前回に引き続き、ジュピターショップチャンネル(JSC)の篠原淳史社長の前期の振り返りと今期の目標などについて聞いた。
◇
――昨夏に米投資ファンドのベインキャピタル・パートナーズが出資(※現在、JSC株式を住商とベインで50%ずつ保有)した。ベインから人員の派遣はあったのか。
「昨夏の出資後、『新成長戦略室』という部門を新設し、当該部門の室長としてベインから執行役員が着任した。彼と現場がタッグを組んで様々なデータ分析や計画の立案を行ってきた。そして今年3月にはベインから矢原史朗氏が代表取締役副社長として着任した。矢原は(ベインが出資する)ベルシステム24の元社長を務めていた人物だ」――ベインが出資したことで何か変化は。
「ベインは非常に力のあるファンドであり、様々な経験、色々なディールを行っており、出資した企業にもハンズオンで経営にも携わってきている。そうした中で培ってきたノウハウはやはり目を見張るものがある。彼らが生業としている企業への投資の際に行う企業データの分析の手法なども活用して改めて当社の様々なデータを見直し、議論を戦わせながら、予算や計画を作成してきたわけだが、さすがにすごいなと感じた。これからもともに進んでいきたいと思っている」
――海外展開についてはどうか。ベインが出資した狙いの1つもアジアへの事業展開が目的だったはず。今春に住商とともにタイで現地企業と合弁で、24時間型のテレビショッピング専門チャンネルを設立したが。
「タイでの事業はベインと提携する以前から進めていた話で関係はない。今後、ベインの様々な関係やディールの延長上で海外進出のきっかけになるような案件が出てくればそれはそれで期待しているがまだ具体的なものがあるというわけではない」――タイの進捗は。
「現地法人の社長には先々代(住友商事の顧問でJSCの前々社長の大橋茂氏)が就任して常勤として事業の立ち上げを進めている。非常にハードだと思うが、先々代のリーダーシップとJSC立ち上げを知る8人が現地に行き、スピード感を持って事業開始に向け順調に進んでいる。お陰様でタイでの注目度も高い。タイでは失業率は非常に低く採用活動は非常に難しいと思っていたが、注目度がある分、よい人が来てくれており、非常に活力があるチームになってきている。私も2度ほど、現地に行ったが、勢いを感じたし『これはいける』という雰囲気が肌で感じられた。ようやくスタジオもでき、8月中にはテスト放送を開始できると思う。タイ経済は一定の伸びを示しており、小売りのレベル感はすごくあると思う。その中で我々の業態が何かを成し遂げられるだろうと期待している」
――タイはすでに韓国勢がテレビ通販では先行している。「TVディレクト」など現地のテレビ通販事業者も売り上げを伸ばしているようだ。
「我々はまず日本(JSC)のベストセラーを持っていく予定であり、そうなると良いものをそれなりのお値段でということになる。つまり、ターゲットは比較的、可処分所得の高い層ということになるわけだが、これでおのずと韓国勢や現地企業と差別化もできると思う」
――今後の海外進出の方向性は。
「1つは24時間型のテレビ通販が行える専門チャンネルを獲得できること。もう1つは小売りは地場産業であると私は思っているため、今回のタイで『セントラル』と『サハ』という現地のパートナーを得られたように提携できるパートナーがいる国が条件だ。そうした国であれば検討していきたいし、もちろん常に調査しているところだ」
――今期の見通しは。
「今期のスタートは悪くない。去年からのよい流れで第1四半期(4~6月)は非常に順調で売上高も前年を上回って推移している。もちろん通期でも増収増益を見込んでいる。売上高は少なくとも1300億円は超えてくるだろう。今期も商品力や番組力など基本を強化して着実に業績を積み上げていきたい」
――今期、特に強化していく商品カテゴリーなどはあるか。
「特にない。各カテゴリーではそれぞれそれなりにこれまで実績を積んできた。毎年、その時々でそれぞれのカテゴリーでアップダウンはあると思う。例えば2011年度はアパレルはあまりよくなかったが、2012年は回復して好調だったというようにだ。山谷はあろうかと思うが、その山谷が重なって、全体が増えていくことになると思う。その時に下がっているカテゴリをどのようにテコ入れするか。逆によいものはさらにどうしたら伸ばすことができるか。個別に対応できればと思う」――番組的にはどうか。以前は若年層や40代女性層を意識した番組作りを強化していた時期もあったが今期はいかがか。
「番組についても、とりあえずは今の流れの中で、軌道に乗ってきたものについて力を入れていく。好調な『大人ガールズプロジェクト』や『ワールドギャラリー』などは引き続き強化していきたいし、また、日本各地の名産品を紹介する『日本を見つけよう』も継続的にやっていきたい」――中長期的な業績目標を伺いたい。
「通販業界でいうと、1つの壁は1500億円だと思う。この壁は越えていかなければいけないと思っている。この先はテレビ通販という囲いもなくなり、色々と様変わりしていく中で変化に柔軟に対応していく必要があると思う。中期計画と足元の年度予算をしっかり毎年固めながら、有力他社とのコラボレーションなどを進めつつ、これから先も臨んでいきたいと思っている」
(おわり)
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――昨夏に米投資ファンドのベインキャピタル・パートナーズが出資(※現在、JSC株式を住商とベインで50%ずつ保有)した。ベインから人員の派遣はあったのか。
「昨夏の出資後、『新成長戦略室』という部門を新設し、当該部門の室長としてベインから執行役員が着任した。彼と現場がタッグを組んで様々なデータ分析や計画の立案を行ってきた。そして今年3月にはベインから矢原史朗氏が代表取締役副社長として着任した。矢原は(ベインが出資する)ベルシステム24の元社長を務めていた人物だ」
――ベインが出資したことで何か変化は。
「ベインは非常に力のあるファンドであり、様々な経験、色々なディールを行っており、出資した企業にもハンズオンで経営にも携わってきている。そうした中で培ってきたノウハウはやはり目を見張るものがある。彼らが生業としている企業への投資の際に行う企業データの分析の手法なども活用して改めて当社の様々なデータを見直し、議論を戦わせながら、予算や計画を作成してきたわけだが、さすがにすごいなと感じた。これからもともに進んでいきたいと思っている」
――海外展開についてはどうか。ベインが出資した狙いの1つもアジアへの事業展開が目的だったはず。今春に住商とともにタイで現地企業と合弁で、24時間型のテレビショッピング専門チャンネルを設立したが。
「タイでの事業はベインと提携する以前から進めていた話で関係はない。今後、ベインの様々な関係やディールの延長上で海外進出のきっかけになるような案件が出てくればそれはそれで期待しているがまだ具体的なものがあるというわけではない」
――タイの進捗は。
「現地法人の社長には先々代(住友商事の顧問でJSCの前々社長の大橋茂氏)が就任して常勤として事業の立ち上げを進めている。非常にハードだと思うが、先々代のリーダーシップとJSC立ち上げを知る8人が現地に行き、スピード感を持って事業開始に向け順調に進んでいる。お陰様でタイでの注目度も高い。タイでは失業率は非常に低く採用活動は非常に難しいと思っていたが、注目度がある分、よい人が来てくれており、非常に活力があるチームになってきている。私も2度ほど、現地に行ったが、勢いを感じたし『これはいける』という雰囲気が肌で感じられた。ようやくスタジオもでき、8月中にはテスト放送を開始できると思う。タイ経済は一定の伸びを示しており、小売りのレベル感はすごくあると思う。その中で我々の業態が何かを成し遂げられるだろうと期待している」
――タイはすでに韓国勢がテレビ通販では先行している。「TVディレクト」など現地のテレビ通販事業者も売り上げを伸ばしているようだ。
「我々はまず日本(JSC)のベストセラーを持っていく予定であり、そうなると良いものをそれなりのお値段でということになる。つまり、ターゲットは比較的、可処分所得の高い層ということになるわけだが、これでおのずと韓国勢や現地企業と差別化もできると思う」
――今後の海外進出の方向性は。
「1つは24時間型のテレビ通販が行える専門チャンネルを獲得できること。もう1つは小売りは地場産業であると私は思っているため、今回のタイで『セントラル』と『サハ』という現地のパートナーを得られたように提携できるパートナーがいる国が条件だ。そうした国であれば検討していきたいし、もちろん常に調査しているところだ」
――今期の見通しは。
「今期のスタートは悪くない。去年からのよい流れで第1四半期(4~6月)は非常に順調で売上高も前年を上回って推移している。もちろん通期でも増収増益を見込んでいる。売上高は少なくとも1300億円は超えてくるだろう。今期も商品力や番組力など基本を強化して着実に業績を積み上げていきたい」
――今期、特に強化していく商品カテゴリーなどはあるか。
「特にない。各カテゴリーではそれぞれそれなりにこれまで実績を積んできた。毎年、その時々でそれぞれのカテゴリーでアップダウンはあると思う。例えば2011年度はアパレルはあまりよくなかったが、2012年は回復して好調だったというようにだ。山谷はあろうかと思うが、その山谷が重なって、全体が増えていくことになると思う。その時に下がっているカテゴリをどのようにテコ入れするか。逆によいものはさらにどうしたら伸ばすことができるか。個別に対応できればと思う」
――番組的にはどうか。以前は若年層や40代女性層を意識した番組作りを強化していた時期もあったが今期はいかがか。
「番組についても、とりあえずは今の流れの中で、軌道に乗ってきたものについて力を入れていく。好調な『大人ガールズプロジェクト』や『ワールドギャラリー』などは引き続き強化していきたいし、また、日本各地の名産品を紹介する『日本を見つけよう』も継続的にやっていきたい」
――中長期的な業績目標を伺いたい。
「通販業界でいうと、1つの壁は1500億円だと思う。この壁は越えていかなければいけないと思っている。この先はテレビ通販という囲いもなくなり、色々と様変わりしていく中で変化に柔軟に対応していく必要があると思う。中期計画と足元の年度予算をしっかり毎年固めながら、有力他社とのコラボレーションなどを進めつつ、これから先も臨んでいきたいと思っている」
(おわり)