
「ビジネス割」で法人向けECに参入した楽天グループ。新規顧客獲得などに成果が出はじめているとはいえ、課題となってくるのはサービスの周知だ。
まず、進めているのが他のグループサービスとの連携。マーケットプレイス事業アカウントイノベーションオフィス(AIO)事業企画課の加藤雅人マネージャーは「例えば、『楽天トラベル』には『総合出張管理サービスRacco』がある。これはいうなれば『B2B版楽天トラベル』なので、『出張は楽天トラベル、会社の備品も楽天市場』というような環境が作れれば」と話す。楽天トラベルだけではなく、楽天銀行の口座を保有している個人事業主や、「楽天ペイ」決済端末を導入している飲食点にメールを送るなど、グループと互恵関係がある企業の中でのターゲット層にリーチする。
もう一つ検討しているのは、エアコンクリーニングやハウスクリーニングといった企業との連携。個人事業主や小規模事業者の顧客が多いことから、こうした外部企業とも連携し、ビジネス割を周知していく。
加藤マネージャーは実証実験の成果について、「メンバーの登録数は、目標に若干届いていないが、購買金額は高いので、メンバーを増やせばライフタイムバリュー(LTV)は期待できるのではないか。また、店舗に送客する中での新規率も思ったより高い数字が出ている」と評価する。
ただ、先行する法人向けECはすでに多くの顧客企業を抱え、サービスも充実している。例えばアスクルの場合は、2000円以上の注文で送料が無料であり、最短当日に届く。1400万点以上の商材を備え、365日以内であれば返品・交換が可能となっている。
楽天市場の場合、「3980円以上の注文で送料無料」という「送料無料ライン」には多くの店舗が参加しており、さらには出荷代行サービスとして「楽天スーパーロジスティクス」を手掛けてはいるものの、安い送料や短納期、返品・交換などのサービスはあくまで店舗に付随するもの。楽天市場でも「最強翌日配送」といった仕組みを整えてはいるが、例えば「アスクル配送スピードを競う」となると、現時点では分が悪いのも事実だ。
では、楽天が手掛ける法人向けECの強みはどこになるのか。加藤マネージャーは「グループが手掛けるサービスの多さだろう。同じ会社でグループのいろいろなサービスを使ってもらい、『法人版SPU』ができることだ」と話す。例えば、楽天モバイルで法人契約しているアカウントが楽天市場で商品を購入すれば、ポイントはプラス4倍になる。さらには、楽天市場で開催される「楽天スーパーセール」や「お買い物マラソン」との連携、AIOのクライアントであるメーカーとの連動、法人への販促を強化するなど、グループシナジーを武器に競合と差別化していきたい構えだ。
もちろん、価格も重要にはなってくるが、法人向け販売の場合は「多少高くでもいつも買っているところで買う」という傾向も強い。「顧客基盤を作るためのトラフィックビルダーが大事になってくる。つまり『何でも品揃えする』というよりも、高頻度で購入されるアイテムを、できる限り安価で買いやすい形で提供することで囲い込む。そうなれば、『ついで買い』も誘発できるのではないか」(加藤マネージャー)。
商品数は約6万点。実証期間中には10万点まで増やしたい考えだ。加藤マネージャーは「業務用エアコンの設置や厨房機器の設置など、役務を手掛ける店舗も楽天市場にはあるので、そういったサービスを提供することで競合と差別化していきたい」と展望を語る。(おわり)
まず、進めているのが他のグループサービスとの連携。マーケットプレイス事業アカウントイノベーションオフィス(AIO)事業企画課の加藤雅人マネージャーは「例えば、『楽天トラベル』には『総合出張管理サービスRacco』がある。これはいうなれば『B2B版楽天トラベル』なので、『出張は楽天トラベル、会社の備品も楽天市場』というような環境が作れれば」と話す。楽天トラベルだけではなく、楽天銀行の口座を保有している個人事業主や、「楽天ペイ」決済端末を導入している飲食点にメールを送るなど、グループと互恵関係がある企業の中でのターゲット層にリーチする。
もう一つ検討しているのは、エアコンクリーニングやハウスクリーニングといった企業との連携。個人事業主や小規模事業者の顧客が多いことから、こうした外部企業とも連携し、ビジネス割を周知していく。
加藤マネージャーは実証実験の成果について、「メンバーの登録数は、目標に若干届いていないが、購買金額は高いので、メンバーを増やせばライフタイムバリュー(LTV)は期待できるのではないか。また、店舗に送客する中での新規率も思ったより高い数字が出ている」と評価する。
ただ、先行する法人向けECはすでに多くの顧客企業を抱え、サービスも充実している。例えばアスクルの場合は、2000円以上の注文で送料が無料であり、最短当日に届く。1400万点以上の商材を備え、365日以内であれば返品・交換が可能となっている。
楽天市場の場合、「3980円以上の注文で送料無料」という「送料無料ライン」には多くの店舗が参加しており、さらには出荷代行サービスとして「楽天スーパーロジスティクス」を手掛けてはいるものの、安い送料や短納期、返品・交換などのサービスはあくまで店舗に付随するもの。楽天市場でも「最強翌日配送」といった仕組みを整えてはいるが、例えば「アスクル配送スピードを競う」となると、現時点では分が悪いのも事実だ。
では、楽天が手掛ける法人向けECの強みはどこになるのか。加藤マネージャーは「グループが手掛けるサービスの多さだろう。同じ会社でグループのいろいろなサービスを使ってもらい、『法人版SPU』ができることだ」と話す。例えば、楽天モバイルで法人契約しているアカウントが楽天市場で商品を購入すれば、ポイントはプラス4倍になる。さらには、楽天市場で開催される「楽天スーパーセール」や「お買い物マラソン」との連携、AIOのクライアントであるメーカーとの連動、法人への販促を強化するなど、グループシナジーを武器に競合と差別化していきたい構えだ。
もちろん、価格も重要にはなってくるが、法人向け販売の場合は「多少高くでもいつも買っているところで買う」という傾向も強い。「顧客基盤を作るためのトラフィックビルダーが大事になってくる。つまり『何でも品揃えする』というよりも、高頻度で購入されるアイテムを、できる限り安価で買いやすい形で提供することで囲い込む。そうなれば、『ついで買い』も誘発できるのではないか」(加藤マネージャー)。
商品数は約6万点。実証期間中には10万点まで増やしたい考えだ。加藤マネージャーは「業務用エアコンの設置や厨房機器の設置など、役務を手掛ける店舗も楽天市場にはあるので、そういったサービスを提供することで競合と差別化していきたい」と展望を語る。(おわり)