フェリシモは2月26日、西日本旅客鉄道と共同で全国各地の産品を産地直送で販売する通販サイト「EVERYTHING FROM.JP market」を開設した。産直はネット販売ではおなじみのサービスであり、同様のサイトも多数ある。あえてこの時期に参入した狙いはどこにあるのか。
フェリシモでは2015年から、地方自治体向けの支援事業を開始。ふるさと納税の返礼品を掲載したカタログの制作受託からスタートし、現在は地方の事業者に対する商品開発支援なども行っている。例えば、埼玉県深谷市向けには、市のキャラクター「ふっかちゃん」を使ったカタログを作成。返礼品だけではなく、深谷市の産品を掲載し、フェリシモの顧客向けに配布。さらには、深谷市の事業者向けにはマーケティングセミナーを開催する、などといった支援を行っている。
また、昨年6月には地域産品を紹介・販売するサイト「日本全国WEBの駅」を立ち上げた。深谷市と鹿児島県大崎町など、地方自治体が参加するもので、消費者が「ふるさと納税」をきっかけに商品を購入した後も、同サイトでリピート購入や継続購入が可能となる。また、商品情報以外にも地域情報の案内も掲載しており、事業者を対象とした販売促進に加え、地域の活性化向上や、生活者と地域のつながりを作るサポートなど、自治体を対象としたサービスも提供している。
新事業開発本部地域共生部部門長の三浦卓也氏は「魅力的な商品はあっても、消費者にどこが良いのかを伝えるのは難しく、『どんなコンセプトで商品が作られているか』を言語化できない事業者は多い。『言われたものを作っているだけ』というケースでも、実はすごい魅力が隠れているケースもあるので、それを言語化するためのアドバイスをしている」と話す。
同社では近年、これまで培ってきたノウハウやインフラなどを活用した、支援事業を強化している。三浦部門長は「自治体向け支援事業についても、カタログ制作やMDといった当社のリソースを開放することで、地方自治体だけではなく、その地域の企業も含めて、地域の魅力が全国に届けられるのではないか、という考えからスタートした」と話す。同社顧客向けにカタログを配布した深谷市についても、全国から受注が来ており、効果は出ているという。
新サイトは「地域のエブリシングを全国へ」をコンセプトに、JR西日本がこれまでの取り組みの中で発掘した地域産品を、国内向けに産地直送で販売するというもの。三浦部門長は「モノだけにフォーカスするのではなく、生産者の思いや地域の風土・文化も含めて伝えていく、ということを『エブリシング』に込めた。その思いを編集して伝えていくのは当社が一番得意としている部分なので、深掘りしていきたい」と説明する。
具体的には、食品の生産者に話を聞き、自分たちでも食べてみて、良さを文章にするという。「生産者が見える」という部分に、キュレーション的な視点から「魅力を伝えるためにフェリシモが編集する」という切り口を加える。三浦部門長は「現状のサイトはまだまだ未完成だが、アイテムも順次追加していきたい」と話す。本格稼働は3~5月になる予定だ。
サイトへの集客手段としては、まず同社の既存顧客を誘導する。今後はJR西日本と協業している強みを活かし、JR西日本の発行するフリーペーパーなど、両社の媒体を活用した宣伝を行うという。また、フェイスブック広告など外部広告メディアも活用する。
三浦部門長は「当社では地域が自立するにはどうすればいいのかを常に考えている。新サイトをコンセプトや当社の思いを伝えられるメディアにしていきたい」と意気込む。