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【動き出した楽天マート】小売業へ業容拡大、出店者に競合懸念の声も

2012年 7月12日 13:37

 3-1.jpgのサムネール画像楽天は7月9日から、子会社を通じてネットスーパー「楽天マート」を開始した。出店者と消費者を結ぶ「楽天市場」の仕組みとは異なり、楽天が商品を仕入れて販売し、自社配送便でユーザーの自宅に配達する。GMSなど有力小売業が注力するネットスーパーに、楽天は満を持して参入したわけだが、食品通販事業者からは「GMSだけでなく、楽天出店者さえも楽天マートの競合になる可能性がある」との声が上がっている。




 「楽天マート」では生鮮品や加工食品など食品全般のほか、日用雑貨に加えて、楽天出店者が取り扱う菓子やグルメ商品を販売。野菜などは卸販売業者を介して受発注で調達し、モール出店者からは買取で仕入れる。

 配送は外部の事業者と提携して、楽天マート専用のトラックとドライバーを導入。東京・板橋区の高島平に配送拠点を置き、まずは30分で配送できる板橋区や練馬区、豊島区、北区の4区を対象に開始した。今春から、対象エリアの4区でポスティングを行うほか、駅構内でのポスター広告を展開。また、楽天市場の顧客リストなどを使用しメルマガでの告知を進めてきた。

 今回、ネットスーパーに参入した楽天の狙いは何か。「これまでのモール事業から業態を広げて、小売業へ進化したいのではないか」(食品通販A社)、「EC最大手のアマゾンやネットで商圏を広げているGMSへの対抗策か」(楽天市場出店者B社)と、食品通販各社はこう推測する。

 1997年の楽天市場オープンから15年が経過し流通総額は1兆円を突破。売れ筋の傾向や販売タイミングなどさまざまな購買データを蓄積している。これらを生かせれば十分に業容拡大の余地がある。楽天はすでに、ケンコーコムを買収しスタイライフへ出資し通販事業者を傘下に収めており、出店者の憶測を呼ぶ背景になっている。

 では、「楽天マート」に勝算はあるか。ポイントの1つは迅速な新規客獲得のようだ。ネットスーパーとして後発の楽天マートが採算性を高めるためには、顧客基盤を早期に構築し、密な配送網を構築し物流効率を高める必要がある。新規客獲得を加速するため、今後、既存ネットスーパーを意識した、利用特典の提案などのサービスを強化する可能性がありそうだ。

 ただ、問題はプラットフォーム「楽天ネットスーパー」など楽天の既存サービス参加社と競合する懸念。「楽天は送料や価格で優位性を出す。本気でやられたら『楽天ネットスーパー』の出店者は厳しい」と話すのは楽天市場出店者C社だ。

 現状、「楽天ネットスーパー」にはマルエツや東急ストアなどが出店。楽天マートが展開する4区は、東京23区をカバーするマルエツと重複する。さらに、楽天マートが月会費210円を徴収し購入金額3000円以上で送料無料なのに対し、マルエツは月会費を徴収せず翌々日分の購入金額5000円以上で送料無料。楽天マートは日常利用のネックになる送料の無料条件を、出店事業者よりも引き下げて開始した。「楽天ネットスーパー」の参加社への影響は必至だろう。

 もちろんモール出店者にとっても他人ごとではない。「楽天市場の自社顧客が楽天マートに流出する可能性がある」と危機感を募らせるのはグルメ商材を扱う食品通販D社。これまで、楽天市場内のお取り寄せを通じて発生した日常需要を取り込んできたが、今後、楽天市場商品を扱う楽天マートによってユーザーのお取り寄せ需要も日常需要の中で満たされてしまう懸念がある。「ユーザーの購買力は限られている。日常需要を外部から取り込み、お取り寄せとの棲み分けができなければ売上は減少する可能性がある」(D社)とする。

 「ネットスーパーを含めてネットシッピングは実店舗を越えるメインストリームになる」。楽天の三木谷会長兼社長は7月4日開催の「楽天EXPO」でこう話した。今後、楽天は出店者との軋轢を生む可能性を排して、小売の本流になれるか。注視したい。
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