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震災後、放射線の影響から飲料水など「安全・安心(A)」へのニーズの高まりを背景に、無店舗販売への信頼性が問われる中でも、百貨店の看板が信用に結びついた。
また、未曾有の震災を経て「家族・絆(K)」を再認識した消費者が多く、母の日や父の日需要の拡大を見据えて商品のバリエーションを増やしたことが当たり、母の日は前年の4割増し、父の日は同7割増しを記録した。
中元商戦では消費マインドの落ち込みを懸念したものの、「消費を止めないことが重要」(青木事業部長)と判断し、東北の商材を強化して臨んだ結果、ネット受注が2桁増となり、売り上げは大型店の中元に匹敵する規模となった。
また、「防災・備蓄(B)」に対する意識の高まりを受け、水やトイレットペーパーなどの量の確保を重視。とくに飲料水は在庫を切らさなかった。
一方、今上期は創業180周年企画も売り上げ拡大に貢献した。例えば、昭和40年代に日本橋高島屋の大食堂で人気だったカレーライスの復刻版をレトルトで商品化。当時の仕込み担当者を見つけて味を再現したところ、ほかのカレーの7倍を売るヒットとなった。
同社では、プロモーション面でも新たな取り組みに着手。6月に通販サイトでブログをスタートして生産者のこだわりやバイヤーの思い入れを紹介することにした。カレーでは、初めてモニターを集めてレビューを公開する取り組みも行った。
9月2日には新たにフェイスブック(FB)ページを開設。消費者との双方化に向け、いずれはFB上でモニターを募集するなど、消費者参加型の開発に取り組む。
同社では、大食堂のカレーがヒットした経験から、開発ストーリーが商品価値のひとつになっていると分析。また、「味の再現」というキーワードが通販商材には有効と判断し、下期にも新しい商材で仕掛ける。
11月に石原プロモーション(石原軍団)の炊き出しメニューを商品化する。今年4月に石原軍団が石巻市で炊き出しを行った際、高島屋グループが食材の提供やボランティアを派遣したことが、今回のコラボにつながったようだ。まずはカレーと豚汁を、来年にはおでんとぜんざいをカタログとネットで販売し、売り上げの一部を寄付する。
「支援の輪を一過性のものにしないためにも、炊き出しメニューを商品化することで復興支援を継続できる」(青木事業部長)としている。
また、下期はおせちと歳暮商戦に力を入れる。おせちでは、サンケイリビング新聞社と協業。同社が発行する「リビング新聞」の主婦レポーターをおせち作りの工場に派遣し、「ヘルシーおせち」や「欲張りおせち」をテーマに食材を選定してもらう。商品化の過程を見せることで消費者の期待感を膨らませる。
なお、高島屋では受注が9月にずれ込んだカタログ秋号の売り上げを除けば、今上期は3~4%のプラスとなる見通し。