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「日本直販」の総通、破たんの真相② 再生の道のり険しく

2012年11月22日 16:21

  「今後も従来通り営業を継続し、事業の再建に向けて全力を挙げて取り組んでまいります」。自社通販サイトでこのような説明を行っているように、スポンサーに名乗りを上げたトランスコスモスの支援の下、事業の再生を図り始めた模様の総通。だが、再生への道のりはかなり険しそうだ。再生の絶対条件となる「商品」や「売り場」を十分に確保できない可能性があるためだ。今回の総通の民事再生手続開始の申し立てにより、裁判所から弁済禁止の保全命令が発動。これにより売掛金などの債権が事実上、回収できなくなったベンダーや広告代理店などの取引先が"従来通り"に総通と付き合いを継続するという前提は「虫のいい話」(ベンダーA社)だからだ。総通の再生の行方は。



 「取り引きを継続するかどうか、現段階ではまだ決めかねている」。こう語るのはあるベンダーの幹部。現在、総通では取引先に対し、全額現金支払いを条件として取り引きの継続を求めているという。「その条件で受けている中小のベンダーもあるようだが、民事再生が確定したわけではないし、今の状況では危なくて手を出せないというベンダーが大半ではないか」。
 
 総通とは「半金半手(半分現金・半分手形)」で取り引きしていたという別のベンダー。破たん発覚直前には全額現金での取り引きを要求していたものの「未回収の売掛金が残ってしまった」とし、「危ないという噂自体は以前から聞いていたが、夏頃に先方の話を聞いてある程度納得していた。今から思えば甘かったかも」と唇を噛む。破たんはある意味では仕方のないことではあるが、「"騙された"とは言わないが、それに近い感情は持っている。信用できない事業者とは取引の継続は難しい」と続ける。

 商品面だけでなく、通販企業にとって「売り場」となる通販媒体の確保についても不安が残る。総通では様々な媒体で通販展開を行ってきたが、やはりポイントとなるのは同社がこれまで保有してきた効果の高いテレビおよびラジオ通販の枠だろう。視聴率や聴取率が高く、費用対効果にも優れた「よいテレビ・ラジオの通販枠」というのは一朝一夕で獲得できるものではない。そうした枠は総通のような老舗の通販企業が長年にわたる実績と信用で毎年確保しており、他社は手を出せない半ば「既得権益」のようになっている。逆に言えば一旦、他社に流れるともう戻ってこない貴重な枠と言えよう。

 その総通が保有してきたテレビ・ラジオの通販枠だが今回の破たんで、例えば在京キー局の朝のワイドショーのスポット枠などを含め、少なくない枠が休止状態となっている。関係筋によると「現状では総通の枠が他社に流れるという話は聞かない。代理店としても年間で十数億円程度の取引がある相手で、"倒れてしまっては困る"こともあり、支えようとはしているようだ。現状では『公共広告』を流すなどして枠代は広告代理店が肩代わりしている状態」だが、いつまでも待つわけにはいかないはずで、総通の資金繰りがつかなかった場合、同社の再生には不可欠であろう「優れたテレビ・ラジオの通販枠」を手放さぜるを得ないことになる。

 情報筋によると、総通は11月9日の大阪地裁への民事再生手続開始の申し立て後、「日本政策投資銀行から30億から50億円の融資枠を受けた」模様だが、200億円近い負債額などを考えると、媒体費に投じられる資金は限られるわけで、「従来の数分の一程度に限定されるのではないか」(広告代理店A社)とみられる。それでも主要枠は死守できるかもしれない。しかし、実際問題として、「民事再生中の企業がこれまで通り、すべての枠を抑えるのは資金的に難しいはずだ」(同)。

 確かに「日本直販」のブランド名自体は消費者に浸透しており、魅力もあろうが、それは「日本直販」に良い商品と売り場があることが前提だ。現状、総通の支援を行っていくと見られるトランスコスモス。不調に終わった場合は別の企業が支援に名乗りを上げるのかもしれないが、どの場合でも離れつつある取引先の信用を取り戻し、失った「売り場」をどうカバーしていくかなど非常に厳しい道のりが待ち受けてそうだ。優良な放送枠の行方も含めて、「日本直販」の行く末を通販事業者はしばらく注視していくべきだろう。
(おわり)


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