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日本ダイレクトメール協会の佐藤暢晃会長に聞く、DM業界の現状

2013年 9月 5日 17:46

DMは意思決定促すメディア

061.jpgのサムネール画像 今年4月に一般社団法人として新たなスタートを切った日本ダイレクトメール協会(DM協会)。デジタルメディアが拡大する中、紙のDMは顧客とのコミュニケーションツールとしても再評価されているようだ。5月に新会長に就任した佐藤暢晃氏(=写真、凸版印刷取締役)にDM業界の現状などについて聞いた。(聞き手は本紙記者・神崎郁夫)

――DMの現状は。

 「インターネット広告の広がりで紙のDMは苦戦していると思われがちだが、実際には日本の総広告費に占めるDMのシェアはこの10年間、7%前後で推移しており、非常に健闘している」

――DMが健闘している理由は。

 「DMは消費者に意思決定を促すことができるメディアだ。以前はバラマキのメディアと揶揄された時期もあったが、今では顧客とコミュニケーションがとれ、かつ販売に直結するメディアとして見直されている」

――ネット企業がDMを使うケースもある。

 「ネット企業であってもアナログのメディアに期待している。電子出版の普及に伴って雑誌は減っているものの、書籍は健闘している。これは、リアルの世界とは別のマーケットがウェブ上にあったということ。広告にも同じようなことが言えるのではないか」

――DM業界の環境は悪くない。

 「最近では、通販事業やポイントカードサービスなどで企業が大量の顧客データを持ち始めている。10万~100万人の会員を獲得したら、DMを送らないともったいないということになる。ただ、近年はマーケティングの現場がネット広告に注目してきたことで、DMへの理解度が低いケースも散見される」

――DMを送るには顧客情報が不可欠だ。

 「ポイントカードサービスの拡大や決済手段の多様化で顧客属性がとりやすくなっている。年齢や住所、職業、購買履歴などさまざまな情報を蓄積することで、企業は個々の消費者に効率的なアプローチができるし、ヒット率も高まる」

――通販業界の拡大も追い風に。

 「通販企業もDMを見直しており、量的、質的にも向上している。30年近く実施している『日本DM大賞』でも、従来の入賞企業と言えばベネッセさんくらいだったが、今では中小も含めて通販実施企業の優秀なDM作品が増えている。とくに、通販企業は顧客の理解度が高く、重要顧客や新規客、休眠客など、明確にセグメント分けしてDMを送付している」


――消費者とのコミュニケーションツールは増えているが。

 「消費者は情報を受け取るだけではなく、発信もするというコミュニケーションのとり方に変化している。SNSの利用者が増えたことで、よりDMを生かせるようになっている。DMも昔とは役割が変わってきている。例えば、情報の盛り上がりをSNSで作り、コアのターゲットには直接届くDMを送るなど、デジタルメディアと組み合わせたDMの活用法も出てきている」


――DMの実態調査を実施した。

 「従来、DMは商品の購入や資料請求といった計測しやすいレスポンス率で評価され、1~2%しか効果のないメディアと言われてきた。しかし、昨年12月に『DMメディア実態調査』を行ったところ、DMを見て実店舗に行ったり、周りの人に話したり、ネットでその商品を調べるなど、何らかの行動を起こした消費者が16%いることが分かった。これまで見逃されていた効果がDMにはあり、しかも、6人に1人がくちコミや来店、ウェブ検索とクロスメディア的な行動を起こしているということだ」

――今年4月に一般社団法人として再スタートした。

 「これまでは公共性を重視してきたが、今後は会員企業のサポートに大手を振って取り組めるようになった。DMの調査・研究はもちろん、世界の先進的なDM事例を紹介したり、DMのエキスパートを育てる研修会や企業向けの派遣型DM講座などを充実させたい。DM協会には、通販企業などの小売りに加え、印刷業、広告代理店、テレマーケティング、紙製品製造業など多種多様な業種が集まっている。各業界で異なる課題もあるが、異業種交流を重ねることで、新しいアイデアも出てくる。ICT革命の時代にふさわしいDMの"あり方"を確立し、存在感を高めていきたい」

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