医薬品EC スイッチ直後はネット禁止?ネット事業者反発も
厚生労働省が設置する「一般用医薬品の販売ルール策定作業グループ」(作業グループ)と、「スイッチ直後品目等の検討・検証に関する専門家会合」(専門家会合)が、それぞれ検討結果をまとめ、10月8日に内容を公表した。これを受け厚労省では具体的な医薬品販売ルールの検討作業を推進、同月15日召集の臨時国会で関連法案を提出する考えだ。紆余曲折を続けてきた医薬品ネット販売のルール整備は、ようやく大詰めの段階に入ったが、専門家会合が取りまとめたスイッチ直後品目の販売時留意点については、ネット販売での取り扱い禁止を示唆するような内容となっており、これまでの議論の進め方の問題なども含め、ネット販売事業者側が反発するのは必至の情勢だ。
◆
「作業グループ」がまとめたネット販売に関するルール案は、「信頼できる薬局・薬店による販売」「専門家による関与の担保および購入者への適切な情報提供」「偽販売サイト・偽造医薬品への対応」を骨子とするもの。
正規の販売許可を持つ薬局・薬店が行うことを医薬品ネット販売の前提に、実店舗の開店時間が週30時間以上(かつ深夜時間帯以外で週15時間以上の開店)であること、対面での販売や相談応需が行えることなどを盛り込み、ネット販売のみを目的とした形式的な店舗の設置は認めないこととし、販売サイトについても、店舗の画像や薬剤師など専門家の氏名の表示などの条件を設ける。
また、専門家の関与を担保するため、ネット注文受け付け時間内の専門家常駐、テレビ電話などを活用した薬事監視の遂行のための仕組みの構築などに言及し、購入者側が提供情報の内容を理解したことを確認した上で販売することとしている。
このほかに、濫用の恐れがある医薬品の販売数量制限の設定、飲み合わせによる副作用の危険性を勘案しサイトへの医薬品のレコメンドやくちコミの掲載禁止や、使用期限切れ商品の出品や個人が出品の恐れがあるネット競売での販売禁止とするほか、偽サイト・偽造医薬品対策として、医薬品販売サイトのURL届出と厚労省ホームページでの掲載などを挙げる。
取りまとめまでの4回の会合では、店舗とネットの医薬品販売の条件のバランスを巡り、ネット販売事業者側構成員とドラッグストアや薬剤師など薬業関係の構成員の間で議論が過熱する場面もあったが、両者一定の合意の上でまとめられたものと言えるだろう。
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一方、一般用医薬品のうち、医療用から一般用に移行して間もない(4年の市販後調査・リスク評価期間を経過していない)スイッチ直後および劇薬指定の28品目の取り扱いに関する検討を進めてきた「専門家会合」でも、10月8日に開いた第3回会合で検討結果を取りまとめたが、問題ありと言わざるを得ない内容となっている。
「専門家会合」は、薬学・医薬の専門家を構成員がスイッチ直後品目の特性を検証し、販売時の留意点を取りまとめることを目的としたものだが、公開で行われた初会合および2回目の会合では、委員からネット販売での取り扱いを認めるべきではないという意見が続出。当該品目自体に関する発言は皆無に近く、販売手法の是非に関する議論に終始した。
この問題については、「ルール策定作業グループ」の場で新経済連盟顧問の國重惇史構成員が再三にわたり指摘し、規制改革会議でも政府に対し専門家会合での議論の是正を求める意見書、日本オンラインドラッグ協会(JODA)が関係閣僚宛てに要望書を提出している。だが、公開の場でこれらの指摘を反映した議論が行われないまま、3回目の会合でスイッチ直後品目の販売時留意点を取りまとめた形だ。
「専門家会合」がまとめた報告書は、専門家である薬剤師の関与を重視した内容となっているのが特徴だ。
これは、スイッチ直後品目は、薬剤師による対面販売が不可欠という、会合での各委員の意見を反映したものと言え、使用者からの情報収集および情報提供、使用方法に関する指導などでの慎重な対応を求めるとともに、使用者が指導内容を理解したことを確認した上で販売することが必要との見方を提示。また、使用者以外の代理人への販売、症状が出ていない段階での常備薬としての購入を認めるべきではなく、購入希望があった場合には、受診勧奨や類似した効能の別の一般用医薬品を勧めることが適当とする。
一方、問題の"ネット販売"については、直接的な記述は一切ない。これは、規制改革会議などの指摘を意識したものと言えるが、飽くまでも書きぶりの問題で、ネット販売は認められないという「専門家会合」の意思が随所に感じられる。
具体的には、「"薬剤師と購入者の双方向での柔軟かつ臨機応変なやり取り"を通じて、使用者の状態を確認する」、使用者が自身の状態を正確に申告できない場合には、「薬剤師が知識・経験をもって"直接判断"することが必要」、一般用医薬品としてのリスクが判然としない当該品目について「"広く大量に"購入できるような形や簡便に購入できる形での流通は避けるべき」などの表現。暗にネット販売での取り扱いを認めないとも受け取れる微妙な言い回しなのだ。
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「専門家会合」での検討結果の公表を受けた一般紙やテレビの報道も、概ねネット販売でのスイッチ直後品目の取り扱い禁止という内容で、中には、政府がスイッチ後3年間の安全性評価で問題のない商品に限ってネット販売を認める方向で調整に入ったとする報道もあるが、ルールの検討作業を進める厚労省では、「(専門家会合の)報告書でネット販売禁止とは明言していない」(医薬食品局総務課)とし、飽くまでも方向性はまだ定まっていないとのスタンス。
因みに、スイッチから3年が経過した当該品目のネット販売容認に関する報道については、専門家会合の報告書で、副作用リスクの早期特定(現行の評価期間は4年)の検討について触れられていることを踏まえたもののようだ。
一方、JODAでは、「ルール策定作業グループ」および「専門家会合」が報告書をまとめたことを受けコメントを公表。一般用医薬品の範囲が曖昧なまま「作業グループ」の最終報告書がまとめられたことを遺憾とするとともに、「専門家会合」が取りまとめたスイッチ直後品目の特性と留意点を踏まえ、作業グループで販売ルールに関する検討を再開すべきとする。
医療用に準じた慎重な販売が求められるスイッチ直後品目は、通常の一般用医薬品とは別物というのが「専門家会合」の見方だが、仮に対面の実店舗とネット販売に格差をつけ、ネットに行き過ぎた縛りをかけるような内容のルールとなれば、規制改革会議やネット販売事業者などが反発するのは必至。厚労省が作成する一般用医薬品販売ルールの内容によっては、さらに混乱が広がる可能性もある。
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「作業グループ」がまとめたネット販売に関するルール案は、「信頼できる薬局・薬店による販売」「専門家による関与の担保および購入者への適切な情報提供」「偽販売サイト・偽造医薬品への対応」を骨子とするもの。
正規の販売許可を持つ薬局・薬店が行うことを医薬品ネット販売の前提に、実店舗の開店時間が週30時間以上(かつ深夜時間帯以外で週15時間以上の開店)であること、対面での販売や相談応需が行えることなどを盛り込み、ネット販売のみを目的とした形式的な店舗の設置は認めないこととし、販売サイトについても、店舗の画像や薬剤師など専門家の氏名の表示などの条件を設ける。
また、専門家の関与を担保するため、ネット注文受け付け時間内の専門家常駐、テレビ電話などを活用した薬事監視の遂行のための仕組みの構築などに言及し、購入者側が提供情報の内容を理解したことを確認した上で販売することとしている。
このほかに、濫用の恐れがある医薬品の販売数量制限の設定、飲み合わせによる副作用の危険性を勘案しサイトへの医薬品のレコメンドやくちコミの掲載禁止や、使用期限切れ商品の出品や個人が出品の恐れがあるネット競売での販売禁止とするほか、偽サイト・偽造医薬品対策として、医薬品販売サイトのURL届出と厚労省ホームページでの掲載などを挙げる。
取りまとめまでの4回の会合では、店舗とネットの医薬品販売の条件のバランスを巡り、ネット販売事業者側構成員とドラッグストアや薬剤師など薬業関係の構成員の間で議論が過熱する場面もあったが、両者一定の合意の上でまとめられたものと言えるだろう。
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一方、一般用医薬品のうち、医療用から一般用に移行して間もない(4年の市販後調査・リスク評価期間を経過していない)スイッチ直後および劇薬指定の28品目の取り扱いに関する検討を進めてきた「専門家会合」でも、10月8日に開いた第3回会合で検討結果を取りまとめたが、問題ありと言わざるを得ない内容となっている。
「専門家会合」は、薬学・医薬の専門家を構成員がスイッチ直後品目の特性を検証し、販売時の留意点を取りまとめることを目的としたものだが、公開で行われた初会合および2回目の会合では、委員からネット販売での取り扱いを認めるべきではないという意見が続出。当該品目自体に関する発言は皆無に近く、販売手法の是非に関する議論に終始した。
この問題については、「ルール策定作業グループ」の場で新経済連盟顧問の國重惇史構成員が再三にわたり指摘し、規制改革会議でも政府に対し専門家会合での議論の是正を求める意見書、日本オンラインドラッグ協会(JODA)が関係閣僚宛てに要望書を提出している。だが、公開の場でこれらの指摘を反映した議論が行われないまま、3回目の会合でスイッチ直後品目の販売時留意点を取りまとめた形だ。
「専門家会合」がまとめた報告書は、専門家である薬剤師の関与を重視した内容となっているのが特徴だ。
これは、スイッチ直後品目は、薬剤師による対面販売が不可欠という、会合での各委員の意見を反映したものと言え、使用者からの情報収集および情報提供、使用方法に関する指導などでの慎重な対応を求めるとともに、使用者が指導内容を理解したことを確認した上で販売することが必要との見方を提示。また、使用者以外の代理人への販売、症状が出ていない段階での常備薬としての購入を認めるべきではなく、購入希望があった場合には、受診勧奨や類似した効能の別の一般用医薬品を勧めることが適当とする。
一方、問題の"ネット販売"については、直接的な記述は一切ない。これは、規制改革会議などの指摘を意識したものと言えるが、飽くまでも書きぶりの問題で、ネット販売は認められないという「専門家会合」の意思が随所に感じられる。
具体的には、「"薬剤師と購入者の双方向での柔軟かつ臨機応変なやり取り"を通じて、使用者の状態を確認する」、使用者が自身の状態を正確に申告できない場合には、「薬剤師が知識・経験をもって"直接判断"することが必要」、一般用医薬品としてのリスクが判然としない当該品目について「"広く大量に"購入できるような形や簡便に購入できる形での流通は避けるべき」などの表現。暗にネット販売での取り扱いを認めないとも受け取れる微妙な言い回しなのだ。
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「専門家会合」での検討結果の公表を受けた一般紙やテレビの報道も、概ねネット販売でのスイッチ直後品目の取り扱い禁止という内容で、中には、政府がスイッチ後3年間の安全性評価で問題のない商品に限ってネット販売を認める方向で調整に入ったとする報道もあるが、ルールの検討作業を進める厚労省では、「(専門家会合の)報告書でネット販売禁止とは明言していない」(医薬食品局総務課)とし、飽くまでも方向性はまだ定まっていないとのスタンス。
因みに、スイッチから3年が経過した当該品目のネット販売容認に関する報道については、専門家会合の報告書で、副作用リスクの早期特定(現行の評価期間は4年)の検討について触れられていることを踏まえたもののようだ。
一方、JODAでは、「ルール策定作業グループ」および「専門家会合」が報告書をまとめたことを受けコメントを公表。一般用医薬品の範囲が曖昧なまま「作業グループ」の最終報告書がまとめられたことを遺憾とするとともに、「専門家会合」が取りまとめたスイッチ直後品目の特性と留意点を踏まえ、作業グループで販売ルールに関する検討を再開すべきとする。
医療用に準じた慎重な販売が求められるスイッチ直後品目は、通常の一般用医薬品とは別物というのが「専門家会合」の見方だが、仮に対面の実店舗とネット販売に格差をつけ、ネットに行き過ぎた縛りをかけるような内容のルールとなれば、規制改革会議やネット販売事業者などが反発するのは必至。厚労省が作成する一般用医薬品販売ルールの内容によっては、さらに混乱が広がる可能性もある。