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薬ネット販売規制訴訟  国が最高裁に上告、議連の"断念要請"不発に

2012年 5月17日 10:14

 6-1.jpg一般用医薬品通販・ネット販売を巡る行政訴訟の控訴審で、省令による規制は違法などとする高裁判決を不服とし、国(厚生労働省)が5月9日、最高裁判所に上告した。同日に医薬品通販・ネット販売の解禁を主張する「一般用医薬品の通信販売解禁を推進する議員連盟」が国に上告を断念するよう求める要請書を渡していたが、国側は「省令で定めるネット販売規制は法律に基づくもので、判決は受け入れ難い」(厚労省)と判断。控訴人のケンコーコムは、国側の対応について納得できないとしている。

 控訴審で控訴人のケンコーコムとウェルネットが求めていたのは、医薬品ネット販売を行う権利の確認と医薬品ネット販売を規制する省令の無効・取り消しなど。1審では、全て棄却・却下されたが、東京高裁は4月26日、1審判決の一部を取り消し、省令による1、2類医薬品の通販・ネット販売の規制は改正薬事法の委任の範囲を超えた違法なものとし、控訴人側に医薬品のネット販売を行う権利を認める逆転判決を下した。

 国が上告するかどうかに注目が集まる中、医薬品通販・ネット販売の解禁を主張する民主党の「一般用医薬品の通信販売解禁を推進する議員連盟」(議連)が5月9日、野田佳彦総理大臣や小宮山洋子厚生労働大臣など関係大臣に対し、上告の断念と、医薬品通販・ネット販売を原則禁止する規制の撤廃を求める要請書を提出し、同日夕刻に会見を実施。行革担当大臣(当時)として昨年3月の規制仕分けにも出席した蓮舫参院議員は、省令での医薬品通販・ネット販売規制を違法と判断した高裁判決について、「この内容は極めて重いと考えている」とし、厚労省に医薬品通販・ネット販売解禁向け積極的に動いてもらいたいとの考えを示した。

 だが、実はこの会見の少し前に、厚労省が最高裁に上告。これを記者側に指摘された蓮舫議員は、「国として安全性を担保しなければならないという姿勢の表れ」「上告をするかしないかは、厚労省の判断。それは受け止める」とし、議連として、引き続き医薬品通販・ネット販売解禁の道筋を探っていく考えを示した。議連としては上告期限前に合わせ厚労省に要請を出した形だが、それに関係なく厚労省の上告の方針は固まっていたわけだ。

 また、議連では同日に、日本オンラインドラッグ協会やeビジネス推進連合会、日本通信販売協会、全国伝統薬連絡協議会などにも、情報提供や安全確保に関する取り組みの徹底を求める要望書を提出。これを受け、日本オンラインドラッグ協会とeビジネス推進連合会は連名で、議連および関係大臣などに対し、医薬品通販・ネット販売の再開に向けた政府の対応、安全性確保に向けた協議会の立ち上げなどを求めるコメントを出している。

 さらに、高裁判決後の会見で「国は高裁判決を真摯に受け止め、上告はしないで欲しい」(後藤玄利社長)としていたケンコーコム。今回の国の上告に対し、高裁判決は説得性があり、まっとうな判断とした上で、「今回の厚生労働省による上告は大変意外で、到底納得のいくものではない」と不快感をあらわにする。

 一方、ネット販売に懐疑的な見方をする薬業団体では、高裁判決が出た際、静観の構えを見せていた日本薬剤師会では、現時点でインターネット販売の規制を行うことは不可欠とし、「当局の上訴の判断は当然」とのコメントを出すなど、国の対応を評価しているようだ。

 省令による医薬品通販・ネット販売の違法性を指摘した高裁判決。法律の専門家の間では、理にかなった内容で、最高裁で覆すのは難しいとの見方が強いが、ある弁護士は「この手の訴訟は、どうなるか分からない」と指摘。今後、上告受理の審査などを経て最高裁で判決が出るまでに数年はかかることから、「この間に制度を整備し、裁判に負けたから、規制を見直したという印象を払拭したいのではないか」(関係者)との見方も浮上している。

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