アマゾンジャパンは6月1日、これまで同社サイトで商品を出品・販売していた事業者との間で結んでいた競合サイトと同等以上の価格・品ぞろえを取引条件とする契約を見直した。同日付で「最安値保証を求めない」など契約見直しの通知を出品者に始めた模様。同社の取引が独占禁止法違反の疑いがあるとして調査・審査を行っていた公正取引委員会が明らかにした。公取委はアマゾンの自主的な契約内容変更を受け、同社への独禁法違反の審査を打ち切り、注目されていた「違反があったか否か」の認定および処分は行わなかった。
アマゾンジャパンが運営する通販サイト上で展開する仮想モール「Amazonマーケットプレイス」の出品者と結ぶ契約を見直した。
公取委によると、これまで同契約にはアマゾンと競合する仮想モールや通販サイトと同等かより安い価格・最多の品ぞろえとしなければならないなどの条件が盛り込まれ、それが順守されるよう調査を行い、守っていない出店者には通知し、順守するよう求める取り組みを実施していた。
公取委はこれらが出品事業者が他の仮想モールなどで自由に商品の価格の引き下げや品ぞろえを拡大できなくさせ、事業活動を制限したり、競合の仮想モールが出店者への手数料を引き下げてもそれが出店者の商品価格の引き下げや品ぞろえ拡大につながらなくなったり、アマゾンが競合モールと競争する努力をすることなく、最も安くまた、最よい品ぞろえを実現できることでEC市場の競争や新規参入が阻害される恐れがあるとみて、独禁法で禁じた「拘束条件付取引」に違反する疑いで昨年8月に同社に立ち入り調査を行い、審査を続けてきた。
公取委の調査を受けて、アマゾンジャパンは4月、「自発的に契約内容を全面的に見直し、問題となった条件を撤廃するとの申告があった」(栗谷康正上席審査専門官)とし、契約から「最安値販売保証」などを削除し出品者に通知、今後の新規契約にも同条件を盛り込まないことやその旨を従業員にも周知徹底し、今後は3年に1度、公取委に状況を書面で報告するとした。
公取委はアマゾン側の自主的な契約見直しで「我々が問題視していた疑いが解消され、是正を指導する必要がなくなった」(同)とし、アマゾンへの審査を終了するとした。
独禁法違反の行為があったかどうかについては「違反の認定を行っていないだけで、"なかった"とも言っていない」(同)と含みを持たせた。
なお、本紙ではアマゾンジャパンに出品者との契約内容の自主的な変更は独禁法違反行為があったと認めたのか、などについて聞いたが、「コメントを控えさせていただく」(同社)とコメントした。
公取委の責任者に聞く アマゾンの審査終了の背景
「〝違反なかった〟とも言ってない」
アマゾンジャパンが出品者と結んでいた契約が独占禁止法に違反する恐れがあると、調査・審査を行ってきた公正取引委員会が6月1日付でアマゾンへの審査を終了させたと発表した。責任者である審査局上席審査専門官の栗谷康正氏に調査終了の背景を聞いた。
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アマゾンジャパンへの独禁法違反に関する調査を"終了"させた理由は。
「我々はアマゾンジャパンと『Amazonマーケットプレイス』の出品者との間で結ばれていた契約が、出品者の事業活動を制限する疑いのある内容となっており、昨年8月に同社に立ち入り調査を行い、独禁法の規定に基づいて審査してきたが、アマゾン側からそうした契約内容を全面的に変更するとの申し出があり、それにより独禁法違反の疑いが解消されたことから審査を終了することにした」
これまでのアマゾンの契約内容に独禁法違反の事実があったかどうかを調査・審査してきたわけだが、アマゾンが自発的に契約内容を修正したことで、今後は疑いがなくなるから審査をやめるという流れは腑に落ちない。
「例えば談合やカルテルではこのような処理はしない。悪質な違反行為であり、また、当該企業が我々の調査の過程で『もうやりません』としても再発があり得るからだ。将来に向けた是正を指導するため、違法かどうかをきちんと認定し、違法性を認定した上で行政処分や課徴金納付命令も行う。他方、本件(アマゾンへの調査)はそういったものではない。アマゾン側が会社として結んでいる契約のすべてを見直し、我々が問題にしていた条件をすべて撤廃したので、我々が是正を命令、指導する必要がないということになる。したがって違法性の認定も行わないということになる」
審査打ち切りで「アマゾンは独禁法違反に抵触するような違法性はなかった」という"お墨付き"を公取委からアマゾンが得たと捉える向きもある。
「そうではない。『違反があった』という認定はしていないが、『違反がなかった』とも言っていない。いずれにせよ、制限があった部分が撤廃された。今回の件は出品者にとって不利益になる話ではない」