ハーバー研究所の前期(18年3月期)の業績は通販と直営店、百貨店向けの卸販売などの全チャネルで増収を達成するなど好調だった。特にエリアを限定した広告戦略が奏功し、売り上げに対する広告宣伝比率が下がるなど効率化に貢献した。今期もこれまでの広告戦略を継続しつつ、内容を重視しさらに強化する。また、SNSを活用した集客にも力を入れる。今期の方針について藤井章夫常務に聞いた。
――今期の広告宣伝の計画は。
「基本的な方針として、前期までに取り組んでいた広告宣伝を、今期も継続する。広告費は地域やエリアごとに投下して、通販と直営店、百貨店などの複数のチャネルで効果を得られる施策をすすめる。費用対効果が良いエリアや、前期あまりできなかったエリアを確認して予算を配分した」
――具体的には。
「テレビCMと連動して、通販広告や実店舗のプロモーションを行い、テレビCMは1000GRP(述べ視聴率)を基本に投下する。例えば、これまでには新聞折り込み広告の中で、店舗のイベントを告知するといった取り組みや、店舗オープン前に通販のチラシを配布して、お客様の次の購入のタイミングに合わせて店舗オープンを告知するといった取り組みも行ってきた」
――今後のスケジュール感は。
「4月から地域エリアを絞った折込広告やイベントなどのプロモーションは休みなくやってきた。6月には、プロ野球球場での体験も行った。7月以降は、量を増やすことは考えずに内容を重視したい。例えば体験イベントで購入した参加者にばらの花をプレゼントするなど、お客様の記憶に残る取り組みを考える。秋にかけては、新しい販促手法をテストすることも視野に入れる。今年は創業35周年を迎えたので、冠企画も行いながら来年3月まで盛り上げたい」
――効率はどうか。
「前期は売り上げに対する広告宣伝費率が下がった。広告宣伝費は数年間で変わっていないことからも評価できる。CPO(1人あたりの新規客獲得コスト)も変わっていない」
――奏功した理由は。
「営業本部を置き、通販と店舗、海外、セルフや業務提携といった各部門を見ているため、全体のバランスを見ながら施策を打てる。販促は月ごとに戦略的に考え、1カ月目、2カ月目、3カ月目の流れの中で施策を実行し、評価は四半期ごとに行う。各部門の目標はあるが、全社的な効果を優先して広告費を投下するため、各部門の評価は予算達成だけで行っていない」
――前期は直営店や百貨店が伸び、通販比率は5割以下に縮小した。通販への効果は。
「チャネルをまたいだ販促が好調で、インバウンド需要も伸びている。直営店や百貨店卸の売上が30~40%増で拡大するのは当然と考えるが、通販で2ケタの成長を達成するのは難しいだろう。だが、3年後に通販比率を現状の40%から55%をまで高めるには、今からの取り組みが重要だと考えている」
――今期の課題は。
「継続率の向上と、新規客の獲得だ。『ハーバー研究所を知っているが使ったことがない人』を増やす必要がある」
――今期、SNSを活用した新規客獲得をすすめる方針を打ち出している。
「無料通話アプリ『LINE』は1850万人以上が友だち登録し、購入経験がないユーザーを増やすには最適なツールになっている。LINEだけでなく、ツイッタ―やフェイスブックなどそれぞれの特性に合わせて情報を発信し、実店舗やノベルティなどを紹介して購入機会を増やしたい」
――新規客向けに何を訴求するか。
「美容オイル『スクワラン』のお試しがメーンだが、今はそれだけではなく、化粧水や化粧下地などさまざまな商品を訴求している。『スクワラン』の消費サイクルは約3カ月とされるが、SNSの時代に3カ月ごとに訴求するのは遅い。初回購入者が次に『スクワラン』を購入するまでの間にさまざまな情報を発信し、クロスセルにつなげる。お客様が購入したくなるタイミングに、季節のあいさつやイベントをきっかけに接点を増やす」
――SNSへの広告投資はどう考えるか。
「販管費のうち約20%弱が広告宣伝費。販売部門でそれぞれ予算があり、通販は基本的には紙とネットで半分ずつと考える。だが、投資については、通販や直営店、ドラッグストアなどのセルフ店の各チャネルで効果があるか、バランスを見て判断する」
――海外展開については。
「香港と台湾などの海外向けに、化粧水と美容液を発売した。販売ライセンスを取得した後に、中国本土への進出も視野に入れる。とは言え、海外専用商品の販売だけで売り上げがプラスアルファになるとは考えていない。販売代理店を通じて、使用量や順序などの正しい使い方の説明や、現地の気候やニーズに合わせた提案を行う」
――今期の立ち上がりの状況は。
「順調だ。35周年を迎え、限定商品を発売したほか、毎月全国の名産品が当たるキャンペーンなどを行っている」