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ヤマト運輸 IT活用し付加価値サービス、第7次システムを導入

2010年 2月 4日 17:45

071.jpg ヤマト運輸は、新たに導入した情報システム「第7次NEKOシステム」を足掛かりに、顧客視点の事業展開を加速させる。1月27日に開いた会見で明らかにしたもので、全ての取引情報のデジタル化をキーワードにIT戦略を推進。荷主企業や個人顧客の懐に入り込んだ独自サービスの展開を構想する。現状、宅配便市場では運賃の低価格競争が常態化しているが、ヤマト運輸では付加価値サービスの展開で差別化を推進。荷主企業である通販事業者としても今後の展開が注目されるところだ。

 ヤマト運輸では、1974年に第1次「NEKOシステム」を導入した。以後第5次システムまでは業務効率化を主眼にシステム開発を行ってきたが、2005年に導入した第6次システムから顧客起点の発想に転換。今回の第7次システムでは、さらに荷主企業等とのシステム的な連携を強化し、〝顧客の中〟に入り込んだ形のサービス展開を進める。

 具体的な内容についてはこれから検討を進めることになるが、荷主企業に対しより詳細な荷物の配達データの提供などを視野に入れるほか、個人顧客の会員組織「クロネコメンバーズ」の活用も構想する。

 「クロネコメンバーズ」は、個人顧客の囲い込みを主眼としたもので、送り状発行や修理家電の回収等の会員向けサービスを提供する。現在の会員数は約450万人で、顧客情報のデータベース化を進めている状況だが、ヤマト運輸では、この会員組織と荷主企業との連携を構想。将来的に「メンバーズとリンクすれば、通販事業者の顧客に対するサービスレベルも飛躍的に向上すると思う」(木川社長)とした。

 一方、第7次システムは約300億円を投資して開発したもので、サービスドライバーの新たな携行機器として高速のweb通信機能を有するポータブルポス(PP)やプリンターを導入。PPは、地域や顧客に応じたメニューを表示できるようにするほか、「Edy」「nanaco」「WAON」に対応した電子マネー決済機能、依頼内容表示機能などを搭載。将来的には、同端末を使ったネットスーパーの注文受け付けサービスなども構想しており、現状、着払い運賃や資材代金の決済のみの対応となっている電子マネーについても、通販商品の代引き決済に対応することが考えられる。

 また、第7次システムの導入に伴う新サービスとして、2月1日から「クロネコメンバーズ」会員向けに、自宅以外の指定した場所での荷物受け取りや配達時間の変更ができる「宅急便受取指定サービス」を開始した。「家族に荷物を見られたくない」といった顧客の声が増えていることに対応したもので、「宅配から個人に荷物を届ける個配」(同)サービスとして展開。蓄積してきた会員データとITを組み合わせた新機軸のサービスという点で、今後の方向性を示したものと言えそうだ。ヤマト運輸では、第7次システムの導入を機に荷主企業や顧客に深く入り込んだ高付加価値サービスの提供を通じ、コスト面だけを見られがちな宅配便を、荷主企業の顧客サービスや販売戦略上のツールへと変革していく構え。通販向けの取り組みも強化する可能性があるだけに、今後が注目される。
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