消費者庁 「景品表示法」で初の処分、ファミリーマートに措置命令
国産鶏肉使用と表示していたおにぎりにブラジル産の鶏肉を使用していたとして、消費者庁は11月10日、大手コンビニエンスストアチェーンのファミリーマート(FM)に対し、「景品表示法」違反(優良誤認)で措置命令を出した。同庁設置後、初の「景表法」違反での行政処分となるものだが、今年6月の事件発覚直後に商品の販売が中止されている事案に対する措置命令発動に通販関係者からは、疑問の声や同庁の法執行の方向性を懸念する声が浮上している。
今回、問題となったのはFMが6月に発売したおにぎり「カリーチキン南蛮」。事件の内容は、当該商品の包装袋に貼付したシールに"国産鶏肉使用"と表示していたにもかかわらず、実際にはブラジル産鶏肉を使用していたというものだ。
事件認知の端緒は、FMが度重なる食品の産地偽装事件を受けて自主的に行った調査で、FMによると、当初使用する予定だった国産鶏ムネ肉をモモ肉に変更する際、米飯製造ベンダーがブラジル産のものに切り替えていたのを相互に確認をしないまま、商品に"国産鶏肉使用"と表示したシールを貼付していたという。
FMでは、事件発覚直後に農林水産省へ報告を行うとともに当該商品の販売を中止し、自社サイトで誤表示の事実を告知。この際、農水省の対応は注意のみで「特にお咎めはなかった」(FM広報部)が、九月になってから消費者庁の調査が入り「景表法」違反での措置命令に至ったとする。
消費者庁発足後初の「景表法」による行政処分となる今回の事件。同庁の法執行の方向性を占う上でも重要な事例だがが、表示問題に詳しい一部の関係者からは、疑問の声も上がっている。
その1つは、社名公表を伴う措置命令を出すほどの案件だったのかということ。消費者庁では、FMに措置命令を出した理由について、「本部が品質の高い商品を加盟店に供給しているという消費者の信頼感があり、影響は大きい」(表示対策課)とする。だが、表示問題に詳しい関係者は、「事件の発覚が3カ月前で既に商品の販売も中止されているため、措置命令を出しても消費者には何も影響がない」と指摘。同業他社に対する注意喚起効果があるとしても、「事件の内容からすると、過去に遡って措置命令を出す必要があったのかは疑問」とする。
また、今回の事件を受け、消費者庁執行部門各課の連携による摘発強化の懸念も浮上している。FMへの行政処分は、農水省からの情報提供を受けて摘発したもののようだが、関係者は「FMが農水省に報告した時期は、加工食品の原料原産地表示のあり方を検討している段階で処分のしようがなく、消費者庁に案件を回したのではないか」と指摘。同様に、消費者庁内でも、「景表法」や「特定商取引法」などを担当する執行各課が、自ら担当する法律では処分できない案件を融通し合い、行政処分につなげるのではないかという見方だ。これは事業者が最も懸念する事態だろう。
今回のFMのおにぎり表示事件については、インパクトのある実績を作るために、敢えて措置命令を出したとする見方がある一方、細かな事案でも厳格に対応するという消費者庁の姿勢の表れと捉える向きもある。その方向性が見え出すのは、これからと言えるが、通販等の事業者は、従来以上に表示への注意を払う必要がありそうだ。
そのほかの注目記事FEATURED ARTICLE OTHER
今回、問題となったのはFMが6月に発売したおにぎり「カリーチキン南蛮」。事件の内容は、当該商品の包装袋に貼付したシールに"国産鶏肉使用"と表示していたにもかかわらず、実際にはブラジル産鶏肉を使用していたというものだ。
事件認知の端緒は、FMが度重なる食品の産地偽装事件を受けて自主的に行った調査で、FMによると、当初使用する予定だった国産鶏ムネ肉をモモ肉に変更する際、米飯製造ベンダーがブラジル産のものに切り替えていたのを相互に確認をしないまま、商品に"国産鶏肉使用"と表示したシールを貼付していたという。
FMでは、事件発覚直後に農林水産省へ報告を行うとともに当該商品の販売を中止し、自社サイトで誤表示の事実を告知。この際、農水省の対応は注意のみで「特にお咎めはなかった」(FM広報部)が、九月になってから消費者庁の調査が入り「景表法」違反での措置命令に至ったとする。
消費者庁発足後初の「景表法」による行政処分となる今回の事件。同庁の法執行の方向性を占う上でも重要な事例だがが、表示問題に詳しい一部の関係者からは、疑問の声も上がっている。
その1つは、社名公表を伴う措置命令を出すほどの案件だったのかということ。消費者庁では、FMに措置命令を出した理由について、「本部が品質の高い商品を加盟店に供給しているという消費者の信頼感があり、影響は大きい」(表示対策課)とする。だが、表示問題に詳しい関係者は、「事件の発覚が3カ月前で既に商品の販売も中止されているため、措置命令を出しても消費者には何も影響がない」と指摘。同業他社に対する注意喚起効果があるとしても、「事件の内容からすると、過去に遡って措置命令を出す必要があったのかは疑問」とする。
また、今回の事件を受け、消費者庁執行部門各課の連携による摘発強化の懸念も浮上している。FMへの行政処分は、農水省からの情報提供を受けて摘発したもののようだが、関係者は「FMが農水省に報告した時期は、加工食品の原料原産地表示のあり方を検討している段階で処分のしようがなく、消費者庁に案件を回したのではないか」と指摘。同様に、消費者庁内でも、「景表法」や「特定商取引法」などを担当する執行各課が、自ら担当する法律では処分できない案件を融通し合い、行政処分につなげるのではないかという見方だ。これは事業者が最も懸念する事態だろう。
今回のFMのおにぎり表示事件については、インパクトのある実績を作るために、敢えて措置命令を出したとする見方がある一方、細かな事案でも厳格に対応するという消費者庁の姿勢の表れと捉える向きもある。その方向性が見え出すのは、これからと言えるが、通販等の事業者は、従来以上に表示への注意を払う必要がありそうだ。