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DHC・広告問題の波紋④ 調査の"妥当性"に疑義

2012年 9月20日 17:20

 ディーエイチシー(DHC)の広告を巡っては、当初から引用された調査の"妥当性"に複数の事業者が疑問を呈していた。問題となった「利用している(利用したい)機能性食品メーカー」は、ジェック経営コンサルタントの依頼を受け、マイボイスコムがウェブ調査したもの。DHCが12%の回答を得たのに対し、2位以下はファンケル「4・6%」、大塚製薬「3・9%」、サントリーウエルネス「3・7%」...1位との大きな乖離に違和感を覚えるためだ。事業規模から上位に入りそうな山田養蜂場が含まれていない点も不可解。専門家はどう見るか。

 折も折、ではある。2009年から5年をかけ、公的統計の基盤整備が検討されている最中の出来事であるためだ。統計調査の予算や人件費削減が進む中、国では、総務省政策統括官室が各省庁の統計主管部署を主導する形で統計調査における民間委託の基準改定や、民間事業者の調査履行能力を検証している。DHCが民間企業の調査を中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局(以下、北陸支局)が"行った"調査のように表現したことをどう評価するか。広告に使われた「機能性食品に関する消費者の意識調査報告書」を分析した上で、同室担当者が話す。

 「ウェブ調査はモニターを募るものが多いが募集や調査の手法でバイアスがかかる。公的統計では調査内容や公表の仕方をこちらで承認するが、仮にこのやり方なら審査ではねる。公的調査とは言えない」。調査をHPで公表した北陸支局に「(企業名を挙げた)結果の出し方は当然問題になる。配慮に欠ける」と指摘する一方、DHCにも「公的機関が『行った』は事実と異なり問題」とする。

 調査会社が多く加盟する日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)も「この調査だけでナンバー1と言えるか非常に疑問。あたかも公的機関が保証したかに見えるのも問題。社内で参考にするのは良いが(広告に)使うのはフェアじゃない」とする。調査には、バイアスを生む要素はなかったのだろうか。

 調査は、20歳以上の男女5316人から有効回答を得た。全国を9つの地域に分け、各地域約10%(関東は約20%)、20~60代の男女各約10%となるよう標本抽出している。ウェブ調査会社関係者が分析する。

 「地域別の割当数が人口構成比通りでない。関東の地域分類が本来は40~50%。60代以上の比率も少ない。調査時期に大規模なネット広告やキャンペーンを行っていれば、その影響を受ける可能性もある」。利用意向に直接影響するか判断できないが、偏りが生まれる要素はこれだけある。

 別の調査会社関係者は、「ある調査会社が07~09年まで行っていた『利用したことのある健食メーカー』の調査結果はDHCが35%前後、ファンケルが約30%、大塚製薬が20%弱で推移していた」。同様の調査でもこれだけ結果は異なる。

 総務省が指摘するモニター募集の手法はどうか。マイボイスコムでは、モニターのインセンティブとして図書カードや商品券、ショッピング等に使える「Gポイント」に交換できるポイント制を採用する。一方でDHCも商品購入でGポイントが貯まる。購入金額に対するGポイント還元率も他社より高いものだ。つまり、Gポイントにロイヤリティがあり、モニターに参加する者であればDHCを使う意向が強くなる可能性はある。

 この点、ポイント制はウェブ調査会社で一般化しており「バイアスの要因とはなりえない」(マイボイスコム)、Gポイントを運用するジー・プランも「関係ないと思う」としており、原因とは言えないかもしれない。ただ調査報告書には「ネット利用頻度の少ない高年層を中心に、調査結果のバイアスに留意する必要がある」と言い添えられており、偏りを生む可能性自体否定していない。

 問題はバイアスの有無ではない。結果を扱う側がその可能性をしん酌したかだ。JMRAが定める「マーケティング・リサーチ綱領」では「公表された結果が誤解を招くようなものでないことを確実とすることは、クライアントとリサーチャー双方の責任」と説いている。DHCはクライアントとは言えないが、結果を扱うにあたり、これに留意し引用したといえるだろうか。(つづく)
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