「脂肪にドーン」の衝撃・サントリー黒烏龍茶問題を追う(2) 責任の所在どこに?
なぜ"要望"は出されたのか。そして、サントリー食品インターナショナルのCMは、何法のどの部分に違反するのか。当事者の見解を踏まえつつ、経緯を振り返る。
◇
消費者庁に経緯を聞くと「(一般紙報道は)正確には少し違う。消費者委からは個別CMではなく、一般的なトクホCMに指摘があった。まさに要望ということで業界団体に周知をお願いした」と答えが返ってきた。
だが、きっかけとなったCMの問題箇所、要望の法的根拠には、「具体的箇所はない。法令違反の指摘ではなく、『バランスの取れた食生活を実現する補助的なもの』というトクホの趣旨から逸脱しているのでは、という指摘だった」と話すのみ。以下、まず消費者庁食品表示課の見解を問いたい。
――根拠がなくても要望を出す場合はあるか。
「消費者委から(本来、審議の対象となっていない)宣伝手法に指摘事項が出されること自体、今までない」
――ではなぜ出された。
「分からない。消費者委の方の(判断なので)」
――仲介しただけ。
「そう。指摘事項があったので伝えた」
――宣伝手法への指摘は審議のあった部会の範疇を超えるもの。庁内で情報として持つことはあると思うが、なぜ消費者庁でストップしなかった。
「ですので個別企業を対象にせず、業界全般に周知する形にした」
――だがサントリー食品にも出している。
「まさにサントリー食品の審議中に出た話なので参考までに伝えた方が良いかなと」。
消費者庁の見解は、あくまで消費者委の意向ということだろう。だが、書面を受け取る側にとってそれが「要望」であるか「参考意見」かは問題ではない。そこに何らかの意思を感じるはずだ。
◇
では、一方の消費者委の見解はどうか。
法的根拠は「ない。指摘事項をどう扱うかは(執行権限を持つ)消費者庁の判断」(事務局)とし、個別企業に書面が渡されたことにも「消費者庁の判断」とするのみ。本来、消費者庁長官の諮問機関たる消費者委と消費者庁は密な連携体制にあるはずだが、二者の答弁を聞く限り、責任のなすりつけ合いにしか聞こえない。
ただ、両社とも「脂肪にドーン」という表現を問題視したかには明確に"ノー"と答えている。消費者庁「新開発食品調査部会」の中で委員の指摘に対し「『脂肪にドーン』という表現のことをおっしゃっているかと思いますが」(消費者庁)という答弁が議事録に残っているにもかかわらずだ。
問題箇所もあいまいで根拠もない。サントリーホールディングスは「意見は承ったので、今後の活動に活かす」としたが、まさに「意見」と言うにふさわしいもの。当のサントリー食品も、何をどう活かせば良いか、当惑しているのではないか。
だが、「黒烏龍茶」のCMは一般紙報道を受け、あたかも誇大広告かのように消費者に受け止められた。意図したにしろそうでないにしろ、結果としてそのような事態に発展した責任の一端は、消費者庁と消費者委にある。巷に溢れるトクホのCMと、「黒烏龍茶」のCMの決定的な違いはどこにあるというのか。
◇
腑に落ちない点はまだある。部会では、委員の指摘を受けて「業界へ周知を図る」と答えた消費者庁に、委員が「業界向けではなく、国民に向けするべき」と突っ込んでいる。にもかかわらず、書面は協会に出され、個別企業(=サントリー食品)にも渡された。消費者委は「無用な混乱を招かぬよう(業界団体を通じ)周知した」と言うが、結果として国民に間違った形で周知が進んだ。
消費者委も発言した委員を明かさないのはなぜか。「前例を破ると全ての委員の名前を出さなければならない。そうなるとある企業の利益を負っているなど疑いを持たれるので非公開にしている」(消費者委)と言うが、結果としてこれほどの騒動に発展した以上、疑問に答えるのが筋のはず。説明責任を果たさないのであれば、密室での発言に大義など求めようがない。指摘事項が異例ならば、前例にない対応もできるはずだ。
今回の問題は身内である行政サイドからも疑問の声が挙がる。(つづく)
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消費者庁に経緯を聞くと「(一般紙報道は)正確には少し違う。消費者委からは個別CMではなく、一般的なトクホCMに指摘があった。まさに要望ということで業界団体に周知をお願いした」と答えが返ってきた。
だが、きっかけとなったCMの問題箇所、要望の法的根拠には、「具体的箇所はない。法令違反の指摘ではなく、『バランスの取れた食生活を実現する補助的なもの』というトクホの趣旨から逸脱しているのでは、という指摘だった」と話すのみ。以下、まず消費者庁食品表示課の見解を問いたい。
――根拠がなくても要望を出す場合はあるか。
「消費者委から(本来、審議の対象となっていない)宣伝手法に指摘事項が出されること自体、今までない」
――ではなぜ出された。
「分からない。消費者委の方の(判断なので)」
――仲介しただけ。
「そう。指摘事項があったので伝えた」
――宣伝手法への指摘は審議のあった部会の範疇を超えるもの。庁内で情報として持つことはあると思うが、なぜ消費者庁でストップしなかった。
「ですので個別企業を対象にせず、業界全般に周知する形にした」
――だがサントリー食品にも出している。
「まさにサントリー食品の審議中に出た話なので参考までに伝えた方が良いかなと」。
消費者庁の見解は、あくまで消費者委の意向ということだろう。だが、書面を受け取る側にとってそれが「要望」であるか「参考意見」かは問題ではない。そこに何らかの意思を感じるはずだ。
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では、一方の消費者委の見解はどうか。
法的根拠は「ない。指摘事項をどう扱うかは(執行権限を持つ)消費者庁の判断」(事務局)とし、個別企業に書面が渡されたことにも「消費者庁の判断」とするのみ。本来、消費者庁長官の諮問機関たる消費者委と消費者庁は密な連携体制にあるはずだが、二者の答弁を聞く限り、責任のなすりつけ合いにしか聞こえない。
ただ、両社とも「脂肪にドーン」という表現を問題視したかには明確に"ノー"と答えている。消費者庁「新開発食品調査部会」の中で委員の指摘に対し「『脂肪にドーン』という表現のことをおっしゃっているかと思いますが」(消費者庁)という答弁が議事録に残っているにもかかわらずだ。
問題箇所もあいまいで根拠もない。サントリーホールディングスは「意見は承ったので、今後の活動に活かす」としたが、まさに「意見」と言うにふさわしいもの。当のサントリー食品も、何をどう活かせば良いか、当惑しているのではないか。
だが、「黒烏龍茶」のCMは一般紙報道を受け、あたかも誇大広告かのように消費者に受け止められた。意図したにしろそうでないにしろ、結果としてそのような事態に発展した責任の一端は、消費者庁と消費者委にある。巷に溢れるトクホのCMと、「黒烏龍茶」のCMの決定的な違いはどこにあるというのか。
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腑に落ちない点はまだある。部会では、委員の指摘を受けて「業界へ周知を図る」と答えた消費者庁に、委員が「業界向けではなく、国民に向けするべき」と突っ込んでいる。にもかかわらず、書面は協会に出され、個別企業(=サントリー食品)にも渡された。消費者委は「無用な混乱を招かぬよう(業界団体を通じ)周知した」と言うが、結果として国民に間違った形で周知が進んだ。
消費者委も発言した委員を明かさないのはなぜか。「前例を破ると全ての委員の名前を出さなければならない。そうなるとある企業の利益を負っているなど疑いを持たれるので非公開にしている」(消費者委)と言うが、結果としてこれほどの騒動に発展した以上、疑問に答えるのが筋のはず。説明責任を果たさないのであれば、密室での発言に大義など求めようがない。指摘事項が異例ならば、前例にない対応もできるはずだ。
今回の問題は身内である行政サイドからも疑問の声が挙がる。(つづく)