韓国生活用品大手のLG生活健康が2月7日、健康食品通販を展開するR&Yを買収する契約を締結した。R&Yの株式を持つファンドや個人投資家から全株式を取得。R&Yは、譲渡額を非公表としている。LG生活健康はここ数年、日本の通販企業を相次いで買収している。今後も積極的にM&Aを検討し、早期に日本で1000億円の売り上げを目指したい考えだ。
R&Yでは、消費者庁で健食の新たな機能性表示制度が検討される中、短期的な収益を追求するファンドではなく、長期的視野で研究投資を行える株主を必要としていた。LG生活健康は日本国内での事業拡大を目指しており、思惑が一致したため今回の買収に至った。
買収に伴い、今後、R&YにはLG生活健康から役員が派遣されることになる。ただ、竹尾社長は今後も通販事業を統括。実質的な責任者として在籍する。
今後は、LG生活健康が韓国に持つ研究機関などを活用して、主力の健食「プラセンタ100」のエビデンス(科学的根拠)を充実させていく考え。グループ間におけるシナジー創出も狙っていく。
R&Yは、1999年に設立。通販専門チャンネルのQVCジャパンを通じてプラセンタ含有食品の販売を始め、4年ほど前から自社通販を開始している。創業者であるオーナー(故人)が11年4月に企業向け投資などを行うフィンテックグローバル(本社・東京都港区、玉井信光社長)や個人投資家に株式を売却。その後、12年6月に入社した竹尾氏の下で、業績を拡大させていた。
LG生活健康は、12年1月に国内で化粧品通販を展開する銀座ステファニー化粧品(本社・東京都港区)を買収。株式の70%を91億円で取得し、15年までに全株式を取得すると発表した。
同年12月には、健食通販大手、エバーライフ(同・福岡市中央区)の全株式を日本円にして約258億円で取得する契約を結んだことも発表。現在、2社ともにLG生活健康の車錫勇(チャ・ソギョン)氏が代表取締役を務めている。
傘下に収めた3社が明らかにしている直近の売上高では、R&Yが、前年比約42%増の約52億円(13年6月期)。今期は同25%増の64億円の売り上げを目指している。
銀座ステファニー化粧品の売上高は、63億円(12年9月期時点、現在はLG生活健康に合わせ12月期決算に変更)、エバーライフの売上高は前年比約14%減の約192億円で、単純に合算すると約300億円になる。
LG生活健康は、「スム」「オフィ」「フー」などの化粧品ブランドを展開するほか、日本向けに洗剤などトイレタリー商材を輸出している。
グループで売上高1000億円へ、長期的視点で安定成長 R&Yの竹尾昌大社長にM&Aの経緯を聞いた。(聞き手は本紙記者・佐藤真之)
――M&Aの経緯は。
「健食の新制度に対応するため。短期的収益を志向するファンドではなく、資本力、研究開発力がなければ今後の拡大は見出せない。業績も好調な中で株主と相談して決めた」
――LG生活健康(以下LG)の方針は。
「(日本で)グループ売上高1000億円を目指すので今後のM&Aも共に検討していく。(R&Y)単体で2倍、3倍という発想はなく"成長率10%でも成長してくれたら"という話」――今後も続投する。
「今後も実質的な権限に変わりはない」――LGから役員は派遣される。
「登記上のもので常駐はしない」――意思決定のプロセスはどう変わる。
「LGの副会長に戦略を提案する形。長期的視野に立ってくれているのでグループ全体の戦略も提案したい」――グループにはエバーライフ、銀座ステファニー化粧品(以下ステファニー)もある。
「ステファニーのビジネスモデルには魅力を感じている」――どこが魅力か。
「コミュニケーターによる顧客の担当制。DMを送りレスポンス何%という世界が飽和する中、リーチの手法も差別化が必要。人間同士の関係構築が最も強く、ステファニーはこれを体現している」――具体的なシナジーはクロスセルか。
「各論としてそれもあるが単純に"売ってくれ"ではコミュニケーションがちぐはぐになる。自前のコールセンターでステファニーのモデルをゼロベースで作ると大変だが、人材交流を含め、勉強させてもらえる」
――エバーライフは。
「媒体のバイイングは一緒にできるかもしれない」――R&Yについて聞きたい。成長要因は。
「定期入会までのCRM、インバウンドのコールセンターを作り直した。定期転換率が向上したため、テレビはCSからBS、地上波に広げた。折込チラシも始め、ウェブの広告投資も5倍に増やした」――商品別売上構成は。
「『プラセンタ100』が9割を占める」――化粧品は今後LGの技術を活用する。
「ブランドコンセプトを見直しリニューアルする。LGの研究基盤もあり、ステファニーにもお願いできる」
――今期見通しは。
「64億円だが、計画を上回って推移する」――100億円も目指せる位置にいる。
「重要なのは営業利益。効率よく安定成長することだが、強いて言えば5年で達成できればと考えている」――成長戦略は。
「プラセンタの認知も高まり市場も拡大した。これまでは顕在ニーズの顧客を対象に媒体を絞り、効率よく新規を獲得していたが、今後は潜在顧客をいかに掘り起こすか。テレビのクリエイティブを変えつつ、エビデンスも蓄積する。4月には吸収性を高める特許技術を採用して商品もリニューアルする」
(
竹尾社長の略歴)1981年生まれ。32歳。鹿児島大学法学部在学中の02年にブックオフコーポレーション入社し、03年9月にブックオフ鹿児島代表取締役に就任。04年9月に同大を卒業し、07年4月にブックオフアドバンス取締役に就任。08年3月にJIMOSに入社、マキアレイベル代謝生活倶楽部事業部事業部長を経て、11年10月にダーウィンズ入社。12年6月にR&Yに入社し取締役就任、同年11月から現職。
R&Yでは、消費者庁で健食の新たな機能性表示制度が検討される中、短期的な収益を追求するファンドではなく、長期的視野で研究投資を行える株主を必要としていた。LG生活健康は日本国内での事業拡大を目指しており、思惑が一致したため今回の買収に至った。
買収に伴い、今後、R&YにはLG生活健康から役員が派遣されることになる。ただ、竹尾社長は今後も通販事業を統括。実質的な責任者として在籍する。
今後は、LG生活健康が韓国に持つ研究機関などを活用して、主力の健食「プラセンタ100」のエビデンス(科学的根拠)を充実させていく考え。グループ間におけるシナジー創出も狙っていく。
R&Yは、1999年に設立。通販専門チャンネルのQVCジャパンを通じてプラセンタ含有食品の販売を始め、4年ほど前から自社通販を開始している。創業者であるオーナー(故人)が11年4月に企業向け投資などを行うフィンテックグローバル(本社・東京都港区、玉井信光社長)や個人投資家に株式を売却。その後、12年6月に入社した竹尾氏の下で、業績を拡大させていた。
LG生活健康は、12年1月に国内で化粧品通販を展開する銀座ステファニー化粧品(本社・東京都港区)を買収。株式の70%を91億円で取得し、15年までに全株式を取得すると発表した。
同年12月には、健食通販大手、エバーライフ(同・福岡市中央区)の全株式を日本円にして約258億円で取得する契約を結んだことも発表。現在、2社ともにLG生活健康の車錫勇(チャ・ソギョン)氏が代表取締役を務めている。
傘下に収めた3社が明らかにしている直近の売上高では、R&Yが、前年比約42%増の約52億円(13年6月期)。今期は同25%増の64億円の売り上げを目指している。
銀座ステファニー化粧品の売上高は、63億円(12年9月期時点、現在はLG生活健康に合わせ12月期決算に変更)、エバーライフの売上高は前年比約14%減の約192億円で、単純に合算すると約300億円になる。
LG生活健康は、「スム」「オフィ」「フー」などの化粧品ブランドを展開するほか、日本向けに洗剤などトイレタリー商材を輸出している。
グループで売上高1000億円へ、長期的視点で安定成長
R&Yの竹尾昌大社長にM&Aの経緯を聞いた。(聞き手は本紙記者・佐藤真之)
――M&Aの経緯は。
「健食の新制度に対応するため。短期的収益を志向するファンドではなく、資本力、研究開発力がなければ今後の拡大は見出せない。業績も好調な中で株主と相談して決めた」
――LG生活健康(以下LG)の方針は。
「(日本で)グループ売上高1000億円を目指すので今後のM&Aも共に検討していく。(R&Y)単体で2倍、3倍という発想はなく"成長率10%でも成長してくれたら"という話」
――今後も続投する。
「今後も実質的な権限に変わりはない」
――LGから役員は派遣される。
「登記上のもので常駐はしない」
――意思決定のプロセスはどう変わる。
「LGの副会長に戦略を提案する形。長期的視野に立ってくれているのでグループ全体の戦略も提案したい」
――グループにはエバーライフ、銀座ステファニー化粧品(以下ステファニー)もある。
「ステファニーのビジネスモデルには魅力を感じている」
――どこが魅力か。
「コミュニケーターによる顧客の担当制。DMを送りレスポンス何%という世界が飽和する中、リーチの手法も差別化が必要。人間同士の関係構築が最も強く、ステファニーはこれを体現している」
――具体的なシナジーはクロスセルか。
「各論としてそれもあるが単純に"売ってくれ"ではコミュニケーションがちぐはぐになる。自前のコールセンターでステファニーのモデルをゼロベースで作ると大変だが、人材交流を含め、勉強させてもらえる」
――エバーライフは。
「媒体のバイイングは一緒にできるかもしれない」
――R&Yについて聞きたい。成長要因は。
「定期入会までのCRM、インバウンドのコールセンターを作り直した。定期転換率が向上したため、テレビはCSからBS、地上波に広げた。折込チラシも始め、ウェブの広告投資も5倍に増やした」
――商品別売上構成は。
「『プラセンタ100』が9割を占める」
――化粧品は今後LGの技術を活用する。
「ブランドコンセプトを見直しリニューアルする。LGの研究基盤もあり、ステファニーにもお願いできる」
――今期見通しは。
「64億円だが、計画を上回って推移する」
――100億円も目指せる位置にいる。
「重要なのは営業利益。効率よく安定成長することだが、強いて言えば5年で達成できればと考えている」
――成長戦略は。
「プラセンタの認知も高まり市場も拡大した。これまでは顕在ニーズの顧客を対象に媒体を絞り、効率よく新規を獲得していたが、今後は潜在顧客をいかに掘り起こすか。テレビのクリエイティブを変えつつ、エビデンスも蓄積する。4月には吸収性を高める特許技術を採用して商品もリニューアルする」
(竹尾社長の略歴)1981年生まれ。32歳。鹿児島大学法学部在学中の02年にブックオフコーポレーション入社し、03年9月にブックオフ鹿児島代表取締役に就任。04年9月に同大を卒業し、07年4月にブックオフアドバンス取締役に就任。08年3月にJIMOSに入社、マキアレイベル代謝生活倶楽部事業部事業部長を経て、11年10月にダーウィンズ入社。12年6月にR&Yに入社し取締役就任、同年11月から現職。