日本生活協同組合連合会(日生協=本部・東京都渋谷区、浅田克己社長)は、今年度からスタートした第12次中期計画(13~15年度)の達成に当たり、収益性の高い通販事業が重要なカギとなっている。前回の第11次中計では、商品力の強化と紙媒体の展開の工夫で、供給高が伸長するなど成果を収めた。一方、ネット販売については固有の課題が幾つかあり、利用は一部に限られているのが実情だが、情報提供などの面で組合員同士の連帯感を活かした独自の展開を追求する構えだ。
前年度の既存組合員のweb受注者数(ユニークユーザー)は23万5000人。受注金額(組価ベース)は約30億円になる。前年比で約25%増と伸びているが、通販事業全体の供給高が500億円(組価ベース)規模であることを考えると水準は低く、サイト来訪者自体が少ないという。
この背景にあるのは、組合員の間で食品や日用雑貨などのチラシで採用するOCR注文用紙による注文が根付いていること。実際、食品宅配や通販など無店舗系の事業全体としてもOCR用紙注文が圧倒的に多く、中心層となる50~60代の団塊世代の組合員からすると、「(長年利用してきた)OCR注文用紙の方が簡単なのだと思う」(通販本部の小林暁カタログ供給企画部部長)。
通販事業では、中心層となる団塊世代組合員の利用でベースとなる売り上げを作り、サブターゲットとなる30~40代組合員の取り込みを図るというのが基本戦略。その中でも、売り上げボリュームが大きい団塊世代組合員の取りこぼしを防ぐことが最重要課題となっている。このため現段階では、ネットよりも紙媒体を優先して施策を考えざるを得ないわけだ。
一方で、30~40代組合員の取り込みを考えた場合、ネット販売の強化・拡充は必須課題。これについては日生協でも意識しており、今年1月には商品の検索や受注、くちコミの照会などができる「くらしと生協」のスマートフォンサイトを立ち上げている。
現状、「くらしと生協」のネット販売の中でスマホ経由の売上構成比は10%程度。立ち上がりは、「ガラケーよりも圧倒的にいい」(同)としており、さらにスマホ経由の売り上げが拡大すると予測。
会員生協でも、食品宅配の受注などでスマホ対応に乗り出しているところがあり、「『くらしと生協』としてそれに乗れる部分はあると思う」(同)と、会員生協と連携した展開も視野に入れているようだ。
また、ネットについては、販促やコミュニケーションツールとして活用する方向で取り組みを推進。すでに商品を購入した組合員にくちコミの書き込みを依頼するメールを送信するなどの施策を行っているが、「くらしと生協」サイトでも、組合員がくちコミを見て購入する流れができ始めているという。
もともと日生協では、商品購入者に取材して評価を紙媒体に掲載しており、販促効果を得ている。その強みは「どこの生協の組合員さんかということがわかる」(同)こと。特に生協の場合、同じ組合員同士という連帯意識から、くちコミに対する信頼感が高いと言える。
この傾向を踏まえ、日生協でも「くちコミがくちコミを呼び、さらに商品を購入してもらうという方向で取り組んでいく」(同)意向。ネット上で組合員の声を収取し、商品の開発や改善に役立てることも視野に入れる。
紙媒体の展開で成果をおさめている日生協の通販事業だが、課題は、利用率の低いネット販売の強化。取り組みの順序としては、「生協の利用動機として大きい食品で組合員との関係を構築した後に(衣料品やインテリアなどの)通販になると思う」(同)とするが、組合員同士の連帯感を基盤にした生協ならではのネット販売の展開を通じ、通販事業全体の拡大を図る考えのようだ。(つづく)