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【ニュースの断層】LINE 秋に仮想モール開始、BtoCとCtoCに対応

2013年 8月29日 10:16

 2-1.jpgスマートフォン向け無料通話・メールアプリを展開するLINEは今秋をメドに仮想モールの運営を開始する。スマホアプリ「LINE(ライン)」は国内に4700万人以上のユーザーを抱えており、その顧客基盤を通販に生かす考え。計画では企業が一般ユーザーに向けて商品を販売するBtoCと、ユーザー間で商品を売買するCtoCの両方に対応したサービスを展開する。楽天やアマゾン、ヤフーなど大手による競争が激化する仮想モール事業に参入することになるが、果たしてLINEの勝算は。



 「誰もが売り手と買い手になれる。すぐ出品できる。すぐ買える。そうしたスマートフォン時代に合ったLINEのコミュニケーションを生かすような新しいコマースサービスを展開していく」。8月21日、千葉県浦安市で開かれたLINEのカンファレンスの会場で同社の舛田淳執行役員はこう述べた。

 開始するのは「LINE MALL(ラインモール)」。企業が出店するBtoCだけでなく、ユーザー同士が売買を行うCtoCも行うという。「出店数や出品数については、まさに今準備をしているところ」(舛田執行役員)とのことで、すでに開発も大詰め段階に入っているようだ。

 詳細については明らかにしていないが「スマートフォンならではの操作性であるとか、誰でも・いつでも・どこでも出品して買うことができるカジュアルさ。こういったところについては力を入れていきたい」(同)とする。

 関係者によると、計画では9月末か10月上旬のスタートを目指しているものの、予定が遅れる可能性もありえるという。現状はLINEの公式アカウントや、廉価版のビジネスアカウントである「LINE@」にアカウントを持つ企業などに出店要請を行っている状況のようだ。

 「ラインモール」は、基本的に出店料などはすべて無料で、販売額の10%をLINE側に手数料として支払う仕組みとなるもよう。商品の発送などは店舗側が行うことになりそうだ。

 モール内で独自ポイントを発行する計画で、当面は「ラインモール」だけの利用にとどまるとみられる。そのため「ポイントでスタンプ(絵文字の一種)やゲームの購入ができればユーザーの利用も進むのだが」という意見も出店を検討している企業からは出ている。

 舛田執行役員は「サービス開始時に皆さんに在庫がないな、商品がないなと思っていただかないレベルにはしていく」とする。

 ただ、楽天を筆頭に仮想モール事業は競争が激化している。最近も、リクルートが「ポンパレモール」を開始している。果たしてLINEに勝算はあるのだろうか。

 LINEの森川亮社長は「初めての取り組みなので課題だらけだが、勝ち負けではなくて新しい価値を提供したいと思っている。それに関する自信はある」と意気込む。舛田執行役員も「コマース自体、売買自体が、コミュニケーションだと思っている。そういった部分で『LINE』の強みを生かせる」とする。

 なお、海外での通販展開は現状、検討していないとのことで「まずは国内で」(森川社長)行っていく方針。



 今回の仮想モールの展開だが「LINE」が抱える大量のユーザーに訴求することによって新たな商圏が生まれることが期待される。しかし、出店を検討する企業の担当者からは厳しい意見も聞かれる。

 「ユーザー側にも店舗側にもプラスアルファの価値が見えてこない」「通販を行うにはメルマガなどの売り込みが必要だが、ラインモールでどこまでそれができるのかが未知数」「営業はLINE独自でやっているが、彼らはコマースの経験がなく説得力に欠ける」「そもそもリクルートのポンパレモールとどう違うのかわからない」「新しくモールに出店する場合、人的リソースと在庫管理がネックになる。それについてLINE側はどのくらい考慮しているのだろうか」──といった具合に、現時点で様々な声が飛び交っている。

 とはいえ、今回のモール構想はLINEとしても軽々しく発表したわけではない。「LINEでコマースをやるということ自体、一年前からどういう形であるべきかを悩んでいた。ようやく我々として満足がいく答えができたので今日皆さんに発表したいと考えた」。カンファレンスの最後に舛田執行役員はコマース事業への参入についてこう説明した。

 細かいビジネスモデルなどについて今後の発表が待たれるが、スマホアプリで勢いに乗るLINEが手がけるコマース事業がどういうサービスになるのか注目したいところだ。

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