11月19日に「楽天支店中止のお知らせ」を公表したサウンドハウス。楽天市場における銀行振込決済の仕様が変わり、ユーザーの振込先が楽天が開設した楽天銀行の口座に統一されたことに反発。「お知らせ」で楽天を激しく批判したことから、ネット上で大きな反響を呼んだ
(関連記事→「サウンドハウス、楽天市場から撤退」)。なぜこうした内容の文書を公開したのか。そして楽天批判の真意は。高坂昌信代表取締役に聞いた。(聞き手は本紙記者・川西智之)
――楽天を刺激しかねない内容の「お知らせ」を掲載した理由は。
「黙って閉店するのは逃げ出すようなので、理由を堂々と説明して、お客様にも知ってもらおうと。楽天は大きな会社なので、当社が何を言おうが大勢に影響はないだろうが、『こういう意見もある』ということを皆さんに分かってもらいたく、あえて掲載した」
――楽天では、事前にサウンドハウスの担当者には通知をしており、企業対企業の取引としては合意があったと認識していることから、「(銀行口座を)勝手に開設したわけではない」という立場で、今回の規約変更は「楽天市場決済基本規約」にも沿っている。
「楽天からは文中にある『銀行口座を勝手に開設』の『勝手に』という言い回しをやめてほしいと依頼があった。そこで『弊社の意向にかかわらず』に書き換えてもいいと返事をしたが、今のところ連絡はない」
――ただ、仕組みが変わった11月13日以前は楽天に対してクレームを入れていない。ご自身は銀行振込関連の仕様が変わることについて認識していたのか。
「楽天から変更に関する連絡があったのは知っていた。ただ、文句を言ったところで変えるような会社じゃないし、一方で『本当にやるのかな』という気持ちもあった。こういうことは方針がコロコロ変わる場合もあるので。だから、実際にそうなってから考えようと思っていた」
――楽天では「消費者を保護するための変更」と説明している。
「弊社では自社サイトがあり、銀行口座もいくつかあるが、消費者保護のために口座を一本化する必要があるのか、と考えると腑に落ちない。楽天の都合で変更するなら、10日と25日だけではなく、新設口座から店舗の既存口座への振込手数料を完全に無料とすべきだ。店のことも考えて『手数料は負担するから協力してください』というのがあるべき姿では」
「その結果、『ちりも積もれば』的にお金が楽天銀行にプールされる。その部分について楽天は一切触れておらず、『消費者保護』しか言わないのは詭弁(きべん)に近いものを感じる」
――楽天では、モール内での銀行振込決済の比率は数%であり、全店舗分の口座が加わったとしてもさほど大きな金額は動かないとしているが。
「割合が低ければいいという問題ではない。そもそも金額が大したことないなら、手数料を負担して『協力してください』というのがスジだ」
――「お知らせ」に「日本の商習慣ではありえない」とあるが、意味は。
「普通、銀行振込は消費者が店舗にするものだが、今回の場合、口座は楽天が管理する(編注:開設された振込専用口座の名義は楽天で、口座に対する権利は店舗にはない。消費者が振り込む際には店舗の名義が表示される)。厳密な意味では当社の口座とは言えないし、店舗にとっては後払い的な存在だ。銀行振込というのはあくまで自社の口座に消費者が振り込むものだろう」
――今回の件での退店はサウンドハウス以外ないとのことだが、あくまで楽天の説明が足りないという認識か。
「当社の顧客には楽天市場の出店者もいて、『(サウンドハウスと)同じような説明しか受けていないし、あれでは良く分からない』という声をいただいている。事の重大性を考えると説明が足りていたとは思えない」
――「お知らせ」を掲載した後に、楽天から説明は受けたのか。
「『説明したい』という話はあったが、聞くだけ無駄かなと。何か改善の見込みがあるならお話をさせていただく、という返事はしている」
――楽天は、今回の措置で流通額に悪影響は出ていないとしている。
「『売り上げがあればいい』ということではない。当社にとっても銀行振込の比率は30%程度だし、手数料も大した額ではない。消費者が楽天銀行に振り込んでから、RMS(店舗管理システム)で入金確認ができるまでのタイムラグが不明なため、即日出荷への影響があるという問題もあるが、件数的には大きなものではない。ただ、こういうことをしてくる会社とはお付き合いすべきではないというのが当社のポリシー。これは楽天だけではなく、仕入先に対しても同じこと。一般的な商慣習に基づいて付き合うべきであり、それを裏切られた取引先とは取り引きを中止している」
「もちろん、楽天のやり方は法律上では何も問題ないと思う。違法であるなら当然訴訟をする。だから、道義的に『おかしいんじゃないか』というだけであり、『勝手に』が違うと言われれば書き換える。ただ心情的には『勝手に』ということ。楽天がそういう方向に進んでいくなら仕方ないが、お付き合いはしない、それだけだ」
――システム利用料の算出に消費税を含めて計算することや、メールマガジンの一律有料化など、その他の改定についてはどう思うか。
「それなりに理屈も通っているし、高い安いがないわけではないが、納得できる範囲」
――通販売上高に占める楽天市場店の比率は。
「1~2%程度。外部サイトにはあまり注力していない」
――2007年に一度楽天市場から退店し、その後再出店したわけだが、その理由は。
「新規顧客を獲得するために、少し高い出店料も広告料と思ってやむなし、と出店した」
――最近の楽天市場に対するご意見は。
「出店料を考えると、売り上げが少ない店が商売を成り立たせるのは難しい。オリジナル商品など高い利益率の商品を持つ店でないと厳しい。集客力はあっても、売り方自体は過渡期に来ているのでは。独特のサイトの作り方も含めて、消費者には飽きが来ている部分もあるように思う」