資していないため、1人あたりの獲得コストは他の手法と比べると抑えられている」
訪問営業は。
「昨年秋に、プロジェクトチームを立ち上げて訪問営業を集中して行った。過去の折込チラシやウェブサイトの資料請求客、友人の紹介などで獲得した休眠客のデータをもとに、再入会を案内した。有機野菜への関心が高く自ら情報を取得した層のため、定着率が高く客単価が高かった」
ネット販売の集客状況は。
「だんだんと上昇し、新規客獲得の約40%がネット経由だ。これまで取り組んでいたリスティングやターゲティングなどの広告の効果が出た。訪問営業よりも一人当たりの獲得コストは低くなっている」
売れ筋は。
「『時短』、『健康』、『プチ贅沢』のカテゴリーが前年を上回った。『時短』は料理キットを投入し、惣菜や冷凍食品の品ぞろえを充実した。健康食材として注目されたココナッツバージンオイルやアマニ油などが好調。おせちやクリスマスケーキの動きが良く、良いものを食べたいシニア層のニーズに対応できた」
今期の方針は。
「ひとつは、ライフタイムバリューを重視して顧客が離脱しにくいビジネスモデルを構築する。ドコモグループとの連携をさらに強化して、シナジーを追求する」
顧客が離脱しにくいビジネスモデルとは。
「顧客は有機野菜に、安心・安全と美味しさを求めている。都心に住んでいると生産者の顔が見えにくい。このため、ネット上で、安全・安心で美味しさを体験できるサービスを提供したいと考えている。消費者を直接つなぎ、例えば、豊作だった生鮮品のタイムセールといった生産者と消費者の双方向のコミュニケーションがあり得る」
アプリの開発は。
「ネット受注比率は25%で、このうちの3分の1から4分の1がスマホを利用者。アプリ開発の優先順位は高くない」
ドコモグループとの連携は。
「前期に引き続き、ドコモショップでの新規客獲得を進める。専用の頒布会『らでぃしゅセレクション』で、グループのABC CookingStudioと共同開発した野菜とお菓子作りのキットを投入した。グループとしてしっかりと売り上げを伸ばしたい」
「またABCとは、4月から食材卸を開始した。都内6スタジオに納めており、料理教室の生徒の入会もあった。今後、導入するスタジオを拡大したいと考えている」
機能性食品表示制度がスタートした。制度の活用はあるか。
「前期、好調だった『健康』カテゴリーの中で、野菜ジュースでの活用を検討している。野菜ジュースにはトクホで許可実績が多い『難消化デキストリン』を配合している」
生鮮品はどうか。
「野菜本来の美味しさを重視して栽培する生産者が多く、そういった商品を取り扱っている。ただ、水耕栽培で特定の栄養成分が多い野菜が登場しており、こうした生鮮品への関心はある」