エーザイは昨年12月、通販基幹システムを刷新した。新規獲得のCPOが中心だったこれまでの戦略展開を、長期的な指標に基づくものに転換。新システム活用で、顧客のLTV(ライフ・タイム・バリュー)を軸とした通販事業の確立を目指す。
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「船頭がいないような状態で"勘"頼りに事業計画が進んでいた」。エーザイの外処圭介薬粧事業部新事業統括部部長は、通販事業立ち上げ当初をこう振り返る。
エーザイは2010年に健康食品通販に参入。当初、「ユベラ贅沢ポリフェノール」のサンプル(15日分、500円)を入口に、ダイレクトメールや電話によるインアウト(インバウンド時の引き上げ)で定期入会に誘導する戦略を取っていた。
急拡大を求められていた通販事業は大幅な投資を行い、大手代理店と組んでテレビや新聞、チラシ、ウェブなど全方位で広告を展開。新規獲得は堅調に推移した。だが一方で、バックオフィスで生じたひずみは徐々に大きくなっていた。
「新規獲得は進むものの、その顧客が何回継続しているか。実際利益が出てビジネスとして成立しているかが不透明であった」(外処氏)。理由は、顧客管理が長期的視点のものでなかったことにあった。
後々分かったことだが、通販立ち上げに際して導入した顧客管理システムは単品通販向きのものでなく、新規獲得のCPOや定期引き上げ率を管理する程度だった。
だが、健食通販では、リピート分析がカギを握る。「ユベラ贅沢ポリフェノール」の定期入会は、2回目、3回目の継続率がより重要になるが、長期的な指標をリアルタイムに把握できるシステムとはなっていなかった。このため媒体評価は、新規獲得のCPOに加え、"同梱は継続率が高い"など、地道な情報交換で得られた情報を基にした"勘"頼りの判断が中心だった。
「例えば、『500円でサンプル提供』を強く打ち出したオファー訴求であれば、新規は獲得できる。だが、コールセンターにおけるインアウトが行いにくくなり、『定期』ではなく『お試し』ばかり取れてしまう」(同)。何が"LTV"の観点から重要か分からず、長期的視野に立った戦略が打てずにいた。
外部の専門業者にLTV等の長期指標の分析を依頼してもいたが、「受け渡しデータの整備でコストが生じ、業務も圧迫していた。他社に手のうちをさらすことが良くないとは思いつつ、依存せざるを得なかった」(同)という。データ分析に数週間かかるケースもあり、タイムラグが生じることでスピード感を持った戦略判断ができずにいた。危機感を募らせる中で決断したのがシステムの刷新だ。
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エーザイでは、新たに東通メディアが提供する通販基幹システム「通販マーケッター」を採用。新システムの導入は、エーザイの通販顧客管理を大きく変えることになる。
例えば、これまで"勘"頼りだった、媒体評価。2回目以降の定期CPOを日常的に管理できるようになったことで、広告出稿の判断に明確なルールを持てるようになり、長期的に高効率なウェブやインフォマーシャルを中心とした展開にシフトしている。
外部の支援事業者依存の体制を脱し、主体的な戦略を打てるようになった。
定期顧客の管理を徹底したことで売り上げ予測の精度も向上。マーケティング費用を考慮した2カ月後の売り上げ予測も可能になり、離脱率が高い月など、どのセグメントの顧客に購買を喚起する施策を展開するべきか、戦略を打つべき方向性が明確になった。外注していたデータ分析や、システム外で管理していた約300パターンに上る同梱物もシステム上で管理できるようになり、バックオフィスの費用も月数十万ほど抑えることが可能になった。
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競争環境が激化する中、LTVを軸にした展開はより重要になってきている。エーザイでは、現在、主力の「ユベラ」シリーズが60代を中心に約7割、「チョコラ」シリーズが40代後半を中心に約3割の売り上げを占める。今後、製品ラインアップを強化することにより、クロスセルやアップセルによる客単価向上と、継続率を高める取り組みを進める。
「船頭がいないような状態で"勘"頼りに事業計画が進んでいた」。エーザイの外処圭介薬粧事業部新事業統括部部長は、通販事業立ち上げ当初をこう振り返る。
エーザイは2010年に健康食品通販に参入。当初、「ユベラ贅沢ポリフェノール」のサンプル(15日分、500円)を入口に、ダイレクトメールや電話によるインアウト(インバウンド時の引き上げ)で定期入会に誘導する戦略を取っていた。
急拡大を求められていた通販事業は大幅な投資を行い、大手代理店と組んでテレビや新聞、チラシ、ウェブなど全方位で広告を展開。新規獲得は堅調に推移した。だが一方で、バックオフィスで生じたひずみは徐々に大きくなっていた。
「新規獲得は進むものの、その顧客が何回継続しているか。実際利益が出てビジネスとして成立しているかが不透明であった」(外処氏)。理由は、顧客管理が長期的視点のものでなかったことにあった。
後々分かったことだが、通販立ち上げに際して導入した顧客管理システムは単品通販向きのものでなく、新規獲得のCPOや定期引き上げ率を管理する程度だった。
だが、健食通販では、リピート分析がカギを握る。「ユベラ贅沢ポリフェノール」の定期入会は、2回目、3回目の継続率がより重要になるが、長期的な指標をリアルタイムに把握できるシステムとはなっていなかった。このため媒体評価は、新規獲得のCPOに加え、"同梱は継続率が高い"など、地道な情報交換で得られた情報を基にした"勘"頼りの判断が中心だった。
「例えば、『500円でサンプル提供』を強く打ち出したオファー訴求であれば、新規は獲得できる。だが、コールセンターにおけるインアウトが行いにくくなり、『定期』ではなく『お試し』ばかり取れてしまう」(同)。何が"LTV"の観点から重要か分からず、長期的視野に立った戦略が打てずにいた。
外部の専門業者にLTV等の長期指標の分析を依頼してもいたが、「受け渡しデータの整備でコストが生じ、業務も圧迫していた。他社に手のうちをさらすことが良くないとは思いつつ、依存せざるを得なかった」(同)という。データ分析に数週間かかるケースもあり、タイムラグが生じることでスピード感を持った戦略判断ができずにいた。危機感を募らせる中で決断したのがシステムの刷新だ。
エーザイでは、新たに東通メディアが提供する通販基幹システム「通販マーケッター」を採用。新システムの導入は、エーザイの通販顧客管理を大きく変えることになる。
例えば、これまで"勘"頼りだった、媒体評価。2回目以降の定期CPOを日常的に管理できるようになったことで、広告出稿の判断に明確なルールを持てるようになり、長期的に高効率なウェブやインフォマーシャルを中心とした展開にシフトしている。
外部の支援事業者依存の体制を脱し、主体的な戦略を打てるようになった。
定期顧客の管理を徹底したことで売り上げ予測の精度も向上。マーケティング費用を考慮した2カ月後の売り上げ予測も可能になり、離脱率が高い月など、どのセグメントの顧客に購買を喚起する施策を展開するべきか、戦略を打つべき方向性が明確になった。外注していたデータ分析や、システム外で管理していた約300パターンに上る同梱物もシステム上で管理できるようになり、バックオフィスの費用も月数十万ほど抑えることが可能になった。
競争環境が激化する中、LTVを軸にした展開はより重要になってきている。エーザイでは、現在、主力の「ユベラ」シリーズが60代を中心に約7割、「チョコラ」シリーズが40代後半を中心に約3割の売り上げを占める。今後、製品ラインアップを強化することにより、クロスセルやアップセルによる客単価向上と、継続率を高める取り組みを進める。