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楽天、法令順守の甘い認識――出店店舗が埼玉県警に摘発

2011年 7月21日 21:40

 楽天のゆるいコンプライアンス意識が今回の摘発につながった、と言えるかもしれない。埼玉県警は今年7月、「楽天市場」に出店する健康食品(未承認医薬品)のネット販売事業者、ウェストインペリアルの店舗運営責任者である宮西啓明容疑者(33)を、薬事法違反で逮捕した(本紙1326号既報)。店子の摘発を受けた今回の事件に対しても楽天は「現時点で特別に何か対応を検討することは考えていない」とするが、そのような認識が果たして今後も通じるだろうか。ネットを取り巻く広告監視の状況は、刻一刻と変化している。

 店子の摘発を受けた今回の事態に際し、楽天では「今年3月半ばにウェストインペリアルに表示の修正を依頼し、一端は修正した」と仮想モールが健全に管理されていることを強調する。だが、修正後の状況については「分からない」(同)としており、結果として摘発に至ったことを考えると、その後も違法表示は野放しだったことになる。これではコンプライアンスに対して甘い認識だったと言わざるを得ない。

 楽天では、薬事法順守に向けた取り組みとして定期的にパトロールを実施しており、各店舗には営業・コンサルティング業務の担当社員が必ず一人は付いている。これまでも問題があれば改善を依頼し、退店に至った店子もあるという。
 ただ、パトロールの頻度や実績、これを担当する部署など体制の概要については「(抜け道を探る悪質な事業者に)裏をかかれることになるかもしれないため明かせない」(同)としている。

 さらに今回の事件を受けても「現時点で対応は考えていない。出店者の中には悪意なく瑕疵でやってしまうところもあるので(違法表示を)排除できるよう頑張りたい」(同)と話すに留め、従来のスタンスを変える姿勢は見られない。
 だが、問題は警察当局による薬事法の摘発に"悪質性"は考慮されないということだ。確信犯、瑕疵を問わず、警察は、条件を満たせば摘発に動く。楽天が従前のような認識でモール管理を行っているのであれば、責任を放棄しているのと同義であり、認識を改める必要があるだろう。

 ネット広告の監視状況も楽天の認識ほど甘いものではない。

 今回、摘発に動いたのは、埼玉県警「サイバー犯罪対策課」。ネット上の犯罪行為の監視強化を目的に今年四月の組織変更で県警本部内にあった「サイバー犯罪対策センター」を格上げして発足した部署だ。同課は課長以下、61人の捜査員がネット上の犯罪行為を監視しており、摘発も5月にネットパトロールで表示を発見して以降、わずか2カ月で行われている。
 通常、薬事法関連事犯となれば日常的に県の薬務課と連携体制にある所管部署が摘発にあたるケースが一般的。県警内でも薬事法関連事犯は「生活環境第2課」が担当している。

 だがサイバー犯罪対策課は薬事法に限らず、ネットが絡むあらゆる事案の捜査を行う部署。そのため、県の薬務課や消費生活センターとの連携体制については「日常的に連携しているわけではない」(同課)としており、今回の摘発も県の薬務課や消費生活センターから事前に情報提供を受けていないという。ウェストインペリアルに対する指導実績の有無についても「課では把握していない」(同)。つまり、過去の指導実績などは勘案せず、違法事実に基づき即摘発に動いているということになる。

 埼玉ではないが、今年5月には神奈川県警がネットパトロールを端緒に相次いで健食の販売事業者2社を摘発しており、捜査の端緒としたネットパトロールについて「さまざまな媒体を見ているが、ネットを見れば(違法表示が)氾濫しているから手っ取り早い。その中で見つけるのが主流になりつつある」(神奈川県警)と、有効な手段の一つになっていることを窺わせている。

 県警があらゆる角度からネット上の違法表示に目を光らせるようになった今、楽天もこれまでの認識を改める必要がある。でなければ、「楽天市場」に対する消費者の信頼の失墜が、いずれは自らの首を絞めることになる。
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